2021年08月23日
夜っぴて
「夜っぴて」は、
夜通し、
一晩中、
という意味になる(広辞苑)。
ヨッピトイの転、
とある(仝上)。「夜っぴとい」は、
夜一夜(よひとよ)の促訛、
とある(江戸語大辞典)。「夜一夜(よひとよ)」は、
夜一夜とかく遊ぶやうにて明けにけり(土佐日記)、
と使われ、
夜通し、
一晩中ずっと、
の意味である(岩波古語辞典)。
「夜っぴて」は、
夜っぴとへ、
とか、
夜っぴとい、
とか
夜っぴてへ、
と訛ったり、
よっぴと、
と略されたりする(江戸語大辞典)。
平安時代、「よもすがら」「よすがら」が主として改まった場面や静かな雰囲気を背景に使われ、和歌でも用いられたのに対して、「よひとよ」は日常的で、ややにぎやかな雰囲気を背景に使われる傾向があり、古くは和歌には使われなかった、
とある(日本語源大辞典)。
夜がな夜っぴて、
という使い方もする。「夜がなよっぴて」は、
夜がな夜一夜(よひとよ)、
ともいい、
日がな一日、
と対になる。「日がな」の「がな」には、諸説あるが、
だにの意に似たる辞、
あるいは、
おおかた、
とする説(大言海)がいい、要は、「日がな」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/438065587.html)で触れたように、
朝から晩まで、終日、
の意で、
日+がな(強め)+一日、
ということなのだろう(日本語源広辞典)。
ひねもす、
ひもすがら、
という同義になる。「ひねもす」は、
日+助詞モ+ス(接尾語スガラの下略)、
とある。「すがら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/420311540.html)は、
一説に、スガは『過ぐ』と同根、ラは状態を表す接尾語、
とあり(広辞苑)、
名月や池をめぐりと夜もすがら、
というように、
初めから終わりまで途切れることなくずっと、
という時間経過を示していて、それが空間的に転用されと、
道すがら、
になったと考えられる。
何よりのお楽しみ、間(ま)がな隙(ひま)がな耽溺された(三田村鳶魚『武家の生活』)、
という用例がある。
間がなすきがな
という言い回しも載る(大言海)。「すき」は「隙」なのだろう。
少しの暇さえあれば、きりなしに、ひまさえあれば、
という意味になる。
「夜っぴて」の類義語、「夜もすがら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/472977426.html)は、
終夜、
とも当て(広辞苑)、
夢ぢにも露やおくらむよもすがらかよへる袖のひちてかわかぬ(古今集)、
と使われ、
夜も盡(すがら)の意、ひねもすの対、
ともある(大言海)。「ひねもす」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/445249637.html)は、
終日、
と当て、
朝から晩まで、
一日中、
という意味で、
ひもすがら、
とも言う。まさに、古代の昼を中心にした時間の区分、
アサ→ヒル→ユフ、
の昼間を指す(岩波古語辞典)。
ちなみに、「夜」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/442052834.html)の時間区分は、
ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ、
となる(仝上)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95