2021年05月13日
邪馬臺国の滅亡
若井敏明『謎の九州王権』読む。
本書は、邪馬臺国とつながる倭国の系譜が、「ヤマト王権」によって滅ぼされるまでを描く。当然、邪馬臺国は、
九州説を前提、
とする。僕も、口幅ったいようだが、
畿内説、
はあり得ないと思っている。ヤマトの王権に続く大和朝廷は、
邪馬臺国、
も、
卑弥呼、
も承知しておらず、中国の史書によってはじめて知った気配である。畿内に邪馬臺国があったとしたら、それはおかしい。村井康彦『出雲と大和』(http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163142.html)でも触れたように、
『魏志倭人伝』で知られた倭の女王卑弥呼の名が、『古事記』にも『日本書紀』にも全く出てこないこと、
しかも、『日本書紀』の著者たちは、中国の史書で卑弥呼の内容も存在も知っていながら、にもかかわらず名を出さなかった、
等々から、卑弥呼が大和朝廷とは無縁の存在である。従って、邪馬台国は大和朝廷とはつながらないのだと思う。
著者の、
九州王権、
は、「邪馬壹国」論で著名な古田武彦氏の、
九州王朝、
と重なるが、その違いを、
「古田氏は、邪馬臺国(氏の主張では邪馬壹国)が九州にあったことと、『三国志』の『魏書』東夷傳倭人の条(『魏志』倭人伝)以降の中国史書に見える倭には連続性が認められることを主な根拠として、九州を領土とする王朝が弥生時代初期から七世紀末まで存在したとする。
しかし、中国・朝鮮の史料にみえる倭がすべて九州王朝を指すというのは、無理があるのではないか。私は『広開土王碑』に見える倭や、いわゆる倭の五王(讃・珍・済・興・武)はヤマト王権を指すと考えている。」
とし、
「ヤマト王権に支配されるまで九州に存在した王権」、
を、
九州王権、
と呼ぶ。日本の史料では、ヤマト王権は、
三世紀後半から四世紀、
にかけての、
崇神・垂仁・景行天皇の時代、
つまり、
大王(おおきみ)の時代、
に列島統一の過程にあり、
「崇神天皇の時代に、東は北陸から東海、北は丹後、西は吉備が支配地となり、その後、出雲も支配に屈した。垂仁天皇の時代に但馬の勢力を降したヤマト王権は、いよいよ九州地方に本格的な進出をくわだてる。」
『日本書紀』と『風土記』によれば、「景行天皇自身による親征」は、
四世紀前半、
と著者は推定する。つまり、
「日本の史料では、ヤマト王権と九州勢力の接触は四世紀にならないとみとめられない」
のである。
「三世紀に九州諸国を統括していた倭王・卑弥呼の都である邪馬台国は畿内の大和ではなく、九州に所在したと確信する所以である」
と。
景行天皇の九州遠征は、最初は、四世紀初頭、
「南部九州の襲(そ)国(鹿児島県霧島市・曽於市あたりか)に至る時期である。この頃、九州では、(卑弥呼の宗女)
壹与(臺与とも)の時代はすでに終わっていたと思われる。」
このときは、東部北部を除く九州を支配下に置き、
国造を、
宇佐、豊、国東、日田、日向、大隅、薩摩、火、阿蘇、葦分(葦北)、天草、
に置く。そして、「『ヤマトタケル』と呼ばれた小碓皇子(おうすのみこ)の皇子、成務天皇のあとを継ぎ即位した仲哀天皇」が、遠征を開始するが、
(一に云く)天皇、みずから熊襲を伐(う)ちて、賊の矢にあたりて崩ず(書紀)、
と、九州王権側の、
羽白熊鷲(はしろくまわし)、
と戦って敗死し、代わった神功(じんぐう)皇后は、
層増岐野(そそきの)、
で羽白熊鷲(はしろくまわし)斃し(福岡県朝倉郡筑前町)、本拠地、山門(福岡県みやま市)に入る。『日本書紀』仲哀九年(367)三月丙申条に、
転じて山門県に至り、則ち土蜘蛛・田油津媛(たぶら(ゆ)つひめ)を誅す。時に田油津媛の兄、夏羽(なつは)、軍を興して迎え来る。然るに其の妹の誅されたるを聞きて逃ぐ、
とある。著者は、これを、
邪馬臺国の滅亡、
と見る。
卑弥呼→壹与……→田油津媛、
と続く女王の系統と見ることになる。たしかに、この、
田油津媛と、兄夏羽、
は、魏志・倭人伝の、卑弥呼のくだりの、
夫婿無く、男弟あり、佐けて国を治む、
の、
卑弥呼―弟、
を類推させる。あとは、考古学的な検証がまたれるが、百年たっても、天皇陵の検証はされそうもない。この国は、自国の歴史すら偽装しても憚らないらしい。
参考文献;
若井敏明『謎の九州王権』(祥伝社新書)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95