2021年01月23日
すむ
「すむ」は、
澄む、
清む、
済む、
住む、
棲む、
栖む、
等々と当てる。和語「すむ」のもつ意味の幅を、漢字を当て分けて分化したように見える。
澄む、
清む、
済む、
は、
住むと同根、浮遊物が全体として沈んで静止し、気体や液体が透明になる意、
とあり(岩波古語辞典)、
濁る(http://ppnetwork.seesaa.net/article/479647503.html?1611259439)の対、
とある(仝上)。そして、
済む、
は、
澄むの転義、
とあり(広辞苑)、
澄むに通ず、落ち着き、片付く意、
とある(大言海)。
住む、
棲む、
栖む、
は、
澄むと同根。あちこち動き回るものが、一つ所に落ち着き定着する意(岩波古語辞典)、
澄むに通ず、落ち着く意(大言海)、
とあり、
す(巣)と同源か。生物が巣を定めたところで生活を営む意、
とある(広辞苑)。「す(巣)」は、
栖、
窼、
とも当て(広辞苑・大言海)、
鳥・獣・魚・虫のすみか、
である(岩波古語辞典)。結局、
澄む、
清む、
済む、
住む、
棲む、
栖む、
は、いずれも、「す」(巣)にいきつく。しかし、「すむ(住む)」と「す(巣)」とは相互絡まり、「す」(巣)の語源を、
スム(栖・住)の義(和句解・言元梯・言葉の根しらべの=鈴木潔子)、
スム(住む)の語幹スが名詞に転じた語。スは、物事の落ち着くさまを示す(国語の語根とその分類=大島正健)、
住居(すまひ)を占むる意(大言海)、
スミカ(栖)の義(日本釈名・和訓栞)、
等々と「すむ(住む)」につなげ、「すむ(住む)」の語源を、
スメ(巣目)の義(名言通)、
スウ(窼居)の義(言元梯)、
卜居の意で、シム(卜)の転(和語私臆鈔)、
「巣」から出た動詞か(小学館古語大辞典)、
等々とあり、「す(巣)」と「すむ(住む)」に由来があるように見える。
見方を変えれば、「巣」「住(棲)む」「据う」、さらに「澄む」の語幹スには、「ひとところに落ち着く」といった共通の意を読み取ることが可能、
であり(日本語源大辞典)、それは、
落着く意の語根スから出た語(国語の語根とその分類=大島正健)、
と通じる(日本語源大辞典)、と見られる。だから、
落着くことは、「終わる」「かたづく」と通じる、
ことから、
済む、
へとつながった(仝上)、とみることができる。ただここで「据う」の「ス」も同列に於いているが、「据う」は、
うヱ(植)と同じ(岩波古語辞典)、
直居(すう)の義。居(すを)るの他動詞(大言海)、
とあり、少し異なる気もするが、
植える、
もまた、
落着く、
意と重ならないでもない。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95