「団七縞(だんしちじま)」は、
太い柿色の弁慶縞、
をいう(広辞苑)。
「団七」には、人形浄瑠璃・歌舞伎狂言の、
『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』(延享二年(1745)、大阪竹本座初演)、
の、
団七九郎兵衛、
の「団七」と、歌舞伎狂言の、
『宿無団七時雨傘(やどなしだんしちしぐれのからかさ)』(明和五年(1768)、大阪竹田芝居初演)、
の、
団七茂兵衛、
の「団七」と、二系統がある。
「団七縞」は、前者で、
義兄弟の契りを交わした団七九郎兵衛と一寸徳兵衛が、
団七九郎兵衛は柿色
一寸(いっすん)徳兵衛の浴衣は藍色、
と、お揃いの格子柄の浴衣を着て登場する(https://www.suehiroya-suehiro.com/entry/2018/06/20/233000)、とある。この、
帷子の模様、
の衣裳にちなんで呼ばれた(広辞苑)。
団七格子、
ともいい、
うすがきの団七じまのかたびら(文化十年(1813)『浮世風呂』)、
と、庶民の間で流行した(江戸語大辞典)。
嚆矢は、団七なる悪党が親殺しをした事件(雅俗随筆)を題材にした、
『宿無団七』(元禄十一年(1698)初代片岡仁左衛門初演)、
で、これ踏まえてできたのが、延享二年(1745)の魚売りの殺人事件(摂州奇観)を取り込んだ、浄瑠璃の、
『夏祭浪花鑑』
で、ここで、
団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)、
釣船三婦(つりぶねのさぶ)、
一寸徳兵衛(いっすんとくべえ)、
の三人の侠客が描かれる。「団七」は、
文楽人形の中年の男のかしら(首)、
の名でもあるが、これは、この役に由来する(日本伝奇伝説大辞典)。それは、
太くたくましい立ち眉、ぎろりとしたどんぐり眼、横に張った小鼻、大きく開閉する目、ぐっと力んだところはいかにも豪快である。塗色は卵色。大団七と小団七とあって、大団七は「国性爺合戦」の和藤内、「御所桜堀河夜討」の武蔵坊弁慶などの時代物の荒立役に、小団七は「義経千本桜」のいがみの権太などに用いられる、
とある(https://www.arc.ritsumei.ac.jp/artwiki/index.php/%E5%9B%A3%E4%B8%83)。もっとも、現在の団七の役には、「文七」をもちいる、とある(日本伝奇伝説大辞典)
(「大団七」 おおだんしち(関東)おおだんひち(関西) http://www.lares.dti.ne.jp/~bunraku/mystery/ningyou/tatiyaku/oodansit.htmlより)
(「小団七」 こだんしち(関東)こだんひち(関西) http://www.lares.dti.ne.jp/~bunraku/mystery/ningyou/tatiyaku/kodansit.htmlより)
(「文七」 ぶんしち(関東)ぶんひち(関西) http://www.lares.dti.ne.jp/~bunraku/mystery/ningyou/tatiyaku/bunnsiti.htmlより)
文楽人形の頭(かしら)の「文七」とは、
大坂の侠客雁金文七(かりがねぶんしち)の人形に用いたのを始めとする。鋭い眼光と太い眉、引き締まった口もとをした主役の頭、
とある(精選版日本国語大辞典)。
『夏祭浪花鑑』は、歌舞伎でも演じられたが、これとは別に、明和五年(1768)に起きた、岩井風呂での殺人事件(伝奇作書)をもとに、団七茂兵衛を主人公に、元禄以来の団七狂言の系統に仮託したのが、
『宿無団七時雨傘』
であり、『夏祭浪花鑑』にあやかった作品ということになる(日本伝奇伝説大辞典)。この作品から、
団七、
には、
宿なし、
の意味が加わり、
上一入(ひとしほ)に富にこったる其末は皆団七(ダンシチ)の宿なしとなる(天保七年(1836)洒落本「意気客初心」)、
と使われる。
(四代目 中村歌右衛門の団七(五粽亭広貞) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%A5%AD%E6%B5%AA%E8%8A%B1%E9%91%91より)
「弁慶縞」は、
弁慶格子、
ともいうが、
紺と浅葱、紺と茶など二種の色糸を経(たて)・緯(よこ)の双方に使用した、碁盤目の縦横縞としたもの、
である(広辞苑)が、
山伏姿の弁慶の舞台衣装にちなんだ名称、
とある。守貞謾稿は、
白紺、或いは、紺茶、又、紺と浅木等、紺茶を茶弁慶、紺浅木を藍弁慶と云ふ、
とする。
(弁慶縞 精選版 日本国語大辞典より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
乾克己他編『日本伝奇伝説大辞典』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95