管見

吾少信管見、老而彌篤(何承天、答顔永嘉書)、 と使う、 「管見」は、 管(くだ)を通して見る、 意で、 狭い見識、 自分の見識や見解を謙遜して言う語、 であり、 以管窺天、以針刺地、所窺甚大、所見者甚少(説苑)、 と、 管窺(かんき)、 ともいう(広辞苑)。 高材(逸材)に対してかやうな事を申せば、管を以て天を窺ひ、途(みち…

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生活史

木村礎『村の生活史―史料が語るふつうの人びと』読む。 本書は、 生活史、 を、「村」に限定して、 近世、 近現代、 を取り上げている。というか、 生活史、 とはこういうものだと、「生活史」のモデルを示した、 生活史の教科書、 といった趣である。全体に三章で構成され、第一章は、歴史学の中でも、 天下国家の歴史学、 とは…

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天維坤軸

敵御方の時の声、……四方三百里に響き渡って、天維も忽ち落ち、坤軸も砕けて傾(かたぶ)くかとぞ聞こえける(太平記)、 とある、 天維(てんい)、 は、 天を支える綱、 坤軸(こんじく)、 は、 地軸、 の意である(兵藤裕己校注『太平記』)。 「維」は綱の意、 とあり(広辞苑)、 天綱、 ともいう(字源)。 天が落ちな…

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なま

生兵法、 と使う、接頭語の「なま」は、 これも今は昔、有る人のもとに、なま女房のありけるが(宇治拾遺物語)、 と、 新参の女房、 の意で使ったり(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)、 今はむかし、人のもとに宮づかへしてあるなま侍ありけり(仝上)、 と、 若侍の、 意で使ったりと、 未熟、不完全、いい加減、の意、それらの状態に対して好感を…

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八入

「八入(やしほ)」は、 吾妹子が形見(かたみ)がてらと紅の八塩(やしほ)に染めておこせたる衣の裾もとほりて濡れぬ(万葉集)、 と、 八塩、 とも当てるようだ(精選版日本国語大辞典)。 何回も染汁に浸してよく染めること、 濃くよく染まること、 また、 そのもの、 の意で、 やしほぞめ、 とも言う(広辞苑・仝上)。 「や」は多数…

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一炊の夢

覚めて枕の上の眠(ねぶ)りを思へば、わづか午炊一黄粱の間を過ぎざりけり。客、ここに、人間百年の楽しみも、枕頭片時の夢なることを悟りて(太平記)、 を、 楊亀山が日月を謝する詩に曰く、 少年より学に勧(つと)めて志須(すべか)らく張(ちょう)すべし、 得失由来一夢長し、 試みに問ふ邯鄲枕を欹(そばだ)つる客、 人間幾度(いくたび)か黄粱を熟する(「勉謝自明」)、 これを、…

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うろこ

「うろこ」は、「甍」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/484637308.html?1638389230)で触れたように、従来、「かわら」の語源は、その形態上の類似から、 その葺いた様子が鱗(うろこ)に似ているから、イロコ(鱗 ウロコの古名)の転(和語私臆鈔・俗語考・名言通・和訓栞・柴門和語類集・日本古語大辞典=松岡静雄・国語の語根とその分類=大…

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藪に眴(めくは)す

「藪に眴(めくは)す」は、 佐渡判官入道道誉、これを聞きて、すはや、悪(にく)しと思ひつる相模守(細川清氏)が過失は、一つ出で来にけるとは、と独り咲(え)みして、藪に眴(めくは)し居たる処に(太平記)、 とあり、 蔭でめくばせする、事が秘密であることを示す、 と、注記される(兵藤裕己校注『太平記』)が、 藪の方に向かってめくばせする、 意味で、 よそ…

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根機

「根機」は、 根器、 根気、 とも当て(岩波古語辞典)、本来、仏教用語で、 衆生の、教法を受けるべき性質・能力、 の意で、 人の根機下される故なり(沙石集)、 と、 仏の教化を受けるとき発動することができる能力または資質、 という意味であり(精選版日本国語大辞典)、 機根、 とも、 機、 とも言われる(仝上)が、その意…

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向かひ城

脇屋左京太夫(さきょうのだいぶ)義助(よしすけ 新田義貞弟)の兵五千騎、志賀の炎魔堂の辺りにありける敵の向かひ城、五百余ヶ所に火を懸けて(太平記)、 とある、「向かひ城(むかいじろ)」は、 向ひ城、 向城、 対城、 などとも表記するが、 対(たいの)城、 ともいい、戦国期には、多く、 三木城へ取懸けるが名城なるにより一旦に攻上るに事難かるべしとて、四方…

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野干

「野干(やかん)」は、 射干、 とも当て(広辞苑)、日本では、 女、……成野干……随夫語而來寐、故名為也(霊異記)、 とあるように、狐の正体がばれたときに夫から、 「来つ寝」(きつね)、 と言われたため、 岐都禰(キツネ)、 という名になったとする説話があり、 汝、前世に野干の身を受けて(今昔物語) などと、 狐の異称、 …

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