2021年04月07日

じぶ煮


「じぶ煮」は、

熟鳧煮、
治部煮、

等々と当てる。

石川県金沢の郷土料理で、鴨肉の煮込みのこと、小麦粉をまぶした鴨肉を煮て、別に煮込んだ野菜や簾麩(すだれぶ)と共に山葵(わさび)を添えて供する、

とある(広辞苑)。「簾麩」(すだれふ・すだれぶ)というのは、

石川県金沢の名産品、特産品として知られる麩の一つ。グルテンに米粉を加えて練り、「すだれ」に包んで茹でたもの。生麩の一種。江戸時代から製造されている伝統的な加賀麩のひとつ、

であるhttps://japan-word.com/sudarefu。「じぶ煮」については、別に、

鴨肉(もしくは鶏肉)をそぎ切りにして小麦粉をまぶし、だし汁に醤油、砂糖、みりん、酒をあわせたもので鴨肉、麩(金沢特産の「すだれ麩」)、しいたけ、青菜(せりなど)を煮てできる。肉にまぶした粉がうまみを閉じ込めると同時に汁にとろみをつける。薬味はわさびを使う、

ともあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E9%83%A8%E7%85%AE。「熟鳧」と当てるのは、

鴨の煮込み、

の意だから、とある(仝上)。本来は、

小鳥を用いるとされ、その際は丸ごとすり潰してひき肉状にし、これをつくねのように固めたものを煮立てた、

とある(仝上)。そのためか、「熟鳧煮」は、

ツグミを用いた金沢地方の郷土料理、

ともある(たべもの語源辞典)。

ツグミは秋になるとシベリアから渡ってくる。主な捕獲地は南加賀の丘陵地帯、

で、このための、

霞網は加賀藩で考えられて発達した、

という(仝上)。今日は霞網による捕獲は禁止されているため、

鴨、

等々の鳥肉を使う(仝上)、とある。

鳧(フ)は、カモのことで、じふ煮は、鴨の皮を煎り、出したまりを加減して入れ、ジフジブといわせ、その身を入れて煮た料理、

とある(仝上)。「じぶ煮」には、

カモ(またはガン)の正肉を醤油で少し辛めに蒸し、焼麩千切り、ささがき牛蒡か山芋を少し入れて煎る。要するに醤油仕立てで、カモに限らず、焼麩・牛蒡・茸類を加えて煮たものを準麩(じゅんぶ)といった。ジブのことである、

とするもの(仝上)と、

煎鳥のようにして塩を強く塩梅して、煮汁少なく仕かけ、ジブシブと煎りつけるようにして出すもの、

とがある(仝上)、とする。

同じ「じぶ」という名称であっても、調理方法には変遷があった、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E9%83%A8%E7%85%AE。加賀前田家に仕えた代々料理人が18世紀前期に書いた『料理の栞』には、

麦鳥(むぎどり)、

と呼ばれる、

雁・鴨・白鳥などの肉をそぎ切りにし、麦の粉を付けて濃い醤油味の汁で煮、ワサビを添える、

という料理があり、これが現在の治部煮に似ている、という(仝上)。また同書には、

「じぶ」あるいは「じゅぶ」、

という、

鍋に張った汁(醤油、たまり、煎り酒などを混ぜる)を付けながら鍋肌で焼き、汁を張った椀に5切れほど盛ってワサビを添えて出すカモの鍋焼き、

という料理があった、とされる(仝上)。上記の「じぶ煮」の二つのタイプは、それぞれの流れをくむものとみていい。

ただ、以後この二種類の料理が混同されて、19世紀前期までには従来の「麦鳥」のような料理が「じゅぶ(熟鳧)」と呼ばれるようになり、現在の「じぶ」につながる、

とある(仝上)。

「じぶ煮」という名の由来については、

じぶじぶと煎りつけるようにして作るhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E9%83%A8%E7%85%AE
ジブシブと煎りつけるようにして出す(たべもの語源辞典)、
ジブジフと音をさせて煮るhttps://mainichi-kotoba.jp/kanji-439

等々といった調理の仕方に関わる説や、あるいは、

カモに限らず、焼麩・牛蒡・茸類を加えて煮たものを準麩(じゅんぶ)といった。ジブのことである(仝上)、

といった料理内容に関わる説が順当だと思う(仝上)が、その他に、「じぶ」という名前の由来は諸説ある。

「じゅぶ」とは「熟鳧」(じゅくぶ)の略https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E9%83%A8%E7%85%AE
豊臣秀吉の兵糧奉行岡部治部右衛門が朝鮮から伝えた陣中料理(https://mainichi-kotoba.jp/kanji-439・たべもの語源辞典)、
石田三成(治部少輔)が考案した料理(仝上)、
高山右近が加賀にいた折に伝えた欧風料理だともされる(仝上)、

等々がある。

治部煮.png


参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:09| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする