2021年09月13日

宇宙の常識


高水裕一『宇宙人と出会う前に読む本―全宇宙で共通の教養を身につけよう』を読む。

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本書は、仮構の、

惑星際宇宙ステーション、

という場で、地球人として、

宇宙に通用する常識とは何か、

を、

あなたはどこから来たのですか?
あなたは何からできていますか?
あなたたちの太陽はいくつですか?
あなたは力をいくつ知っていますか?
宇宙の破壊者を知っていますか?
宇宙の創造者を知っています?
宇宙最古の文書を知っていますか?
あなたは左右対称ですか?
数のなりたちを知っていますか?
宇宙人の孤独を知っていますか?
エネルギーは何を使っていますか?

という11の設問に応えながら、今日の最新の宇宙物理学の知見を確認していくことになる。

「『日本』という一国の中だけの価値観にとらわれていると『世界』が想像できないのと同じように、『地球』の価値観にとらわれていると『宇宙』ではどう答えればよいかが想像できないのです。」

と、著者が「プロローグ」で書くように、いわば、

地球の常識は宇宙の非常識、

を確認させられることになる。

しかし、もちろん、現実には、

星同士の距離、

がネックとなり、たとえば、お隣とされる、

「ケンタウルス座の星に達するまでにも4万年はかかると予想され、そのころまでに人類が生存しているかどうか、まったくわかりません。」

という状態である。仮にすぐ返事を返したとしても、往復8万年要する。だから、

「おそらく、銀河系内の文明の数をいくら方程式(銀河系内の地球系が交信可能な文明を割り出すドレイクの方程式)から算出しても意味はないのです。『星どうしがあまりにも離れている』という現実を『文明の寿命』を延ばすことでよほど補えないかぎり、宇宙人はお互いに、あまりにも孤独なのです。」

というのが結論のようではあるのだが。

宇宙から見た「地球」について、その見え方は、どの位置から見ているかによって異なるが、たとえば、

「ケンタウルス座α星には『リギル・ケンタウルス』という別名があり、『リギル』はアラビア語で『足』を意味します。星座図によればケンタウルスは向こうを向いて立っているので、左足の爪先に対応します。右足の爪先はケンタウルス座β星です。」

太陽は、どちらかの足の踵に位置する、という。また、別の位置からは、太陽は、しし座にあり、太陽はライオンのお尻に位置していて、著者は、

ライオンのうんち、

と呼んでいる。その位置を別の視点から見ると、太陽もまた、

「10光年ほどの範囲なら、近くの恒星と一緒の星座」

に加えられる、ということになるらしいのである。

地球から考えると、

太陽は一つ、月も一つ、

ということになるが、

「惑星にとっての『太陽』が1個であることは、まったく普通ではありません。すべての恒星の少なくとも半数以上は『連星』と呼ばれる、2個の星の組み合わせで存在している」

のである。しかも、連星には、三重連星、五重連星もあり、

「地球からさそり座方向に約5000光年離れたところにある、さそり座ν(ニュー)星が七重連星」

であることがわかっている、という。

更に、太陽系でも、水星と金星はゼロだが、衛星が1個しかないのは、地球だけで、他は、

火星は2個、
木星は72個、
土星は53個、
天王星は27個、
海王星は14個、

と衛星を持ち、太陽系の中でも、地球は異質なのである。

同じ宇宙物理学でも、外からの視点を入れることで、どう説明するかが問われ、改めて知識を別角度から眺める必要性を求められる。これは結構新鮮である。

ところで、いま月は少しずつ(毎年約4㎝)地球から遠ざかっている。

角運動量の輸送、

といわれる現象で、月と地球の自転速度が近づいていく、という。かつては、地球一回の自転が24時間ではなく、もっと短かった。

「恐竜がいた時代(約2億5200万年~約6600万年)には23時間、まだ誕生したばかりのマグマの海のような原子地球では、…3時間しかなかった。現在の月は、(中略)一日の長さが少しずつ長くなっていく。何億年もすれば25時間、26時間となる。……100億年後に、同期化による速度移動が完了して地球と月の回転速度が同じになると、1日はなんと約1200時間になる。…このとき、月はまだ地球の周囲をゆっくり回っていて、地球の自転速度とほぼ同じになる。つまり1ヵ月=1日となり、1年はわずか7日程度になってしまう。」

と。

本書には、「あなたの宇宙偏差値」をチェックするチェックリストが載っている。たとえば、第1問から、

天の川銀河の直径は約10万光年あり、その中に約1000億個の恒星がある、
太陽は天の川銀河の中心から端までのほぼ真ん中に位置している、
太陽から最も近い恒星はケンタウルス座α星の中のプロキシマ・ケンタウリ星で、太陽から約4.2光年である。

等々と、50問ある。ある意味、宇宙物理学の常識チェックになっている。

参考文献;
高水裕一『宇宙人と出会う前に読む本―全宇宙で共通の教養を身につけよう』(ブルーバックス)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:15| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする