2021年11月04日

つかねる


「つかねる(つかぬ)」は、

束ねる、

と当てる。

蜷(みな)の腸(わた)か黒し髪をま櫛もちここにかき垂れ取束(とりつかね)挙げても纏(まき)み(万葉集)、

と、

集めて一つにして括る、

つまり、

たばねる、

意で、やはり、

束ねる、

と当てる(広辞苑)。そのメタファで、

三軍をつかねる、

と、

すべてをつかさどる、
総轄する、

意でも使うが、

雖然、貴賤手をつかね、緇素(しそ 僧俗)足をいただく(平家物語)、

と、

手をそろえて一つにする、また、腕をくむ、

意で使い、この場合、

手をつかねる、

は、

手をこまねく、

と同義で使う(精選版日本国語大辞典・広辞苑)ので、

為すべきことなくてありぬ(大言海)、

つまり、

拱手傍観、
あるいは、
袖手傍観、

の含意となる。で、

拱手、
束手、

という言い方もする(仝上)。

「つかねる」の「つか」は、

ツカ(束・柄)と同根(岩波古語辞典)、
握(つか)の活用、
ツカム(掴)と同根(小学館古語大辞典)、
「つかねる(束)」「つかむ(掴)」と同源(精選版日本国語大辞典)、

とあり、「つか」とかかわる。「つか」は、

一にぎり指四本の幅、

で(岩波古語辞典)、

十束(とつか)剣抜きて(古事記)、

などと、

古代の単位で和数詞について「八束(やつか)」「十束(とつか)」などと用いる、

後世は、

君は実盛を大矢とおぼしめし候歟。わづかに十三束こそ仕候へ。……大矢と申ぢゃうの物の、十五束におとってひくは候はず(平家物語)、

などと、

矢の長さの場合だけに用いる。ただし、音読して「そく」という、

とある(精選版日本国語大辞典)。たとえば、

強弓の手足りなりければ、……三人張に、十四束(そく)三伏(みつぶせ)曳きしぼり、真前(まっさき)に進む敵を射けるに(太平記)、

とある場合、

三人がかりで張る強い弓に、十四束三伏の長い矢(束は一握りで、親指を除く四指、伏は指一本の幅)。矢は十二束を標準とした、

と解説がある(兵藤裕己校注『太平記』)。

この「つか」からの喩えで、

少しの間、

の意の、

束の間、

があることは、「つかのま」http://ppnetwork.seesaa.net/article/458802835.htmlで触れた。

「束」 漢字.gif


「束」(漢音ショク、呉音ソク)は、

会意。「木+ᄋ印(たばねるひも)」で、焚き木を集めて、その真ん中にひもを丸く回して束ねることを示す、

とある(漢字源)。「たばねる」や「たば」の意で、「つか」の意で長さの単位にするのはわが国だけの使い方であり、「ほんのひとにぎりの間」という「束の間」も、わが国だけである。

「束」 甲骨文字.png

(「束」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9D%9F

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:つかねる 束ねる
posted by Toshi at 04:37| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする