2021年04月21日

せんろっぽ


「せんろっぽ」は、

繊蘿蔔、

と当てるが、

千六本、
繊六本、

と当てたため、

せんろっぽん、
せろっぽう、

等々ともいう。「蘿蔔」は、「すずしろ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/465194822.htmlで触れたように、

蘿蔔(ラフク)、

は、漢名である。

蘿菔(ラフク)、

とも書く(字源)。

「蘿蔔」は、

ロフ(広辞苑・大言海)、
ラフク(たべもの語源辞典)、
ラフ(精選版日本国語大辞典)、

等々と表記されるが、『易林本節用集』(1597)には、

らふく(蘿蔔)、

とある(精選版日本国語大辞典)。

中国でロープと訓まれた。千切りにした大根を北京語でセンロープといった。それが訛って千六本といわれた、

とある(たべもの語源辞典)。

「せんろっぽ」は、従って、漢名の、

センロフ(繊蘿蔔)の転、

とある(広辞苑・大言海)。ただ、

センロフ→センロッポ、
センラフ→センロッポ、
センラフク→センロッポ、

のいずれにせよ、転訛しにくいと見えるが、「繊蘿蔔」を、

唐音「せんろうぽ」の音変化(デジタル大辞泉)、
せんろふを唐音で訓んだ(日本語源大辞典)、
北京語で発音すると、センロウプ(たべもの語源辞典)、

等々と、漢語の発音のいずれかの転訛とみられる。日本人の大根の千切りを見て帰化僧が、

センロウプ、

と呼んだところから、大根の千切りを、そう呼び始めた(たべもの語源辞典)、ともある。室町時代の『下学集』(1444)には、「繊蘿蔔」を、

センロフ、

とふり仮名されている(仝上)。いつ、

センロウプ→センロフ→センロッポ、

に転訛したかははっきりしないが、「かた言」(1650)には、

ほそくきざみてうじたるを繊蘿蔔(せんろふ)と申すを、せろっぽんと云は、いかが、

とあり(精選版日本国語大辞典)、転訛であることを承知していた、とみられる。

ただ、異説に、

中国料理の料理法でハリのように細く大根を切る「鍼蘿蔔(チェンロープ)」から、

とするものもあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%8A%E5%88%87%E3%82%8A。これだと、「セン」ではなく、

チェンロープ→センロッポ、

という転訛ということになる。

なお、昭和初期まで、東京の主婦は、

「今朝のおみおつけのみは、せんろっぽよ」

という会話をしており、「せんろっぽ」が大根の千切りであることを承知していた、とある(たべもの語源辞典)。

平安期の「和名抄」は、

〈葍〉〈蘿菔〉の字をあて、俗に大根の二字を用う、

とある(世界大百科事典)が、近世以前は、どんな味付けをして食べていたものか、ほとんど知る手がかりがない(仝上)、とある。

また、「庭訓往来」には、

菜者、繊蘿蔔、煮染午房、

とある(大言海)。

大根の千切り.jpg

(大根の千切り https://cojicaji.jp/cooking/how-to-cut/2164より)

従って、「千切り」にも、

千切り、

とともに、

繊切り、

とも当てる。

「繊」 漢字.gif

(「繊」 https://kakijun.jp/page/1728200.htmlより)

漢字「繊(纖)」(セン)は、

会意兼形声。韱(セン)は、小さく切るの意を含む。纖はそれを音符とし、糸を加えた字、

とあり(漢字源)、「繊細」「繊維」というように、細い意で、別に、

会意兼形声文字です(糸+韱)。「より糸」の象形と「刃のついた矛の象形と人の象形(「みじん切りにする」の意味)と地上に群がり生え揃った、にらの象形」(「みじん切りにしたような山にら」の意味)から、「細くてよわよわしい糸」を意味する「繊」という漢字が成り立ちました、

とありhttps://okjiten.jp/kanji1850.html、「韱」の由来がよくわかる。

「繊」 漢字 成り立ち.gif

(「繊」の成り立ち https://okjiten.jp/kanji1850.htmlより)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:57| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする