「座(くら)」は、「くら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/482602676.html)で触れたように、
御手座(みてぐら)、
矢座(やぐら→櫓・矢倉)、
鳥(と)座、
千座(ちくら)、
等々、
人や物を載せる台、また、物を載せる設備、
の意で使われる(岩波古語辞典)が、
蔵、
倉、
庫、
とあてる「くら」は、その意味の延長線上で、さらに、
人や荷物を乗せるために牛馬の背に置く、
鞍、
も、
座(くら)の意から、
とある(広辞苑)ように、
馬上の座(くら)、
であり、「座(くら)」の意味の外延上にある。
「鞍」は、
狭義には鞍橋(くらぼね)、
をいう(仝上)、とある。「鞍橋」は、
鞍瓦、
とも当て、
前輪(まえわ)、後輪(しずわ)を居木(いぎ)に取り付け、座の骨組みをなす部分、
をいい(仝上)、近代以前は、
馬の背に韉(したぐら 鞍)をかけ、鞍褥(くらしき)を重ねて鞍橋(くらぼね)をのせ、鞍覆(くらおおい)を敷いて両側に障泥(あおり 泥除け)を下げる、
という形で馬具を整える(世界大百科事典)。
(鞍の名称 笠間良彦『図説日本合戦武具事典』)
この鞍橋のことを一般に、
鞍、
という。
本来革製であったが、木製の鞍は中国の漢代に現れ(百科事典マイペディア)、日本へは古墳時代に中国から、
木製の地に金銅製や鉄製の覆輪および地板などを施した鞍、
が伝来、正倉院に朝鮮鞍式(大陸系)のものと和鞍式の二種類が残っている(ブリタニカ国際大百科事典)。平安時代には儀礼用の唐鞍(からくら)や移鞍(うつしくら)、日常用の水干鞍などと、多様な発展をとげ、公家用の鞍橋の装飾には螺鈿(らでん)、沃懸地(いかけじ)、蒔絵など官位に応じて定めがある(仝上)、という。
(黒漆地桐鳳凰文蒔絵鞍(江戸初期) https://www.touken-world.jp/search-harness/art0012420/より)
「鞍」(アン)は、
会意兼形声。「革(かわ)+音符安(上から下へ重みをかける)」、
とある(漢字源)。
(「鞍」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji2266.htmlより)
別に、
会意兼形声文字です(革+安)。「頭から尾までをはいだ獣の皮」の象形(「革」の意味)と「屋根・家屋の象形と安らぐ女性の象形」(「安らぐ」の意味)から馬などの背に置いて、乗る人を安定させる皮製の馬具「くら」を意味する「鞍」という漢字が成り立ちました、
とある(https://okjiten.jp/kanji2266.html)。
参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
笠間良彦『図説日本合戦武具事典』(柏書房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:鞍