2021年10月09日

をなご


「をなご」は、

女子、

と当てる。

ヲンナゴの約、

とある(広辞苑・大言海)。

下京に妹が居りまらする。是にもをなごが一ぴきござあるが是も姪のうちでごらあらうずる(狂言「粟田口」)、

と、

女の子、

の意であるが、後に、年代が下がるにつれて、広く、

をなごの道を教へ込み(浄瑠璃「堀川波鼓」)、

と、女性一般に転じ、さらには、

高嶋屋のをなごによびかけられて(西鶴「好色一代男」)、

と、

女中、
下女、

の意味になっていく。

「女」 漢字.gif

(「女」 https://kakijun.jp/page/0322200.htmlより)

「をんな」http://ppnetwork.seesaa.net/article/483783606.html?1633635501で触れたように、女性の一般称は、

ヲンナ、

であるが、

文献や語源からすると、ヲンナやその原型としてのヲミナの方が古くて奈良時代から見られるのに対して、ヲンナゴから転じたヲナゴの形は室町時代から見られる、

とある(日本語源大辞典)。

をみな→をんな→をんなご→をなご、

と転訛したとみられるので、

ヲンナ、

が一般化した時点で、

ヲンナ子、

としたものと思われる。しかし、

後から生れたヲナゴが、その後勢力拡大してヲンナを圧倒、

した(仝上)ため、

方言の分布を見ると、関東・中部のヲンナをはさんでその両脇にヲナゴの大領域がある、

とされ(仝上)、

近畿、山陽、四国、九州、奥羽、下越、佐渡で使われる。奄美の「うなぐ」、沖縄の「いなぐ」も、「おなご」と同系列。南琉球では「みどぅむ(女供)」、出雲周辺、隠岐、飛騨、北能登などでは「女房」、北陸で「女郎」、関東の一部で「尼」、「おんな」は関東、東海、美濃、信越での言い方。「おなご」と「おんな」の境界の名古屋では「おんなご」、

とある(大阪弁)。ただ現在では、

逆にヲンナが共通語形として通用しているが、方言形の全国的な傾向としては、ヲナゴが女性の卑称として残るという現象が見られる、

とある(日本語源大辞典)。

「子」http://ppnetwork.seesaa.net/article/465595147.htmlで触れたように、「子」は、

親に対して子、

であると同時に、

親が子を呼びしに起こりて、自らも呼びし語なるべし、男之子(オノコ)、男子(ナムシ)の子(シ)なり。左傳、昭公十二年、注「子、男子之通称也」。白虎通、號「子者、丈夫之通称也」。和漢暗合あり、

という(大言海)ように「男の通称」であるが、

女(をみな)も子と云ふこと、特に多し。女之子(メノコ)、女子(ニョシ)の子(シ)なり、

ともあり(仝上)、男女ともに使う。「親」に対して「子」という意味で、「子」は、様々なメタファとしての意味は多い。

「子」の語源は、

小(コ)と同源か、

とあり(広辞苑)、

小の義にて、稚子(チゴ)より起れる語なるべし、

とある(大言海)。

とみると、「をなご」は、「をなご」が女性一般を指すようになったために、

をなご+子、

で女児を指したが、それが、いつか、女性一般に転じていくのは、「めのこ」「をのこ」が、この意から、一般称に転じていくのに似た経過ということになる。

「女」 簡帛文字.png

(「女」 簡帛文字・戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%A5%B3より)

「め」http://ppnetwork.seesaa.net/article/483689364.html?1633116498で触れたように、

「女」(漢音ジョ、呉音ニョ、慣用ニョウ)は、

象形、なよなよしたからだつきの女性を描いたもの、

とある(漢字源)が、

象形。手を前に組み合わせてひざまずく人の形にかたどり、「おんな」の意を表す、

とあり(角川新字源)、

象形文字です。「両手をしなやかに重ね、ひざまずく女性」の象形から、「おんな」を意味する「女」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji32.html。甲骨文字・金文から見ると、後者のように感じる。

「子」 漢字.gif

(「子」 https://kakijun.jp/page/0323200.htmlより)

「子」(漢呉音シ、唐音ス)は、「めのこ・をのこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/483735199.html?1633376365で触れたように、

象形。子の原字に、二つあり、一つは、小さい子供を描いたもの。もう一つは、子供の頭髪がどんどん伸びるさまを示し、おもに十二支の子(シ)の場合に用いた。のちこの二つは混同して子と書かれる、

とある(漢字源)。他は、

象形文字です。「頭部が大きく手・足のなよやかな乳児」の象形から、「こ」を意味する「子」という漢字が成り立ちました、

とするhttps://okjiten.jp/kanji29.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:32| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする