「こじつけ」は、
こじつける、
の名詞。
牽強付会、
である(広辞苑)。あるいは、
道理ありげに云ふ、
という(大言海)か、あるいは、
無理に二者を結びつける、無理に筋の通ったことのように言う、
というのが(江戸語大辞典)、その含意を絵解きしてくれる。動詞、
こじつける、
は、文語では、
こじつく、
で、
無理に筋の通ったことのように言いなす、
無理に関係づける、
意である。
抉付ける、
と当てる(江戸語大辞典)ものもある。その意が、だから、
無理強い、
の意に(広辞苑)少しスライドし、
何様(どう)も夫婦合(やひ)の事許りは……親の威光で無理にこじつけにこじつけたと言って、夫れじゃあ和合(じんじく)するもんじやァねへ、
というように(文政七年「軒並娘八丈」)、
無理に行う、押し通す、
の意となり(江戸語大辞典)、当然、
あしたはあたらし橋の旦那にこぢつけようス、
と(文化十五年「辞十八癖」)、
押しかける、
意にもなり、それが「押す」意に焦点を絞ると、
夫にはあらで不得心、どふもこふもゆかぬのをこぢ付けるところが御伝授、
と(安永九年「根柄異軒之伝」)、
口説く、ねだる、
意に転じ、さらに、
こぢつけた侍の出る松の内、
と(安永八年・柳多留)、
似せる、
ばける、
意でも使われる(江戸語大辞典)。今日は、せいぜい、
無理強い、
どまりでしか使われないが。
「こじつける」の語源は、
古事付けるか、故実付ける(江戸語大辞典)、
故事付ける(広辞苑)、
故實附けるの約なるべし、水漬く、みづく(大言海)、
という、
故事、
や
故実、
とつなげる説が多い。しかし、江戸語大辞典が、
抉付け、
と当てていたように、
こじる(無理やりにする)+付ける、
と考える(日本語源広辞典)のが自然ではあるまいか。
「こじる」は、
こづ、
こず、
とも遣い、
えぐる、
意であるが、
くぐる(潜・抉)の転、潜(くぐ)る、こぐる、
とある(大言海)。よく似た意味の、
穿ち過ぎ、
という意の、「うがつ(穿つ)」が、
孔をあける、
意であるのとよく似ているのではないか。
「故事」は、
古事、
と同じ(字源)であり、
明習故事(漢書・蘓武伝)、
と、
むかしありし事実、
であり、「故實」は、
必問於遺訓、而咨於故実(魯語)、
と、
古き事実、
で(仝上)、ほぼ同じ意である。ただ、我国では、「故實」を、
有職故実、
というように、
古への儀式礼法など後世の手本、
の意で使うが(仝上)。
「故」(漢音コ、呉音ク)は、
会意兼形声。古は、かたくなった頭骨、またはかたいかぶとを描いた象形文字。故は「攴(動詞の記号)+音符古」で、固まって固定した事実になること。またすでにかたまって確立した前提を踏まえて、「そのことから」とつなげるので「故に」という意の接続詞となる、
とあり(漢字源)、「古」と同じく、「古い」意である。他に、
会意兼形声文字です(古+攵(攴))。「固いかぶと」の象形(「固くて古い」の意味)と「ボクッという音を表す擬声語と右手の象形」(「強制する」の意味)から、古く固くしてしまう事を意味し、そこから、「死ぬ」、「わざわい」等を
意味し、また、「古(コ)」に通じ(同じ読みを持つ「古」と同じ意味を持つようになって)、「ふるい」の意味、「固(コ)」に通じ、「以前から」を意味する「故」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji874.html)。
(金文(西周)「故」 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%95%85より)
「抉」(漢音ケツ・エツ、呉音ケチ・エチ)は、
会意兼形声。夬(ケツ)は「コ印+又(手)+指一本」の会意文字で、かぎ型の爪(ツメ)を指につけてひっかけるさま。抉は「手+音符夬」で、指をかぎ型に曲げ、ひっかけてえぐりの出すこと、
とある(漢字源)。「剔抉」というように「えぐる」意である。
参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:こじつけ