糊、
と当てる「のり」は、
海苔、
と当てる「海苔」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/480467069.html?1615577953)で触れたように、「海苔」は、
nöri、
で、「糊」も、
nöri、
で、同源である(岩波古語辞典)。ために、
黏滑(ヌルヌル)の意、滑(スル)に通ず、
とあり(大言海)、「海苔」の、
粘滑(ヌルヌル)の義、
とする(大言海)のと重なる、擬態語「ヌルヌル」由来と思われる。ただ、大言海が「黏」と「粘」と、旧字と新字とに使い分けている理由はわからないが。
ネマリ(粘)の転(東牖子)、
ネバリヲリ(粘居)の義(日本語原学=林甕臣)、
ヌメリ(滑)の義(言元梯・名言通)、
ノはヌラヌラのヌとネバネバのネとに通う(国語の語根とその分類=大島正健)、
も同趣旨、
ノリ(海苔)から(和訓栞)、
もあり得る。ただ、
米と水で煮てねる意で、ネリの義(和句解)、
はともかく、
絹と紙にぬるところから、ヌリ(塗)の義(日本釈名)、
は、「海苔」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/480467069.html?1615577953)で触れたように、「ぬる(塗る)」は、
「ぬる(濡る)」と同根、湯・水・涙など水分が物の表記につく意、
とあり(岩波古語辞典)、別由来と思われる。
「糊」は、
米・正麩(しょうふ)などの澱粉質から製した粘り気のあるもの、
の意で、広くは、
接着剤、
を指す(広辞苑)が、衣服の形を整えるために使う。粘り気が必要で、米以外にも、
麦・大豆、
等々も煮てつくる(岩波古語辞典)。正倉院文書に、
叉下白米弐升、右合白土能(のり)汁料、
とある(仝上)。また平安末期の古辞書『色葉字類抄』には、
糊で貼る、
と載る(広辞苑)。
「糊(黏)」(漢音コ、呉音ゴ)は、
会意兼形声。胡(コ)は「肉+音符古」の形声文字で、牛の下あごの上にかぶさる垂れた肉。糊は「米+音符胡(かぶせる)」で、誤字の上にかぶせて消す白い粉、
とあり(漢字源)、「糊粉」(ゴフン)、「模糊」(モコ)というように、「書き間違った處の上にぬりかぶせてそれを消す米の粉」の意で、「糊塗」はここからきている。他に、「のり」の意があり、「粥」の意から、「糊する」の使い方が出る(仝上)。他に、
会意兼形声文字です(米+胡)。「横線(穀物の穂の枝)と6点(穀物の実)」の象形(「米」の意味)と「ぼんやりしているさまを表す擬態語と切った肉」の象形(肉の1部なのか、あごひげなのか「ぼんやりしてわからない」の意味)から米粒がぼんやりして見えない「のり」、「かゆ」を意味する「糊」という漢字が成り立ちました、
とする別解釈がある(https://okjiten.jp/kanji2649.html)。
参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:糊