2021年04月17日

菜の花


「菜の花」は、

アブラナ(油菜)、ナタネナ(菜種菜)、ハナナ(花菜)、

と呼ぶ、

アブラナ科アブラナ属の花の総称、

を指す(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%9C%E3%81%AE%E8%8A%B1・広辞苑・たべもの語源辞典)が、特に、

アブラナまたはセイヨウアブラナ、

の別名としても用いられる(仝上)。花びらが4枚で十文字に咲くことから、

十字花科植物の花、

とも呼ばれる、

アブラ菜、コマツ菜、カブ、白菜、キャベツ、チンゲン菜、ブロッコリー、カリフラワー、葉牡丹、大根、カラシナ、ザーサイ、

等々、普段は花が咲く前に収穫されるが、種子を採るため、または放置されたまま成長を続けると花が咲いてくる。
アブラナ属以外のアブラナ科の植物には白や紫の花を咲かせるものがあるが、これを指して「白い菜の花」「ダイコンの菜の花」という(仝上)、とある。

菜の花.JPG

(菜の花)

「菜」は、

葉・茎などを食用とする草本類の総称、

であり(広辞苑)、特に、

総菜、

というように、

副食物とする草の総称、

とされる(日本語源大辞典)。最古の部首別漢字字典(100年)『説文解字』に、

草可食者、曰菜、

とある。

「菜」 漢字.gif

(「菜」 https://kakijun.jp/page/1164200.htmlより)

「菜」(サイ)は、

会意兼形声。「艸+音符采(=採 サイ、つみとる)」。つみなのこと、

とあり(漢字源)、「食用とする草本類」「あぶらな」「副食物」と、ほぼ和語の「な」の使い方と重なる。

しかし、「肴」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477167042.htmlで触れたように、和語「な」は、

菜、
肴、
魚、

を当てた。「さかな」の語源が、

酒菜(さかな)の意、

とされるように(広辞苑)、「な(肴・菜)」は、平安時代から使われ、

サカは酒、ナは食用の魚菜の総称(岩波古語辞典)、
酒+ナ(穀物以外の副食物)、ナは惣菜の意(日本語源広辞典)、
「菜」(な)は、副食物のことを指し、酒に添える料理(酒に添える副菜)を「酒のな」と呼び、これが、なまって 「酒な」となり、「肴」となったhttp://hac.cside.com/manner/6shou/14setu.html
「酒菜」から。もともと副食を「な」といい、「菜」「魚」「肴」の字をあてていた。酒のための「な(おかず)」という意味である。「さかな」という音からは魚介類が想像されるかもしれないが、酒席で食される食品であれば、肴となるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4

等々と、「な(肴)」も「な(菜)」も、

食用とする魚菜の総称(大言海)、

の意で、

酒を飲むとき、副食(アハセ)とするもの、魚、菜の、調理したるもの、其外、すべてを云う、

とされた(仝上)が、いま「肴(さかな)」は、

今、専ら、魚を云ふ、

ようになり、「菜」は、

草本類、

を指すように分化した。

だから、「な(菜)」は、

肴(な)と同源、

であり(広辞苑)、「菜」と「肴」と漢字をあてわけるまでは、

な、

で、

野菜・魚・鳥獣などの副食物、

を全て指し、

さい、
おかず、

の意であった(岩波古語辞典)。かつては、

おめぐり、
あわせもの、

とも言った。「あわせもの」は、

飯に合わせて食うことから、

いう(日本食生活史)。古今著聞集に、

麦飯に鰯あはせに、只今調達すべきよし、

とある(仝上)。

「菜」の字を当てることで、「菜(な)」は、

葉・茎・根などの食用とする草木、

と分離し、今日では、「菜」(な)は、

あぶらな類の葉菜、

に限定するようになる(広辞苑)。そして、

魚類のことを「さかな」と呼ぶのは、肴から転じた言葉であり、酒の肴には魚介類料理が多く使用されたためである。古くは「うを」(後に「うお」)と呼んでいたが、江戸時代頃から「さかな」と呼ぶようになった、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4

「な」は、だから、「な(肴)」の語源も、たとえば、

ナム(嘗)の義(大言海)、

「な(菜)」の語源も、

ナム(嘗)の義(日本釈名・和訓栞・大言海)、

「な(魚)」の語源も、

ナム(嘗)の義(大言海)、

等々同じになる。「な(菜)」の語源が、

肴(な)、

で、「な(肴)」の語源が、

菜(な)(言元梯)、

でもおかしくはない。

因みに「菜の花」は晩春の季語、

菜の花や 月は東に日は西に(蕪村)
なの花にうしろ下りの住居かな(一茶)

等々があるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%9C%E3%81%AE%E8%8A%B1

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 03:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする