水前寺海苔

「水前寺海苔」というものがある。 淡水産の藍藻、清流の川底などに生え、体は丸い単細胞から成り、粘液質により多数集まって塊状をなす。これを厚紙状に漉いて食用とする、 とある(広辞苑)。 九州の一部だけに自生する食用の淡水産藍藻類、 であり、 茶褐色で不定形。単細胞の個体が寒天質の基質の中で群体を形成する。群体は成長すると川底から離れて水中を漂う、 ともあり(…

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すなわち

「すなわち」は、 即ち、 則ち、 と当てる(広辞苑)が、 乃ち、 とも当て(デジタル大辞泉)、 便ち、 輒ち、 迺ち、 とも当てる(大言海)。今日、ほとんど、 接続詞、 としての用法しかないが、この語の語源は、 いわゆる「時を表す名詞」の一種であり、平安時代以後、「即・則・乃・便」などの字の訓読から接続詞として用いられるようにもなっ…

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じじむさい

「じじ(ぢぢ)むさい」は、 爺むさい、 と当て、 年よりじみている、 むさくるしい、 という意味だが(広辞苑)、年寄り自身に言うよりは、今日、 じじむさい身なり、 じじむさい意見、 というように、 男性の容姿や衣服などが年寄りのように感じられる様子、 また、 年寄りのようで汚らしい様子、 の意味で使う(デジタル大辞泉)。ただ、「じじむさ…

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中国を定む

佐藤信弥『戦争の中国古代史』読む。 「中国古代史は、様々な勢力間の戦争を通じた『中国』形成史と見ることができる。」 と、著者は「まえがき」で述べる。本書は、 「甲骨文など同時代の文字資料に軍事に関する記録が現れはじめる殷代から漢王朝成立までの戦争を見ていくことで、この『中国』形成」 を見ていく、と。 『史記』五帝本紀のいう三皇五帝の神話時代である新石器時…

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庖丁

「庖丁」は、 包丁、 とも当てるが、「庖」と「包」は別字である。日本では、「包」の字を、 「庖」と「繃」の代用字として使う、 とある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%8C%85)ので、 庖丁→包丁、 繃帯→包帯、 という使い方はわが国だけである。 (「包」 簡牘(かんとく)文字・戦国時代 https://j…

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たたき

「たたき」には、 叩き、 敲き、 と当てるのと、 三和土、 と当てるのとがある。いずれも、「たたく(叩・敲)」の連用形で、「三和土」は、 叩き土の略、 とあり(大言海)、 合わせ土、 ともいい、 赤土、石灰、砂に、にがしお(苦汁(にがり))を加えて叩き固めたもの、 で(大言海・日本語源広辞典・日本語源大辞典)、 溝、泉水の底…

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しゃべる

「しゃべる」は、 喋る、 と当てる。 話す、 言う、 の意だが、特に、 口数多くぺらぺらと話す、 意とあり(広辞苑・デジタル大辞泉)、 騒々しく話しまくる、 ともある(岩波古語辞典)。室町末期の『日葡辞書』では、 他人にもらす、 意も載る(広辞苑)。 (「喋」 https://kakijun.jp/page/shaber…

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「あけぼの」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/442024908.html)で触れたように、古代、夜の時間は、 ユウベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ、 という区分をし、昼の時間帯は、 アサ→ヒル→ユウ、 と区分した(岩波古語辞典)。「アサ」は、 夜の対ではなく、 ヨイ(宵)・ユウ(夕)の対になる(仝上、なお「夜」(…

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ひる

「ひる」は、 昼、 と当てる。 「朝」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/481387969.html?1620462788)や、「夜」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/442052834.html)でも触れたが、上代には昼を中心にした言い方と、夜を中心とした時間の言い方とがあり、 昼を中心…

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ゆふ

「ゆふ(ゆう)」は、 夕、 と当てるが、 夕方、 日暮れ、 夕暮れ、 晩方(ばんがた)、 等々とも言い、 「夕暮れ」「日暮れ」は、あたりが暗くなりはじめた状態をいうことが多く、「夕方」「晩方」は、そのような時間帯をいうことが多い、 とあり、 「晩方」が最も遅い時間をさす、 とある(類語例解辞典)。他にも、 入相、 夕刻、 黄昏(…

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よひ

「よひ」は、 宵、 と当てる。 「朝」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/481387969.html?1620462788)や「ひる」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/481403520.html?1620499255)で触れたように、「よひ」は、上代の夜の時間区分で、 ユフベ→ヨヒ→ヨナ…

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ようやく

「ようやく(やうやく)」は、 漸く、 と当てる。 ようやく春めいてきた、 というように、 物事がしだいに進行して、ある状態になるさま、次第に、だんだん、 の意味と、 ようやく終電に間に合った、 というように、 長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま、やっとのことで、とうとう、 という意味と、 ようやく起きて、 という…

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邪馬臺国の滅亡

若井敏明『謎の九州王権』読む。 本書は、邪馬臺国とつながる倭国の系譜が、「ヤマト王権」によって滅ぼされるまでを描く。当然、邪馬臺国は、 九州説を前提、 とする。僕も、口幅ったいようだが、 畿内説、 はあり得ないと思っている。ヤマトの王権に続く大和朝廷は、 邪馬臺国、 も、 卑弥呼、 も承知しておらず、中国の史書によってはじめて知った気配で…

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とうとう

「とうとう」は、 到頭、 と当て、 とうどう、 とうど、 とも訛る(広辞苑・デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典)。 物事が最終的にそうなるさま、 ついに、 結局、 とどのつまり、 という意味である。 浮世到頭須適性、男兒何必蓋成功(羅隠詩) とあり、 到頭、 は、 至竟、 畢竟、 到底、 と同義の漢語で、 …

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ついに

「ついに(つひに)」は、 終に、 遂に、 竟に、 等々と当てる(大言海・デジタル大辞泉)。 ついに、完成した、 というように、 長い時間ののちに、最終的にある結果に達するさま、とうとう、しまいに、 という意味と、 ついに、完成しなかった、 というように、 (多く、打消しの語を伴って用いる)ある状態が最後まで続くさま、いまもって、いまだ…

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とどのつまり

「とどのつまり」は、 とどのつめ、 ともいう(岩波古語辞典)が、 結局、 つまるところ、 いきつくところ、 の意である(広辞苑・デジタル大辞泉)。 「とどのつまり」については、 「とどのつまり」の語源は、出世魚で知られているボラなのです。哺乳類として知られるトドではありません。ボラは成長していく過程で、以下のように成長していきます。 関東の場合:オボ…

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たまり

「醤油」は、 原料に大豆以外の麦類を加えたもの、 「たまり」は、 大豆だけを原料にしたもの、 という違いがある(たべもの語源辞典)らしい「たまり」は、 溜り、 と当てるが、 たまる、 という意味で、 味噌からしたたった汁、 の意と、 溜まり醤油(じょうゆ)、 の意とがある。 (「醤」 https://kakij…

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構造としての未完

ドストエフスキー(小沼文彦訳)『カラマーゾフの兄弟ⅠⅡ』を読む。 ほぼ60年ぶりに読み直してみて、『大審問官』の動機となる、幼児たちの悲痛な声は覚えていたが、他は、殆ど忘れていることに気づいた。十代に読みこなせるものでもないが、いま読み直してみても、浅才、非才の僕には、読みこなす力はなく、圧倒されるほどの読後感は薄かった、というのが正直な感想だ。むしろ、僕は、この『カラマーゾフ…

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たまる

「たまる」は、 溜る、 と当てる。 同質のものが一所(ひとところ)に次第に集まりと止まってじっとしている意、 とあり(広辞苑)、 流れ集まる(古事記「水のたまる依網(よさみ)の池の」)、 集まりとどまる、積もる(源氏「かひなを枕に寝給へるに、御ぐしのたまりたる程などありがたくうつくしげなるを」)、 物がある場所に止まる(後撰和歌集「散るとみて袖に受くれどたま…

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内戦史

倉本一宏『内戦の日本古代史~邪馬台国から武士の誕生まで』を読む。 サブタイトルにあるように、本書では、 弥生時代から中世成立期にかけて、およそ850年間の、 邪馬台国時代の、倭国の狗奴国・邪馬臺国戦から、ヤマト王権の国内統一戦以降、壬申の乱、蝦夷征討、天慶の乱、前九年・後三年の役、と武士が台頭してくるまで、を追っていく。 同じ著者が手掛けた、日本の対外戦を取り…

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