2021年01月02日

お年玉


「お年玉」は、

年玉、

とも言うが、

新年の祝儀として贈るもの、

の意である。

歳贄、

とも当てる(大言海)。江戸時代の町家では、

貝杓子(かいじゃくし)、
鼠半紙、
塗箸、
粗製の扇、

等々粗末な物を用いた、とある(精選版日本国語大辞典)。江戸中期の医師・小川顕道は『塵塚談(ちりづかだん)』で、

正月、玄関に年玉の扇箱を飾る事、商醫が業をうらんとして、専らにせし事也、……年玉に貰ひし扇子箱を井桁に積重ね、高きを伊達にし、内より持出し飾るも有し也、

と揶揄している(大言海)。商人も、武家風の正装をして、年礼に回った。

大店の主人ともなると、紋付きの着物に裃、白足袋に脇差で、店の小僧や出入りの職人などを供に連れていた。連れている小僧はお年玉を載せるためのお盆をもつ、

とあるhttps://suumo.jp/journal/2016/12/26/123331/

年始御礼帳  四方赤良他.jpg

(「年始御礼帳」四方赤良他 https://suumo.jp/journal/2016/12/26/123331/

年初に贈り物をする習慣は古くから存在し、宮中での正月の賜物に関する記述は多い。広く盛んになったのは室町時代で、太刀、金子、硯、酒等さまざまな品物が用いられた。特に男児のいる家には毬杖(ぎっちょう 毬を打つ道具)や振々(ぶりぶり 振々毬杖)、女児のいる家には羽子板や紅箱などを贈った、

という(日本語源大辞典)。近世には、

武士は太刀、
商人は扇子、
医者は丸薬、

等々と自分の作った物や家業と関係深いものを贈るようになった。

その中でも扇子は広く用いられた(仝上)、とある。末広がりで縁起が良いという理由かららしいhttps://suumo.jp/journal/2016/12/26/123331/。明治に入っても、

年賀の際の簡素で有用な手土産、

という性格は引き継がれ、

手拭い、
略歴、

等々が贈られたが、対象が目下、特に子供に限られてきた。子供に小遣いをやる習慣は、一般的には近代以降のものである(日本語源大辞典)。特に、

現金を渡すのが一般的になったのは、昭和30年代以降、

とされるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E5%B9%B4%E7%8E%89

年玉の起源は、

正月に歳神(年神)を迎えるために供えられた、丸い鏡餅(=歳神(年神)の霊魂が宿った依り代、歳神(年神)の象徴)が、家長によって子供に分け与えられ、その餅が「御歳魂(おとしだま)」と呼ばれたことから、

とする説があるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E5%B9%B4%E7%8E%89。つまり、

その年を、1年間を、生きるために必要な、歳神(年神)の霊魂=生命を、子供に分け与えることで、(強い生命力には、魔=災厄を退ける力がある)、子供の無事な成長を願う、宗教的な意味がある(仝上)。また他に、

年のありがたい賜物(たまもの)であるとして「年賜(としだま)」と呼ばれたから、

とする説(大言海)、

トシ(年)タマ(贄・手土産)の、礼物の意(日本語源広辞典)、

とする説もある。やはり、「年神」http://ppnetwork.seesaa.net/article/479304962.html?1609457289とつながっていると見るのが自然だろう。ただ、「歳贄」とあてる「贄」(シ)は、

会意兼形声。「貝+音符執(シュウ 手に取る、たずさえる)」

で、

君主または先生にはじめて会見する際に携える礼物、手土産、

の意である。どうも、後世になってからの当て字ではあるまいか。「たまふ」は、

賜ふ、
給ふ、
玉ふ、

と当てる。「たまふ」は、

目下の者の求める心と、目上の者の与えようとする心とが合わさって、目上の者が目下の者へ物を与えるという意が原義、

とあり、

転じて、目上の者の好意に対する目下の者の感謝・敬意を表す、

とある(岩波古語辞典)。「たまふ」は、

タマ(魂)アフ(合)約、

とする説(仝上)もあり、

(求める)心と(与えたいと思う)心とが合う意で、それが行為として具体的に実現する意。古語では、「恨み」「憎しみ」「思ひ」など情意に関する語は、心の内に思う意味が発展して、それを外に具体的行動として表す意味を持つ、

とある(仝上)。「歳魂」と重なるし、「たま」http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba12.htm#%E3%81%9F%E3%81%BEで触れたように、「玉」は、

タマ(魂)と同根。人間を見守りたすける働きを持つ精霊の憑代となる、丸い石などの物体が原義、

である(岩波古語辞典)。

なお、「賜物」は、

たまひものの約、

である(仝上)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 05:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする