「玄鳥」は、
つばめの異称、
である。禮記に、
仲春之月、玄鳥至、
とある(字源・大言海)。
「玄」(漢音ケン、呉音ゲン)は、
会意。「糸+一印」。幺(細い糸)の先端がわずかにのぞいてよく見えないさまを示す、
とあり(漢字源)、
「幻」と同系、
とある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8E%84)。
「玄」は、
幽玄、
というように、
仄暗くてよく見えないさま、
奥深くて暗いさま、
の意だが、
玄色、
玄雲、
というように、
黒、
の意でもある。
玄は、黒なり、黒鳥の意なるか、
とある(大言海)のは、その意である。
「つばめ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/458420611.html)で触れたように、和語「つばめ」を、和名類聚抄(931~38年)で、
燕、豆波久良米、
本草和名(ほんぞうわみょう)(918年編纂)で、
燕、玄鳥、都波久良米、
字鏡(平安後期頃)で、
乙鳥、豆波比良古、
と、
つばくら、
つばくろ、
つばくらめ、
などとも呼び、
くら、
くろ、
を、
黒、
とする説と重なってくる。
簡狄(かんてき)感玄鳥之至。神霊福助前鑒既明者歟(源平盛衰記・厳島願文)、
とある、
玄鳥之至、
は、二十四節気の第五の三月節(清明)(旧暦2月後半から3月前半)の初候、つまり七十二候(二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた期間)の、
燕が南からやって来る、
意の、
玄鳥至(つばめきたる)、
を指す。
4月4日から4月8日頃(旧暦2月後半から3月前半)、
になる。それと対になるのが、二十四節気の第十五の八月節(白露)(旧暦7月後半から8月前半)の末候、つまり七十二候の、
燕が南へ帰って行く、
意の、
玄鳥去(つばめさる)、
の、
9月17日から9月21日頃(旧暦7月後半から8月前半)、
になる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%80%99)。
「玄」については、上述の字源説とは別に、
象形。黒い糸をたばねた形にかたどる。くろい、ひいて、おくぶかい意に用いる(角川新字源)、
象形。黒い糸をたばねた形にかたどる。くろい、ひいて、おくぶかい意に用いる(https://okjiten.jp/kanji1318.html)、
とする説もある。「金文」の字をみると、どうも、
黒い糸をたばねた形、
に、説得力があるように思える。
(「玄」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8E%84より)
「鳥」(チョウ)については、「鳥」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/458483418.html)で触れたように、
象形文字で、尾のぶら下がった鳥を描いたもの、
である(漢字源)。
因みに、尾の短い鳥は、
隹(スイ)、
で、
尾の短い鳥を描いたもの。ずんぐりと太いの意を含む。雀・隼・雉などの地に含まれるが、鳥とともに広く、とりを意味することばになった、
とある(仝上)。
(「鳥」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%B3%A5より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95