2021年08月25日

与太


与太者、
与太話、
与太郎、

等々と使われる、

与(與)太、

は、

与太婆アさまには困るよう(滑稽・旧観帖)、

と、

知恵の足りない者、
役に立たない者、
おろかもの、

の意か、

でたらめを言う、

意で、

与太を飛ばす、

というように、

でたらめ、
ふざけた、くだらないことば、

の意で使う(広辞苑)、とある。

ヨタ(知恵のたりないもの)をとばす、

と絵解きするものもある(日本語源広辞典)。

さらに、「よた」には、

Yota(ヨタ)ニ ツキアウナ(1886年「改正増補和英語林集成」)、

という用例もあり、

素行不良の者、ならず者、

と、ほぼ、

よた者、

の意でも使うようになっている(精選版 日本国語大辞典)。

「与太」の語源には、

「よたろう(与太郎)」の略(精選版日本国語大辞典)、

と、

「よたんぼう(酔坊)」の略(大言海)、

とがあり、

よたを飛ばすとは、つまらぬことをやり散らすの意、

とする(仝上)。しかし、「よたんぼう」は、

酔うた坊の訛(江戸語大辞典)、
擬人語、酔倒れに、坊を添えたる語(大言海)、

とあり、

よたんぼうの懦弱(たわい)なし(安永十年(1781)「傾城異見之規矩」)、

と、

酔っぱらい、

の意であり(仝上)、あるいは、酔っぱらいの「よたをとばす」ことが、もともと「よた」の始原なのかもしれないが、「よた」の使われ方の中には、「酔っ払い」の含意は消えている。

飴売与太郎 市村羽左衛門.jpg

(「飴売与太郎 市村羽左衛門」(歌川国明) https://ja.ukiyo-e.org/image/ritsumei/arcUP0098より)

与太郎、

というと、落語などで出てくる、

愚か者、

の代名詞だが、

操り・浄瑠璃社会の隠語、

ともあり(広辞苑・江戸語大辞典)、

うそ、でたらめ、
うそつき、

の意とし、

おまへもえぐい与太郎云ひじゃ(天明四年(1784)「二日酔巵觶」)、

の用例の原注に、

「与太郎とはうそつきの事」(大阪下りの芸妓の言)、

とあり(江戸語大辞典)、

与太郎あがく、

という言い回しが、

操り・浄瑠璃社会の隠語として、

嘘を言う、

意で、

おめーが昨夜(よんべ)癪をおこして大さわぎをしたと与太郎あがいたらの、きもをつぶしたよ(文化九年(1812)四十八癖)、

などと使われている。

与太者、

というと、今日では、

愚か者、
役に立たない者、
なまけもの、

の意味よりは、

よたもん、

と言ったりして、

手の付けられない不良の徒、
素行不良の若者、
やくざもの、

という意味が強い(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。この意味で使い出したのは、比較的新しく、「よた」に「与太者」の意味が付き加わり出した時期から見ると、明治前後と思われ(改正増補和英語林集成(1886))、大正頃は多く、

よたもん、

といわれ、昭和にはいっては、

よた公(こう)、

ともいわれた、とある(精選版日本国語大辞典・日本語源大辞典)。

「與」 漢字.gif

(「與」 https://kakijun.jp/page/yo13200.htmlより)

漢字「與(与)」(ヨ)は、

会意兼形声。与は牙(ガ)の原字と同形で、かみあった姿を示す。與はさらに四本の手を添えて、二人が両手で一緒に物を持ち上げるさまを示す。「二人の両手+音符与」で、かみあわす、力を合わせるなどの意を含む、

とある(漢字源)。

会意形声。「与」+音符「舁」、「与」はものがかみ合っている姿を意味し「牙」の原字に共通。「舁」は四方から手を差し伸べものを担ぐ様、

とあるのが上記説明を補足してくれるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%87

「與」 金文 .png

(「與」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%87より)

別に、

旧字は、会意形声。舁(よ)(持ち上げる。は変わった形)と、(ヨ)(くみあう。は変わった形)とから成る。力を合わせて仲間になる、ひいて、ともにする、転じて「あたえる」意を表す。借りて、助字に用いる。常用漢字は與の略字として用いられていたのの変形による(角川新字源)、

会意兼形声文字です(牙+口+舁)。「かみ合う歯」の象形と「口」の象形と「持ち上げる手」の象形と「ひきあげる手」の象形から、手や口うらを合わせて互いに助け合う事を意味し、そこから、「くみする(仲間になる)」、「あたえる」を意味する「与」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji1356.html

等々の解釈もある。

「與」 成り立ち.gif

(「與」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1356.htmlより)

参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする