おおわらわ

「おおわらわ」は、 大童、 と当てる(広辞苑)。 髪の髻(もとどり)がとけてばらばらになった姿、 で、 かぶとも落ちて大童(おほわらは)になり給ふ(平治物語)、 と、 子供のかぶろ頭、 に喩えていっている(岩波古語辞典)状態表現であったが、そこから、 なほ弓を強く引かんために、着たる鎧を脱ぎ置いて、脇い立て(わいだて 大鎧の一部。草摺と壺…

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かむろ

「かむろ」は、「おおわらわ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/484158438.html?1635709470)で触れたように、 禿、 と当て、本来、 かぶろ、 といい、 子供の髪型、髪の末を切りそろえ、結ばないで垂らしておく、おかっぱのような髪型、 をいい(岩波古語辞典)、その髪型から、 童子(十歳前後)、…

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くらう

飲食する、 意の言葉には、 食う、 食む、 食べる、 等々がある。 「食べる」は、「食う」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/479896241.html?1612555520)で触れたように、 平安時代には、和文脈にクフ、漢文脈にクラフが用いられ、待遇表現としてのタブ(のちにはタブルを経てタベル)も登場する。室町時代に…

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つかねる

「つかねる(つかぬ)」は、 束ねる、 と当てる。 蜷(みな)の腸(わた)か黒し髪をま櫛もちここにかき垂れ取束(とりつかね)挙げても纏(まき)み(万葉集)、 と、 集めて一つにして括る、 つまり、 たばねる、 意で、やはり、 束ねる、 と当てる(広辞苑)。そのメタファで、 三軍をつかねる、 と、 すべてをつかさどる、…

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こまねく

「こまねく」は、 拱く、 と当てる。 こまぬくの音変化、 とされ、 左右の手を胸の前で組み合わせる、 意から、 腕を組む、 意へ広がり、転じて、 手をこまねく、 というように、 何もしないで見ている、 傍観する、 意で使われる(広辞苑)。類聚名義抄(11~12世紀)には、 拱、コマヌク、ウダク、イダク、タムダク、…

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さすまた

「さすまた」は、 刺股、 指股、 刺叉、 指叉、 刺又、 刺俣、 等々と当て(広辞苑・岩波古語辞典)、 江戸時代、罪人を捕らえるのに用いた三つの道具の一つ。木製の長柄の先端に鋭い月型の金具をつけた道具。喉頸にかけて取り押さえる、 とある(広辞苑)。「三道具(みつどうぐ)」とは、江戸期に、犯人逮捕の際などに用いたという長柄(ながえ)の武器で、 寄道具(よ…

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吹毛の咎

加之、以吹毛之咎、損土民等(しかのみならず、吹毛の咎を以て、土民らを損ねる)、 とある(貞応元年(1222)の関東御教書)、「吹毛(すいもう)の咎(とが)」とは、 をりふしにつけては、吹毛の咎を争うて、讒を構ふること休む時なし(太平記)、 というように、 取るに足らない欠点、 を咎めだてる意だが、「吹毛」とは、 毛を吹いて疵を求める、 とか、 …

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澆季

兵藤裕己校注『太平記』を読む。 本書は、多くの出版されている『太平記』の底本となっている、江戸時代に版行された、いわゆる、 流布本、 ではなく、龍安寺の塔頭西源院に伝わった、 西源院本(せいげんいんぼん)、 を底本としており、古態を伝えるとされる、 玄玖本(げんきゅうぼん)、 神田本、 などの古本系の一つとされる。 この三種の本は、そ…

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そうなし

「そう(さう)なし」は、 左右無し、 と当てる(広辞苑)。「左右」は、 とかくの意、 とあり、 この一条殿、さうなく道理の人にておはしましけるを(大鏡)、 と、 とやかく言うまでもない、 の意である(広辞苑・岩波古語辞典)。 サウは左右(とかく)の字の音読なり、 とある(大言海)。「とかく」(http://ppnetwork.see…

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参る

「参る」は、 まゐ(参)い(入)るの約、 とあり(岩波古語辞典・広辞苑・大言海)、 「まゐく(参来)」「まゐづ(参出)」「まゐたる(参到)」などと関連して、「まゐ」と「いる」の結合と考えられる、 とある(日本語源大辞典)。「まゐる」の、 マヰは宮廷や神社など多くの人が参集する尊貴な所へ、その一人として行く意。イルは一定の区域の内へ、外から進みこむ意。従ってマヰル…

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いかもの

「いかもの」は、 如何物、 と当てると、 如何物食(いかものぐ)い、 の「いかもの」になるし、 嚴物、 と当てると、 嚴物造(づく)り、 の「いかもの」になる。と、一応は区別がつくのだが、どうもそうはいかないようだ。 もともとは、「いかものづくり」は、 嚴物作、 怒物作、 嗔物造、 等々と当てて、 鍬形打ったる甲の緒…

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澆季

「太平記」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/484264044.html?1636314250)で触れたように、「澆季(ぎょうき)」は、 世、澆季になりぬと云へども、天理も未だありけるにや、 とか、 世すでに澆季に及ぶと云へども、信心まことある時は、 等々と、たびたび使われる。 「澆」は軽薄、「季」は末の世(広辞苑)、 …

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応仁の乱大和篇

呉座勇一『応仁の乱―戦国時代を生んだ大乱』を読む。 本書は、興福寺僧による、 『経覚私要鈔(きょうがくしようしょう)』 と 『大乗院寺社雑事記(だいじょういんじしゃぞうじき)』 というふたつの日記を中心に、応仁の乱の、 入口(嘉吉の変)と出口(明応の変)だけでなく中味の検証、 をするという。その意味で、日記の筆者である、 経覚(きょうがく)、 …

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亢龍悔い有り

「亢龍」は、 こうりゅう、 とも、 こうりょう、 とも訓ます(広辞苑)。 天に高く昇りつめた龍、 つまり、 昇り龍、 である(仝上)。 亢龍悔い有り、 という言い方をする。 栄達を極めた者には、もはやのぼりる道もなく、凋落しかないという悔いがある、 つまり、 物事は絶頂を極めると、必ず衰えること、 をいう(仝上)。 …

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堅石白馬

「堅石白馬」(けんせきはくば)は、 堅白同異(けんぱくどうい)、 堅白異同(けんぱくいどう)、 ともいい、 ただ、如来の権実(ごんじつ 方便と真実の教え)徒らに堅石白馬(ケンセキハクバ)の論となり、祖師の心印、空しく叫騒怒張の中に落つべし(太平記)、 と、 堅と石、白と馬とはそれぞれ別の概念であり、ゆえに堅石は石ではなく、白馬は馬ではない、 とする、 …

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むち

「むち」は、 鞭、 笞、 撻、 策、 等々と当てる(広辞苑)。 馬のむち、 の意もあるが、 罪人を打つむち、 の意もある(仝上)。 ブチとも云ふ、 とあり(大言海)、 打(うち)に通ず、 とある(仝上・日本語源広辞典)。或いは、 馬打(うまうち)の約、 ともある(大言海・言元梯)。 馬を打つところから、ウチの…

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はたる

「はたる」は、 徴る、 債る、 と当て、 請求する、 強く求める、 意だが、 責めたてる、 という含意が強く、 科之以千挫句置戸、遂促徴(セメハタル)矣(神代紀) 檀越(だにをち)や然もな言ひそ里長(さとをさ)が課役(えだち)徴(はた)らば汝(いまし)も泣かむ(万葉集)、 安永その宮の封戸(ふこ)をはたらむがために上野(かみつけ)の国に行(ゆ…

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桂を折る

「桂を折る」は、 折桂(せつけい)、 という(字源)。 進士の試験に及第する(字源)、 文章生(もんじょうしょう)、試験、対策に応じて及第する(大言海)、 官吏登用試験に応じて及第する(広辞苑)、 という意で、 登第、 及第、 登科、 と同義になる(字源)。温庭筠の詩に、 猶喜故人新折桂、 とある(字源)。由来は、「晋書」郤詵(げきしん…

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「桂(かつら)」は、「桂を折る」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/484421562.html?1637178611)で触れたように、「桂を折る」以外にも、 桂男(かつらおとこ・かつらを 月で巨大な桂を永遠に切り続けている男の伝説)、 桂の眉(かつらのまゆ 三日月のように細く美しい眉)、 桂の影(かつらのかげ 月の光)、 桂の黛(かつらのま…

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短兵急

「短兵急」は、 乗勝軽進、反為所敗、賊追急、短兵接、光武自投高岸(御漢書)、 と、 刀剣を以て急に攻める、 意であり、「短兵」は、『史記』匈奴伝に、 長兵則弓矢、短兵則刀鋋、 とある(字源)ように、 刀剣の類、 を指す(仝上)。因みに、「鋋」は、 柄の短い小さな矛、 つまり、 手鉾(てぼこ) とあり(https://ka…

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