2021年05月15日

ついに


「ついに(つひに)」は、

終に、
遂に、
竟に、

等々と当てる(大言海・デジタル大辞泉)。

ついに、完成した、

というように、

長い時間ののちに、最終的にある結果に達するさま、とうとう、しまいに、

という意味と、

ついに、完成しなかった、

というように、

(多く、打消しの語を伴って用いる)ある状態が最後まで続くさま、いまもって、いまだに、とうとう、

という意味がある。「とうとう」http://ppnetwork.seesaa.net/article/481488740.html?1620932160で触れたように、「とうとう」にも、

とうとう完成した、

と、

とうとう完成しなかった、

の二重の使い方があるが、

口頭語としては「とうとう」が多く用いられ、「ついに」は文語的である、

とある(デジタル大辞泉)。

「ついに」は、

つひ(終、竟)+に、

で、「つひ」は、

終の住処、
終の事、
終の道、

等々と使う、

終わり、

の意であり、それをメタファに、

死期、終焉、

の意である。「つい(ひ)」は、

ツイユ(潰・弊・費)、ツヒヤス(潰・弊・費)と同根、次第に痩せ衰える、用いて次第に減る意、

とある(岩波古語辞典・広辞苑)。「ついゆ」(潰・弊・費)は、

生気を失う、
衰える、

という意なので、

長い時間の後、最終的な時点で新しい何かが実現した、またはしなかった、

という含意の原意は、

ものごとが衰え消耗していってゆきつくところ、

の意(岩波古語辞典)で、

次第に消えていく、

というようなニュアンスだったように見える。その意味では、

ツキ(尽)の義(言元梯)、
ツクル(尽)の義(和句解)、
尽きる日の義(国語の語根とその分類=大島正健)、

等々もあり得るが、

つく→つひ、

との音韻変化は、

イカホロ(伊可保呂)→イハホロ(伊波保呂)、
カルカタ(離る方)→ハルカタ・ハルカ(遥)→ハルバル(遥々)、

等々、

カ行音[k]→ハ形音[h]、

の、

カ→ヒ、

と、

発音運動の衰弱化に伴い破裂運動が摩擦運動にかわる、

ということ(日本語の語源)がありえるので、無理筋ではないのだが、しかし、

ツイユ(潰・弊・費)、ツヒヤス(潰・弊・費)と同根、

ということでいいのではあるまいか。

「終」 漢字.gif


「終」(漢音シュウ、呉音シュ)は、

会意兼形声。冬(トウ)は、冬の貯蔵用の食物をぶらさげたさまを描いた象形文字。のち日印や冫印(氷)を加えて、寒い季節を示した。収穫物をいっぱいたくわえた一年のおわり。中(なかにいっぱい)・蓄(中にいっぱいたくわえる)と同系のことば。終は「糸+音符冬」で、糸巻に糸をはじめからおわりまで、いっぱい巻いて蓄えた糸の玉。最後までいきつくの意を含む、

とある(漢字源)。別に、

「冬」は貯蔵用の食べ物の象形で、それから、それを必要とする「ふゆ」を意味するようになった。冬は年の「おわり」であり、終は糸巻きに最後まで巻き付けるの意(藤堂)、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B5%82

「終」 甲骨文字.png

(「終」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B5%82より)

「終」は、

始と対す。始よりをわりまで続く意あり、終日は朝から晩まで、終身は生れてから死するまでなり、

とある(字源)。

「終」 成り立ち.gif

(「終」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji432.htmlより)

「遂」(漢音スイ、呉音ズイ)は、

形声。㒸は重いぶたを描いた象形文字。隊(タイ)・墜(スイ)などの音符として用いられる。遂は辶(すすむ)にそれを単なる音符として添えた字。道筋をたどって奥へすすむこと、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です。「立ち止まる足・十字路の象形」(「行く」の意味)と「倒れた人」の象形(「したがう」の意味)から、一定の道すじに従って事が運び「なしとげる」を意味する「遂」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1692.html

「遂」 金文.png

(「遂」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%81%82より)

「遂」は、

事をしとぐる意あり、つひにと訓むときは、因なり、兩事相因而及也と註す。此の因ありて、たゆみなく彼の事をしとぐる義。韓非子「蟻壊一寸而仞有水、乃掘地遂得水」、

とある(字源)。

「遂」 成り立ち.gif

(「遂」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1692.htmlより)

「竟」(漢音ケイ 呉音キョウ)は、

会意。「音+人」で、音楽のおわり、楽章の最後を示す、

とある(漢字源)。

「竟」 甲骨.png

(「竟」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AB%9Fより)

「竟」は、

究竟、または畢竟と熟し、あげくと訳す。史記に「及破驪戒、獲驪姫愛之、竟以乱晉」とある如し、

とある(字源)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:01| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする