2021年08月22日

よわ


「夜半」は、

やはん、

と訓むが、

よは(わ)、

とも訓ます。「夜半(やはん)」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482364862.htmlで触れたように、「よは」は、

夜、
夜は、

とも当て(大言海・岩波古語辞典)、

平安・鎌倉時代、多く和歌に使う雅語、

とあり(岩波古語辞典)、

風吹けば沖つ白波たつた山夜半(よは)にや君がひとり越ゆらむ(古今集)、

と、

夜、
真ふけ、
夜中、

の意である(広辞苑・岩波古語辞典)。語源は、

ヨマ(夜閒)の義(大言海・万葉考・雅言考・言元梯・国語の語根とその分類=大島正健)、
ヨフカ(夜深)の義(名語記・三余叢談・名言通・松屋筆記・日本語原学=林甕臣)、
ヨヒyofi(宵)、その母音交替形ユフyufu(夕)等々と同根の語(岩波古語辞典)、

等々の諸説があるように、

本来、現在のヨル(夜)の意で使用されたと考えられる。後に、ヨワは「夜半」と表記され、ヨナカ(夜中)の意で使用された、

とある(日本語源大辞典)。

「よる」の表現には、

よ(夜)、
と、
よる(夜)、

がある。

「よ」が複合語を作るのに対して、「よる」は複合語を作らない、

が(仝上)、古代の夜の時間区分の、

ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ、

うち、「よる」は、

ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ(アカトキ)、

と区分され(岩波古語辞典)、

当時の日付変更時点は丑の刻(午前二時頃)と寅の刻(午前四時頃)の間であったが、「よなか」と「あかとき」(明時、「あかつき」の古形)の境はこの時刻変更点と一致している、

とある(日本語源大辞典)が、「よる」の古形、

よ、

が、

ユフベ→ヨヒ→ヨナカ、

と区分されたことになり、「よなか」が、

よべ→こよひ、

と、境界線を挟んで、使い分けられていた。

「よべ」は、昨晩の意だが、昨晩を表す語としては、古代・中古には、

「こよひ」と「よべ」とがあった。当時の日付変更時刻は丑の刻と寅の刻の間(午前三時)であったが、「こよひ」と「よべ」はその時を境としての呼称、日付変更時刻からこちら側を「こよひ」、向こう側を「よべ」とよんだ、

とある(仝上)。

「よ」は、

よひ、
よなか、
よべ(昨夜)、

と、「よる」が「ひる」に対し、暗い時間帯全体を指すのに対し、

特定の一部分だけを取り出していう、

とある(仝上)。とすると、「よは」は、

「よ」+「は」

で、「は」は、はっきりしないが、

端、

とあてる「は」なら、

邊に通ず、

とある(大言海)、

はた、へり、

の意の「は」か、

半(ハン)の音か、

とある(大言海)、

はした、

の意の「は」か、

と考えられ、「よる」の「へり」「はし」の意であり、

よひ、
よなか、
よべ(昨夜)、

のように、特定の時間を指していたのかもしれない。たとえば、「夜半(やはん)」が、

子の時、
夜九ツ、

という限定された時間を指しているように、「よは」も、

ここに壯夫《をとこ》ありて、その形姿《かたち》威儀《よそほひ》時に比《たぐひ》無きが、夜半《さよなか》の時にたちまち來たり(古事記)、

と、

さよなか、

と訓ませているように、かなり限定した時間を指していたように思える。

「よは」に当てた、

夜半、

は、漢語である。

厲之人、夜半生其子、遽取火而視之、汲汲然惟恐其似己也(荘子)
夜半有力者、負之而走(仝上)、

と「夜中」の意である(字源・大言海)。だから、「夜半(やはん)」に引きずられて、広く「夜中」の意味に転化したようである。

「夜半」を、

よなか、

と訓ませるのはそれだろう。

ちなみに、「よ」は、

ヨルの古形、「ひ(日・昼)」対、

太陽の没しているくらい時間、

を指し(岩波古語辞典)、

ヨ(節)の義、日(ヒル)と日(ヒル)との中間の意。闇(やみ)ヤに通ず(大言海・東雅)、
ヨ(間)の義、昼と昼の閒の義(言元梯)、

等々が語源とみられ、「よる」は、

昼の対、

で(岩波古語辞典)、

あかねさす昼は物思ひぬばたまのよるはすがらに音のみし泣かゆ(万葉集)

と、

奈良時代は副詞的に独立した形用いた、

が、

よ(「よる」の古形)+る(接尾語)(日本語源広辞典)、
よ(「よる」の古形)+る(助辞)(大言海・俚言集覧・国語の語根とその分類=大島正健)、

等々が語源とみられる。

「よは」は、

平安・鎌倉時代、多く和歌に使う雅語、

とされるように、

夜半の月(よわのつき 秋の季語)、
夜半の春(よわのはる 春の季語)、
夜半の夏(よわのなつ 夏の季語)、
夜半の秋(よわのあき 秋の季語)、
夜半の冬(よわのふゆ 冬の季語)、

等々と使われているhttps://word-dictionary.jp/posts/4535

「半」 漢字.gif

(「半」 https://kakijun.jp/page/0527200.htmlより)

「夜」については、「夜半」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482364862.htmlで触れたので、「半」に触れておく。「半」(ハン)は、

会意。「牛+八印」で、牛は、物の代表、八印は両方に分ける意を示し、何かを二つに分けること、八(両分する)はその入声(ニッショウ 音)にあたるから、「牛+音符八」の会意兼形声と考えてよい、

とある(漢字源)。

「半」 成り立ち.gif

(「半」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji348.htmlより)

別に、

会意文字です(八+牛)。「二つに分かれているもの」の象形と「角のある牛」の象形から牛のような大きな物を二つに「わける・はんぶん」を意味する「半」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji348.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:よわ 夜半 よは
posted by Toshi at 04:19| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする