2021年12月17日

玄鳥


「玄鳥」は、

つばめの異称、

である。禮記に、

仲春之月、玄鳥至、

とある(字源・大言海)。

ツバメ (2).jpg


「玄」(漢音ケン、呉音ゲン)は、

会意。「糸+一印」。幺(細い糸)の先端がわずかにのぞいてよく見えないさまを示す、

とあり(漢字源)、

「幻」と同系、

とあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8E%84

「玄」 漢字.gif

(「玄」 https://kakijun.jp/page/0586200.htmlより)

「玄」は、

幽玄、

というように、

仄暗くてよく見えないさま、
奥深くて暗いさま、

の意だが、

玄色、
玄雲、

というように、

黒、

の意でもある。

玄は、黒なり、黒鳥の意なるか、

とある(大言海)のは、その意である。

「つばめ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/458420611.htmlで触れたように、和語「つばめ」を、和名類聚抄(931~38年)で、

燕、豆波久良米、

本草和名(ほんぞうわみょう)(918年編纂)で、

燕、玄鳥、都波久良米、

字鏡(平安後期頃)で、

乙鳥、豆波比良古、

と、

つばくら、
つばくろ、
つばくらめ、

などとも呼び、

くら、
くろ、

を、

黒、

とする説と重なってくる。

簡狄(かんてき)感玄鳥之至。神霊福助前鑒既明者歟(源平盛衰記・厳島願文)、

とある、

玄鳥之至、

は、二十四節気の第五の三月節(清明)(旧暦2月後半から3月前半)の初候、つまり七十二候(二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた期間)の、

燕が南からやって来る、

意の、

玄鳥至(つばめきたる)、

を指す。

4月4日から4月8日頃(旧暦2月後半から3月前半)、

になる。それと対になるのが、二十四節気の第十五の八月節(白露)(旧暦7月後半から8月前半)の末候、つまり七十二候の、

燕が南へ帰って行く、

意の、

玄鳥去(つばめさる)、

の、

9月17日から9月21日頃(旧暦7月後半から8月前半)、

になるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%80%99

「玄」については、上述の字源説とは別に、

象形。黒い糸をたばねた形にかたどる。くろい、ひいて、おくぶかい意に用いる(角川新字源)、

象形。黒い糸をたばねた形にかたどる。くろい、ひいて、おくぶかい意に用いるhttps://okjiten.jp/kanji1318.html

とする説もある。「金文」の字をみると、どうも、

黒い糸をたばねた形、

に、説得力があるように思える。

「玄」 金文・西周.png

(「玄」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8E%84より)

「鳥」(チョウ)については、「鳥」http://ppnetwork.seesaa.net/article/458483418.htmlで触れたように、

象形文字で、尾のぶら下がった鳥を描いたもの、

である(漢字源)。

「鳥」 漢字.gif

(「鳥」 https://kakijun.jp/page/tori200.htmlより)

因みに、尾の短い鳥は、

隹(スイ)、

で、

尾の短い鳥を描いたもの。ずんぐりと太いの意を含む。雀・隼・雉などの地に含まれるが、鳥とともに広く、とりを意味することばになった、

とある(仝上)。

「鳥」 甲骨文字・殷.png

(「鳥」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%B3%A5より)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:玄鳥 つばめ
posted by Toshi at 05:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする