2021年06月13日

ポンチ絵


「ポンチ絵」は、

寓意・諷刺の滑稽な絵・漫画、

の意(広辞苑)で、この言葉は、

1862年に横浜でイギリス人チャールズ・ワーグマンによって創刊された漫画雑誌『ジャパン・パンチ(The Japan Punch)』に由来する、

とされる。この雑誌は、

1841年にロンドンで創刊された雑誌『パンチ(Punch)』、

にならって創刊した。

時事的題材をもとにユーモラスな諷刺画を次々と掲載、大きな評判を呼んだ、

という『ジャパン・パンチ』の活動から、

ポンチ絵、

という言葉が生まれた(澤村修治『日本マンガ全史』)とされるが、正確には、本家の、

週刊誌《パンチPunch、or the London Charivari》

で掲載されていた戯画にならって、『ジャパン・パンチ』が創刊されたのだから、

1841年ロンドンで刊行された週刊誌《パンチPunch、or the London Charivari》に掲載された戯画にちなむ、

というべきかもしれない(百科事典マイペディア)。既に、明治一六年(1883)二月六日東京日日新聞には、

「ポンチ絵を善(よく)して人の似顔を写すに妙を得たり」

という記事があるので、幕末から、明治にかけて「ポンチ絵」という言葉が一般化していたことが分る。

ジャパン・パンチ.jpg

(『ジャパン・パンチ』 https://guchini.exblog.jp/18581584/より)

この「ポンチ」は、

Punch、

から、とされる。「パンチ」とは、

Showのかぎ鼻で猫背な人形、

とある(リーダーズ英和辞典)が、

もともと人形芝居に出演する主要人物たる男の名、

ともあり(大言海)、

人形芝居に戯謔(おどけ)をなす者、

を指し、転じて、

寓意有りて、世を諷する戯画をも云ふ、

とある(仝上)。だから、

鳥羽絵の類、

とある(仝上)。「鳥羽絵(とばえ)」は、

江戸時代から明治時代にかけて描かれた浮世絵の様式のひとつで、「江戸の漫画」とも言われる略画体の戯画のこと、

であるが、この名は、「鳥獣人物戯画」の作者と伝えられる、

鳥羽僧正覚猷、

に因んでいる(広辞苑)。

絵新聞日本地.jpg

(仮名垣魯文編輯出版・暁斎挿絵『絵新聞日本地』(えしんぶんにっぽんち) https://twitter.com/moshimofukiwo/status/661512198892556288/photo/1より)

この「ポンチ絵」の、

マンガ的表現、

は、明治の日本で流行し、ポンチ絵入りの新聞・雑誌が日本人によっても続々刊行された。河鍋暁斎・仮名垣魯文は、日本人初の漫画雑誌、

『絵新聞日本地』

を、明治七年(1874)に刊行したし、中江兆民の仏学塾でフランス語を教えていた、フランス人のG・ビゴーも、イギリスやフランスの雑誌に報道絵画を載せつつ、明治二十年(1887)に居留フランス人向けの風刺漫画雑誌、

トバエ(TÔBAÉ)、

を創刊した(澤村・前掲書)。

ジョルジュ・ビゴーの「魚釣り遊び」.jpg


狂斎とワーグマンに関係のあった小林清親も、ワーグマンの「THE JAPAN PUNCH」から派生した「清親ぽんち」シリーズを明治十四年(1881)から刊行。明治十五年(1882)頃からは「団々珍聞(まるまるちんぶん)」に毎号風刺画も描き始めていたhttp://artistian.net/kiyochika/

小林清親のポンチ絵.jpg

(小林清親のポンチ絵 http://artistian.net/kiyochika/より)

ある意味、北斎の「北斎漫画」の系譜が、伏流水のように地下を通底し、文明開化とともに、海外の「風刺画」に刺激されて、地上へ出てきたような趣である。この「ポンチ絵」という言葉が、

漫画、

へとシフトしていくのは大正時代である。今日、「ポンチ絵」という言葉は、

風刺漫画、

戯画、

の意味はほぼ消えて、製造業や、建築業では、

概略図、構想図。製図の下書きとして作成するものや、イラストや図を使って概要をまとめた企画書、

等々を指す意味で使われている。

ポンチ絵の例.jpg


多くのベテラン設計者は、「3D-CADの操作に入る前に、その辺にある紙の裏などにポンチ絵を描いている」と話す。設計コンサルタントでCADIC(京都府大山崎町)の筒井真作氏もその1人。「3D-CADが普及する前は、(製図板で製図に取り掛かる前に)『定規を使わずに手で描け』とよく言われた」(筒井氏)という。同氏によればCADや製図は清書であり、清書はすでに確定している内容をきれいに表現する行為だから、その前に製品をどのような構造や形状で実現するかが確定していなければならない。その設計内容の実質的確定の過程で描くのがポンチ絵である、

とあるhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/031300754/ように、

下書き、

概略図、

の意味で使われている。

参考文献;
澤村修治『日本マンガ全史~「鳥獣戯画」から「鬼滅の刃」まで』(平凡社新書)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ポンチ絵
posted by Toshi at 03:40| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする