「時(とき)」は、幅広く「時間」を表し、
過ぎていく時間、
時刻、
時分、
期限、
時節、
時候、
時期、
時世、
時機
時代、
時勢、
等々と意味の幅が広い(岩波古語辞典・広辞苑)。ために、「とき」に当てると漢字も、
世、
刻、
季、
期、
秋、
節、
辰、
齋、
等々少なくない(字源)。
「月」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/444490307.html)で触れたように、「月(つき)」は、
「古形ツクの転」
とあり(岩波古語辞典)、その語源は、
説1は、「毎月、光が尽きる」の尽きが語源、
説2は、「日につぐ明るさ」の次ぎが語源、
説3は、「トキ(時)」と同じ語源。満ち欠けが月という「単位時間」を表すツキ、
の三説あり、「とき(時)」の語源も、
説1は、「月の音韻変化」説。月の満ち欠けによって、時の動きを示すという説、
説2は、「解ける・溶けるのトキ」語源説。溶けていく過程に時間の移り行きを示すという説、
説3は、「疾き」説。早く過ぎ去るを示すトキ(疾き)で、時間の進行を示すという説、
の三説で、「とき」の説1が、「つき」の説3と同じ説ということになる(日本語源広辞典)。言語学上、
月と時が関係ある、
とされるのは、聖書に
ヱホバは月を作りて時をつかさどらせたまへり、
にあるように、
太陰が時の計測の基準となった、
ことに起因している(渡邊敏夫『暦のすべて』)といわれ、英語の time は、
「潮の満干」を意味する tide と同一の語根 ti- を持つ、
とされる(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11138393646)。
ただ、固有の暦法をもたない、古代日本で、時間という抽象概念を月とつなげたかどうか、些か疑問である。
常(とこ)の転(大言海・東雅)、
疾(とく)の意(大言海・名語記・和句解・日本釈名・名言通・柴門和語類集)、
のいずれかということになるが、正直しっくりこない。
辰(とき)の義(言元梯)、
もあるが、
星辰、
というように、
星座、
星宿、
の意味で使うのは、中国暦が入ってきて以降のことかと思われる。
「時」(漢音シ、呉音ジ)は、
会意兼形声。之(シ 止)は足の形を描いた象形文字。寺は「寸(手)+音符之(あし)」の会意文字で、手足をはたらかせて仕事をすること。時は「日+音符寺」で、日がしんこうすること。之(いく)と同系で、足が直進することを之といい、ときが直進することを時という、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(止+日)。「立ち止まる足の象形と出発線を示す横一線」(出発線から今にも一歩踏み出して「ゆく」の意味)と「太陽」の象形(「日」の意味)から「すすみゆく日、とき」を意味する漢字が成り立ちました。のちに、「止」は「寺」に変化して、「時」という漢字が成り立ちました(「寺」は「之」に通じ、「ゆく」の意味を表します)、
ともある(https://okjiten.jp/kanji145.html)。
(「時」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji145.htmlより)
なお「とき」と訓ませる「斎」((http://ppnetwork.seesaa.net/article/460543513.html))については触れた。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
渡邊敏夫『暦のすべて―その歴史と文化』
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:時