2021年02月25日

なみする


「なみする」は、

無みする、
蔑する、

と当て(広辞苑)、

君をなみし奉る(平家物語)、

というように、

ないがしろにする、
軽んずる、
その人が居ても居ないように振舞う、

意である。今日は、ほぼ使わない。平安期の名義抄に、

無・无 ナミス、
蔑 ナミス、ナイガシロ、

とある(大言海・岩波古語辞典)。「なみ」は、

無み、

と当て、

若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴(たづ)鳴きわたる(万葉集)、

と、

ないので、
ないままに、
ないために、

といった意味で使う(明解古語辞典)。「なみする」「なみす」は、

無みすの義、

とある(大言海)。つまり、

無いものと見做す、

というのが原義のようである。(多少価値表現が含まれるが)ただの状態表現が、

ないがしろにする、
軽んずる、

と意味の外延を広げ、価値表現の勝った使い方になっていったとみられる。

「み」は、

形容詞無しの語幹に接尾語ミのついたもの、

とある(広辞苑・明解古語辞典)。接尾語「み」は、一つは、

春の野の繁み飛び潜(く)くうぐいすの声だに聞かず(万葉集)、

というように、

形容詞の語幹について体言を作る、

とあり、ふたつには、

黒み、白み、青み、赤み(ロドリゲス大文典)、

と、

色合いを表し、三つには、

甘み、苦み(仝上)、

と、味わいを表すとある(岩波古語辞典)が、どうも、「なみ」は当てはまらない。その他に、

采女(うねめ)の袖吹きかへす明日香風都を遠みいたづらに吹く(万葉集)、

と、

形容詞及び形容動詞型活用の助動詞の語幹につき、多くは上に間投助詞「を」を伴って、

のゆえに、によって、なので、

と、

原因・理由を表す(広辞苑・明解古語辞典)、

という接尾語があり、上記の、

若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴(たづ)鳴きわたる(万葉集)、

にも該当しそうである。

「なみする」に当てる、「蔑」(漢音ベツ、呉音メチ)は、

会意。大きな目の上に、さかさまに戈(カ 刃物)をそえて、傷ついてただれた目をあらわした。よく見えないことから、転じて目にとめないとの意に用いる、

とあり(漢字源)、「ただれた目」の意の他に、「相手を目にとめない」という意を持つ。別に、

会意、「艹」(艸くさ) +「罒」(目) +「戍」。『戍』は戈ほこで、目前の草を刈って見なかったように扱い、「ないがしろ」にすること、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%94%91が、

会意兼形声文字です(苜+伐)。「かすかで目に見えない精霊(草・木に宿っているとされる魂)」の象形と「横から見た人の象形と握りのついた柄の先端に刃のついた矛」の象形(「人に矛を当てて切る、取り除く」の意味)から、「精霊の力で退けて存在を認めない」、「あなどる」を意味する「蔑」という漢字が成り立ちました、

とあるhttps://okjiten.jp/kanji2112.html説明が、納得がいく。

「無(无)」(漢音ブ、呉音ム)は、

形声。原字は、人が両手に飾りを持って舞うさまで、のちの舞(ブ・ム)の原字。無は「亡(ない)+音符舞の略体」。古典では无の字で、無をあらわすことが多く、今の中国の簡体字でも无を用いる、

とある(漢字源)。また、

日本語の「なし」は形容詞であるが、漢語では「無」は動詞である、

ともある(仝上)。

甲骨文字(殷)「無」.png

(甲骨文字(殷)「無」 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%84%A1より)

参考文献;
金田一京助・春彦監修『明解古語辞典』(三省堂)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:46| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする