2021年04月01日

あざやか


「あざやか」は、

鮮やか、

と当てるが、

「あざむく」http://ppnetwork.seesaa.net/article/480760102.html?1617131910で触れたように、「あざやか」の「あざ」は「あざむく」の「あざ」と同根とする説がある。

アザはアザ(痣)・アザケル・アザムク・アザワラフのアザと同根、人の気持にかまわず、どぎつく現れるものの意。アザヤカはすべて、際立って鮮明であるさま。類義語ケザヤカはケ(界)サヤカ(冴)で、二つの対比がはっきりし、物事のけじめがきっぱりしているさま、

とある(岩波古語辞典)。

「アザ」には、

交、

と当て、

アザナフ(糾)・アザナハル(糾)・アザハル(糾)・アザフ(叉)などのアザ、

であり、

あぜ(校)の古形、

で、

棒状・線状のものが組み合う意、

とある(仝上)。名義抄には、

糺縄、アザハレルナハ、

と載る。さらに、「アザ」には、

痣、

と当てて、和名抄に、

痣、阿佐、

とあるように、いわゆる「痣」を指し、さらに、

あばた・ほくろ・こぶ、

等の意でも使い、文明本節用集に、

瘤、あざ、肉起、

とある。この「あざ」が、

アザアザ・アザワラフ・アザケル・アザムク・アザヤカのアザと同根、

とされるのである(岩波古語辞典)。「アザアザ」は、

鮮々、

と当て、

明瞭、鮮明、

の意である。

「あざやか」の語源は、「あざ」の由来と関わり、ひとつは、

アザはアザ(痣)・アザケル・アザムク・アザワラフのアザと同根、

とする説で、

人の気持にかまわず、どぎつく現れるものの意、

とするものである(岩波古語辞典)。これは、

「アザ(痣)+やか」で、きわだって明白な色、美しさ、腕前を言います。一般に見た瞬間の強い印象を表し、舞など、動きが無駄なく、際立って上手だという印象を表現する言葉、

という説明が、「痣」との関連を強く主張している観がある。

いまひとつは、

「あざ(交)+やか(形容動詞化)」で、色を入り交えた美しさを言う、

とするもの(日本語源広辞典)で、これは、「あざむく」の、

アザ(交)ム+ク、つまり真偽をまぜあわせてだます、

と重ねる説(仝上)だが、二つの説明が、微妙に変えてあるのが、少し気になる。ただ、和訓栞が、

黒き色は、體に交じりたるを以て云ふ也(交(アザ)ふと云ふにや)、

しており(大言海)、「痣」の「あざ」と「交」の「あざ」が交叉しているのだが。

『大言海』は、「あざ」との関連を別に解釈し、

アは明くの語幹、明清(アサヤカ)ならむか、

とする。

アキラカ(明)ニ-サヤカ(和句解)、
アキ(明)サヤカ(和訓栞)、

も同趣旨になる。しかし、この意味なら、「痣」の「あざ」と重なるのではあるまいか。

「あざ」は「あざける」「あざむく」と同根で、心情表現に関わりなく強烈に現われることを言うか、

とあり(日本語源大辞典)、さらに、「あざやか」と同義の、語幹を同じくする、

あざ(鮮)らか、

という言葉は、

(殺した動物の肉の)新鮮で生き生きしているさま、

の意で用い(岩波古語辞典)、両者は使い分けられていた。

「あざらか」が魚肉などの鮮度を言うのに対して、「あざやか」は美的形容をもっぱらとしていたが、中世に、ヤカとラカの区別が薄れるにつれて、「あざらか」が消滅して、「あざやか」が新鮮の意味でもちいられるようになった、

とある(日本語源大辞典)。中古では、「あざやか」は、

衣装や調度の色彩のコントラスト、姿形、態度などの視覚的な鮮明さに用いる場合、



性格、態度、手腕などが際立っているなど、質的な価値判断をこめて人事に用いる場合、

とがあった(仝上)、とある。やはり、

コントラストの際立ち、

が原義なのではあるまいか。

「鮮」(セン)の字は、

会意。「魚+羊(ひつじ)」で、生肉の意味を表す。なまの、切り立ての、切りめがはっきりした等々の意を含む、

とあり(漢字源)、「鮮魚」というように、「生の魚」「生の肉」の意であり、そこから「新しい」という意味が派生した。その意味で「あざらか」に当てたのは的確であった。

「鮮」.gif

(「鮮」 https://kakijun.jp/page/1747200.htmlより)

別に、

会意文字です(魚+羊)。「魚」の象形と「羊の首」の象形から、新鮮さを求める魚や羊をあげて、「あたらしい」、「いきいきしている」、「生魚」、「生肉」を意味する「鮮」という漢字が成り立ちました。また、「尟(セン)」に通じ、「すくない」、「とぼしい」の意味も表すようになりました、

ともありhttps://okjiten.jp/kanji314.html、金文の文字を見ると、意味がよくわかる。やがて、「金文」の、

羊は上、魚は下、上下の結びついた構造は小篆の「鮮」という単語が左右の構造に受け継がれ、変更されています。楷書は小篆を受け継ぎ、左右合体した文字、

となっていくhttps://asia-allinone.blogspot.com/2019/01/p5.html

「鮮」の成り立ち.gif

(「鮮」の成り立ち https://asia-allinone.blogspot.com/2019/01/p5.htmlより)

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:11| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする