2021年07月04日

半夏生


「半夏生(はんげしょう)」は、禮記に、

仲夏之月(陰暦五月)、小暑至る、鵙(げき モズ)初めて鳴き、反舌(はんぜつ モズの異称)声無し。是の月や、…鹿角落ち、蝉始めて鳴き、半夏生じ、木槿栄く、

とあり(大言海・https://www.tomiyaku.or.jp/file_upload/100058/_main/100058_02.pdf)、「半夏生(はんげしょう)」は、

雑節の一つ、

で、

七十二候の一つ「半夏生」(はんげしょうず)、

から作られた暦日(暦法に基づいて定められた、暦の上の一日)である。

夏至から十一日目の称、

であり、太陽暦では七月二日(~七日日)頃までの5日間に当たる。現在の暦では、

太陽の黄道が100度に達するとき、

とされる(広瀬秀雄『暦(日本史小百科)』)。

田植えの終る頃、

で、この日を、

出梅(つゆあけ)、

といい、田植えの限とした(大言海)。一説には、

半夏(はんげ)、烏柄杓(カラスビシャク)が成長する頃、

とも、また、

半夏生(ハンゲショウ、カタシログサ)の葉が半分白くなって化粧しているようになる頃、

とも言われる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E5%A4%8F%E7%94%9F・岩波古語辞典)。

近世には、

この朝毒気が降るといって、井戸に蓋をし、野菜を食べず、諸事を忌む日とした、

とある(岩波古語辞典)。南北朝、安倍晴明に仮託された陰陽道指南書『簠簋内傳』(ほきないでん)に、

半夏生、五月中十一日目、可註之、此日不行不浄、不犯婬欲、不食五辛酒肉日也、

とあるとか(大言海)。また、『俳諧歳時記』(享和三年(1803)刊)には、

半夏生、五月中より十一日なり。世俗、この日を期として竹の子を食わず、是竹節蟲を生ずるのゆゑ也、

とある。「竹節蟲(たけのふしむし)」は、

ななふし、

とも訓ませ、

七節、

とも当てる。

体長7〜10センチ。体や脚は細長く、竹の枝に似て、緑色または褐色。翅(はね)はない。コナラ・クマイチゴなどの葉を食べる、

とある(デジタル大辞泉)。「暦注」(暦本に記入される事項)の吉凶によれば、

この日は万物の生気を損耗するので、草木の種をまくには悪い日で決して成長しない、

とされる(広瀬・前掲書)

カラスビシャク.jpg


半夏(はんげ)の乾燥させた根茎は、『本草綱目』(1590)に、

蓋し夏の半に相当するという意味、

とされ、夏の半ばに生えるところから名付けられたという古くから使われる重要な生薬で、根茎を売って小銭をためたところから別名、

ヘソクリ、

ともよばれるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%93%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AF

半夏生は、

半化粧、

とも言われる。名前は、

半夏生の頃に花を咲かせることに由来する、

とする説と、

葉の一部を残して白く変化する様子から「半化粧」、

とする説とがあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%A6

ハンゲショウの葉.jpg


「雑節(ざっせつ」は、二十四節気、五節句などの暦日のほかに、

季節の移り変りをより適確に掴むために設けられた特別な暦日、

を指し、

節分(各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日)、
彼岸(春分・秋分を中日(ちゅうにち)とし、前後各3日を合わせた各7日間)、
社日(しゃにち 産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日)、
八十八夜(立春を起算日(第1日目)として88日目)、
入梅(梅雨入りの時期)、
半夏生(はんげしょう 夏至から数えて11日目)、
土用(四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間)、
二百十日(立春を起算日として210日目)、
二百二十日(立春を起算日(第1日目)として220日目)、

等々指した(広辞苑・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%91%E7%AF%80)。

七十二候(しちじゅうにこう)は、

一年を72に分けた五日ないし六日を一候、

とするものだが、

二十四節気をさらに五日ないし六日ずつの3つに分けた期間、

になる。二十四節気の一気が、

15日、

なので、一候は、わずか五日程度、

そんなに気候が変わるわけはない、

はずである(内田正男『暦と日本人』)。

「二十四節気」は「をざす」http://ppnetwork.seesaa.net/article/481844249.htmlでも触れたが、

1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けたもの、

で、

「節(せつ)または節気(せっき)」

「気(中(ちゅう)または中気(ちゅうき)とも呼ばれる)」

が交互にあるhttps://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s7.html。例えば、

春は、

立春(りっしゅん 正月節)、
雨水(うすい 正月中)、
啓蟄(けいちつ 二月節)、
春分(しゅんぶん 二月中)、
清明(せいめい 三月節)、
穀雨(こくう 三月中)、

で、夏の、

立夏(りっか 四月節)、
小満(しょうまん 四月中)、
芒種(ぼうしゅ 五月節)、
夏至(げし 五月中)、
小暑(しょうしょ 六月節)、
大暑(たいしょ 六月中)、

のうち、七十二候の「半夏生(はんげしょうず)」は、夏至の三等分、

初候 乃東枯(なつかれくさかるる 夏枯草が枯れる)、
次候 菖蒲華(あやめはなさく あやめの花が咲く)、
末候 半夏生(はんげしょうず 烏柄杓が生える)、

となる。中国由来だが、日本の気候風土に合うように何度も改訂され、今日は、明治七年(1874)の「略本暦」によっている。「半夏生(はんげしょうず)」は、中国由来のままである。

「半夏生」は、真夏の最中なので、

半夏正、

とも書く(広瀬・前掲書)。また、この時期は、

梅雨の真っ盛り、

なので(内田・前掲書)、この頃降る雨を、

半夏雨(はんげあめ)、
半夏水(はんげすい)、

といい、此の大雨で起こる洪水を、

半夏水(はんげみず)、

という(雨のことば辞典)。

参考文献;
広瀬秀雄『暦(日本史小百科)』(近藤出版社)
内田正男『暦と日本人』(雄山閣)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:27| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする