2021年11月22日

すそご


「すそご」は、

裾濃、
末濃、
下濃、

等々と当てる(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。

すそごう、
すえご、

などとも訛る(仝上)。

白地の下方をしだいにぼかして濃くする染色法、

で、布帛(ふはく)と甲冑の縅(おどし)の場合とがある。

布帛の場合、

すそご、むらご(斑濃・叢濃・村濃 同じ色でところどころを濃淡にぼかして染め出したもの)なども、つねよりはをかしくみゆ(枕草子)、

と、

上を淡く下を濃くした、

ものだが、

織色(おりいろ)によるものと染色(そめいろ)によるもの、

とがあり、

大旗、木旗、下濃(すそご)の旗、三流れ立てて三手に分かれ(太平記)、

と、旗にも使われる。

甲冑(かっちゅう)の威(おどし)の配色では、

上を白、次を黄とし、しだいに淡い色から濃い色とする、

ものを言う(仝上)。因みに、「縅」とは、

札(さね 鉄または練革で作った鎧の材料の小板)を上から下へ連接することを言い、縅は元来「緒通す(おどおす)」に「威す」の字を当てた(縅の字は、「威」に「糸」偏をつけた和製)、

を指し、「緒」の材質により、

韋(かわ)縅、
糸縅、
綾縅、

があり、縅し方には、

縦取縅(たてどりおどし 垂直に縅していく)、
縄目縅(なわめおどし 斜め状の縅毛が横に連続するため縄のように見える)、
素懸縅(すがけおどし 縦取縅の省略ともいえる間隔をおいて菱形に交差させながら2本ずつ縅す)、
寄懸(よせがけ 間隔をおいて3本以上ずつ縅す)、

等々があり、

紫裾濃、
紺裾濃、
紅裾濃、
萌黄裾濃、

等々という。縅の配色には、「すそご」と反対に、

濃い色から次第に淡い色になり、最後を白とする縅、



匂い、

といい、

黄櫨匂(はじのにおい 紅、薄紅、黄、白の順)、
萌黄匂(もえぎにおい 萌黄、薄萌黄、黄、白の順)、

等々がある(有職故実図典)。

紫裾濃鎧.jpg

(紫裾濃鎧(むらさきすそごのよろい) http://park2.wakwak.com/~ome.net/24bunkazai0082.htmlより)

縅には、一色に威すものもあるが、「すそご」「におい」の他に、

村濃(むらご 上下左右に偏せず、まばらに濃い色を配する)、
妻取(つまとり 袖・草摺の端の妻を三角に色々の意とで縅し交ぜたもの)、

等々がある。江戸後期の有職故実書『貞丈雑記』には、

すとごと云は、何色にても、上の方の色を淡くして、すその方をば、濃く染たるを云他、鎧の紅すそご、紫すそごも右の心なり、

とある。

なお、「すそご」には、他に、

三種の神器ならびに玄象(げんじょう)、裾濃、二間の御本尊に至るまで(太平記)、

と、玄象(げんじょう)と並び、

琵琶の名器の名、

にこの名がある(仝上)。平安末の日本における現存最古の書論書『夜鶴庭訓抄(やかくていきんしょう)』に、琵琶名として、

井手、渭橋(已上、宇治殿)、玄上(大内)、牧馬(斎齋院)、下濃(すそご 内大臣殿)、元興寺(大内)、兩道、小比巴、木繪、元名(蝉丸比巴也)、以上皆、紫檀也、

とあるし、枕草子に、

御前にさぶらふものは、御琴も御笛も、みなめづらしき名つきてぞある。玄しゃう、牧馬(ぼくば)、井手(ゐで)、渭橋(ゐけう)、無名など、

とある。

参考文献;
笠間良彦『図録日本の甲冑武具事典』(柏書房)
鈴木敬三『有職故実図典』(吉川弘文館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:06| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする