2021年12月19日
アインシュタイン方程式を読む
深川峻太郎『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた―ガチンコ相対性理論』を読む。
俺だって数式が読めるかっこいい男になりたい! 分不相応な野望を抱いたド文系オヤジが、数式世界の最高峰ともいえるアインシュタイン方程式を読み解く旅に出た。「さがさないでください」という一通の書置きをのこして。はたして彼は、この数式に何が書かれているかを読むことができるのか? 予定調和なしの決死行を見守りながら相対性理論がわかってしまう、世界初の数式エンターテインメント!(アマゾンの本書の紹介)
とか、
「数式を知らずして、宇宙がわかるものか!」 突然そんな激情に駆られた男(50代・文系)は、「数式でできたエベレスト」登頂をめざして、若きシェルパ1人を伴い無謀な旅に出た。……(おそらく)史上初の数式ドキメンタリー、ここに誕生!(カバーの文句)、
というのが、本書の謳い文句である。現に、五十代の文系編集者の、
嗚呼、わかりたい。ちょっとでいいから、数式で宇宙がどう書かれているのかをわかってみたい──そう思うのが人情だろう。だって、彼らは自分と同じ人間なのだ。しかも間違いなく、ものすごく面白いことを研究している。ならば、交流したいじゃないか。カタコトでいいから、同じ言葉でお喋りしてみたいじゃないか(プロローグ)、
ということから思いついたのが、本書の企画である。
「宇宙について書かれた数式を、毛嫌いせずに読んでみるのだ。」
とはじまるのである。読むのを目指したのは、アインシュタインの、
一般相対性理論の重力方程式、
である。各部は、
となっている。これを順次読んで行こうというのである。
その登山の準備項目というのがある。
特殊相対性理論の基本原理と時空図、
k計算法を用いた特殊相対性理論の解法、
不変間隔とローレンツ変換、
4元ベクトルと特殊相対論的運動論、
「登山の準備だけで体を壊しそうである。というか、これ、最初から登山じゃん」
と、著者が嘆くわけである。そして、
特殊相対性理論、
に入って行くために、
ガリレオの相対性原理、
から始めていく。
ガリレオの相対性原理では「ガリレイ変換」、特殊相対性原理では「ローレンツ変換」、一般相対性原理では「一般座標変換」と、それぞれの相対性原理では異なる座標転換を行う、
ということで、「準備」の部で、
第1章 ガリレオの相対性原理
第2章 時間の延びとローレンツ変換
第3章 距離と時間と不変間隔
第4章 4元ベクトルとE=mc2、
を経て、漸く、アインシュタインの方程式を読む登山の部に至り、
第5章 一般座標変換と共変微分
第6章 リーマン曲率テンソルとメトリック
第7章 測地線方程式とエネルギー・運動量テンソル
を積み重ねて、
に至り、
第8章 アインシュタイン方程式、
を登頂することになる。著者は言う。
「とくに一般相対論ワールドに踏み込んでからは、接続と微分、測地線方程式、エネルギー・運動量テンソル……などなど、よくわからないところを次々と『わかったこと』にしながら山頂をめざした。勉強を始める前は『これは入門ではなく冒険だ!』などと嘯いてみたものの、結局のところ自力での登頂はかなわず、途中で何度もへりに乗せてもらって難所をスキップしたのだから情けない。冒険とは名ばかりで、実際は甘っちょろい体験ツアーに参加したようなものである。」
と。とはいえ、アインシュタインの方程式が予言した、
重力波、
をめぐって、
「アインシュタインが『あるわけがない』と考えたブラックホールから、アインシュタインが『あるはずだ』と考えた重力波が届けられたのだから、実にスリリングな成り行きである。
そして、いまの私がそこにぞくぞくするようなスリルを感じられるのは、数式でアインシュタイン理論に取り組んだからこそだろう。」(エピローグ)
と書くのは、体験したものにしか分からない「見える世界」があるからなのだろうと、羨望を禁じ得ない。傍から見ているだけでは岡目八目とはいかない。
参考文献;
深川峻太郎『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた―ガチンコ相対性理論』(ブルーバックス)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95