2021年01月07日

たかんな


「たかんな」は、

タカムナの音便、

とある(広辞苑)が、

たかむな、

とも表記し、

たかうな(たこうな)、

ともいう(デジタル大辞泉)。

takamuna→takanna、

マ行音(m)→ナ行音(n)の子音交替、

takanna→takouna、

は、「思はう」→「思ほゆ」のような、ア列音→オ列音といった母音交替かと思われ(日本語の語源)、

タカムナ→タカンナ→タカウナ、

といった転訛であろうか。「たかんな」は、

筍、
笋、

と当て、

タケノコの古名、

である。古名には、

からまた、

ともいう、とある(たべもの語源辞典)。

また、「漢語」には、

篛(ジャク)、

もあり(字源)、「篛笠」という言葉もあり、

何人方舟順流下、草衣篛笠倶瀟灑(王冕)

と詠われる(字源)。他に、

筠(イン)、

とも書き、「筠」は、

匀(キン)は均の原字である。均というのは、……全部を平らにならすということである。タケノコがその周囲を竹の皮で取り巻かれている姿をいった、

とある(たべもの語源辞典)。

「筍(笋)」(ジュン、シュン)は、

会意兼形声。「竹+音符旬(シュン 周囲を取り巻く)」で、竹の皮がとりまいているたけのこ。転じて、たけのこのように突き出たもの、

とあり(漢字源)、「タケノコ」の意である。

竹の胎なり、

というとあり(たべもの語源辞典)、

旬内に竹の子となり、旬外に竹となる、

ところからつくられた字という(仝上)。他に、漢名として、

竹前、
牙筍(ガジュン)、
竹芽(チクガ)、
籜龍(タクリュウ)、
竹笋(チクイン)、
猫頭(ビョウトウ)、
妬母草(トボソウ)、

等々がある、という(仝上)。

タケノコ.jpg


「たかんな」の語源としては、
タカメナ(竹芽菜)の転(大言海・雅言考・古事記伝)、
タカノナ(竹菜)の約(日本古語大辞典=松岡静雄)、
タカナ(竹菜)の義(俗語考)、

といったところが、妥当ではなかろうか。

タケメネ(竹芽根)の義(日本語原学=林甕臣)、

も、ほぼ同じ発想である。その他、

竹笛の義(日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解・東雅・言元梯・俚言集覧)、
形が蜷(ごうな)に似ているところからタカミナ(竹蜷)の義(日本語の発想=白石大二所引中川芳雄説)、

というのは考え過ぎではないか。「蜷」(ごうな)とは、

寄居虫、

と当て、

ヤドカリの別名、

である。似ていなくもないが、音韻からの付会ではあるまいか。

「竹」http://ppnetwork.seesaa.net/article/461199145.html?1607996078で触れたことだが、

新井白石の「東雅」には、「万葉集抄」にタは高いことだとあって、ケとは古語に木をケというようであり、タケとは、生じて高くなる木という意味でつけられて名である、と説いている。タカムナという筍の異名からタカムは高くなることで、ナは「菜」でたべものを意味するという説もある、

とある(たべもの語源辞典)。「タケノコ」が、「菜」と見られていたことは確かである。「菜」は、

葉・茎などを食用とする草木類の総称、

であったhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/478982915.html

本朝食鑑(1697)は、

今本邦食する所の筍は苦竹、淡竹、長間竹の筍なり、

と、食用にされるのはマダケ、ハチク、シノダケのものだとしているように、明和・安永(1764‐81)以降モウソウチクの栽植が進むまでは、たけのこといえばだいたいマダケとハチクのそれであったらしい(世界大百科事典)。

「竹」http://ppnetwork.seesaa.net/article/461199145.html?1607996078で触れたように、

モウソウという竹は、元文年間(1726-41)徳川八代将軍吉宗のとき、琉球から薩摩に二本移植されたのが始まりである。これは中国中部の江南竹で、雪竹ともいう。日本で孟宗竹とよんだのは、中国の筍の産地として有名な西湖近くの法華山一帯から出るものを毛笋(モウシュン)とよんでいるから、これが訛ってモウソウとなり、孟宗とあて字したものである。中国から日本に移植された竹は、マダケ(漢名、苦竹。ニガタケともよぶ)、ハチク(漢名、淡竹。苦味がうすいからである。クレタケ、カラダケともいう)、布袋竹(ホテイチク。短い節間がふくれていて、ほていさんの腹を連想させるところからの名)、鼓山竹(ゴザンチクともいう。漢名多般竹)である、

とあり(たべもの語源辞典)。日本原産の竹は、中部山岳地帯、東北地方にあるスズタケ(篶竹。スズ・ミスズともいう。スズは篠(しの)と同じ意)である(仝上)。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする