2021年01月11日

なびく


「なびく」は、

靡く、

と当てる。

(根元が押さえられていて)先の方がゆらゆらと横に揺れ動く、

のを言い、それをメタファに、

さ寝(ぬ)がには誰とも寝(ね)めど沖つ藻の靡きし君が言待つ我を(万葉集)、

というように、

(心や態度が、ある人の方へ)揺れ動いて寄る、

意であり、さらに、

上は下に助けられ、下は上になびきて(源氏)、

というように、

他人の威力・意志などに従う、
服従する、

意でも使う(広辞苑・岩波古語辞典)。

「靡」(漢音ビ、呉音ミ)は、

形声。「麻(しなやかな麻)+音符非」

とある(漢字源)が、別に、

形声。「非」+「麻」。「非」は、分離すること。「麻」は、水に浸した麻のこと、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9D%A1が、

燕従風而靡、

と、

外から加わる力に従う、

意から考えると、「麻」を水に浸したイメージが浮かぶ。

「なびく」の語源は、

ナビク(並)は、下二段動詞ナブ(並)と同源。ナブは、同じ方向に揃うという意味的共通性からみて、ナブ(並)・ナム(並)と同源と考えられる、

とする(日本語源大辞典)、

並ぶ意のナム(列)、ナラブと同系か(語源大辞典=堀井令以知)、
ナミク(並木)の義(名言通)、
ナミフス(並偃)の義(言元梯)、

という「並」とみなす説と、

ナビは擬態語。元がささえられながら、先がしなやかに揺れ動く意。擬態語を語根とし、接尾語クをつけて、動詞を作る、さわぐ(騒)・かがやく(輝)・とどろく(轟)などの類(岩波古語辞典)、

と、擬態語とする説に大別される。

他に、

偃(な)え延(ひ)くの意(大言海)、
ナ(和)+引く、物の力に引き寄せられる(日本語源広辞典)、

もあるが、上記二説が有力である。

なぶ(並)、

は、列をなす意である(大言海)が、

なむ(並)、

も、

横に凹凸なく並ぶ意。縦に一列並ぶのはツレ(連)という、

とある(岩波古語辞典)。で、

ならぶ(並)、

は、

二つのものがそろって位置している意が原義、類義語ナム(並)は三つ以上が凹凸なく横に並ぶ意、

である(岩波古語辞典)。つまり、

なぶ(並)、

なむ(並)、
も、
ならぶ(並)、

も、並んだ状態を示す言葉の可能性が高い。となれば、

なぶ(靡)、

もその意味の外延にあるかもしれないが、「さわぐ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/465482949.htmlが、

奈良時代にはサワクと清音。サワは擬態語。クはそれを動詞化する接尾語

とある(岩波古語辞典)。「サワ」は、

さわさわ、

という擬態語であり、「とどろく」が

ドロドロという音ないし声から(国語溯原=大矢徹・時代別国語大辞典-上代編)、
ドドは擬音語(岩波古語辞典)、

と、また擬音語であり、「かがやく」http://ppnetwork.seesaa.net/article/473231684.htmlも、

カガは、赫(かが)、ヤクは、メクに似て、発動する意。あざやく(鮮)、すみやく(速)(大言海)、
カガ・カガヤ(眩しい・ギラギラ)+く(動詞化)(日本語源広辞典)、
カクエキ(赫奕)の転(秉穂録)、
カガサヤクの約言(万葉考)、

と、「赫」とつなげる説が多く、擬態語と見ることができる。「なふ」「なむ」も並んだ状態の擬態語と考えれば、二説は、

並んだ状態、

靡いた状態、

と、重なるのかもしれない。

風になびく.jpg

(風になびく https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8よる)

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:なびく 靡く
posted by Toshi at 05:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする