2022年02月13日

無作(むさ)の大善


「無作」は、

むさく、

と訓ますと、文字通り、

何も作らない、生み出さない、

意だが、

技量のないこと、無骨であること、

の意で使う。その場合、

くちのひろげやう、ぶさくだつた(「本福寺跡書(1560頃)」)、

と、

ぶさく、

とも訓ます(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。しかし、

むさ、

と訓ますと、

無作滅諦即如来蔵(「勝鬘経義疏(611)」)、

と、

有作(うさ)、

の対になり、仏教用語で、

因縁によって生成されたものでないこと、

つまり、

因縁の世界を超越した悟りの境地、

の意とある(広辞苑)。しかし、

有作、

は、

作られたもの、自然ならぬこと、

であり、

有為(うゐ)、
有相(うそう)、

と同じとある。となると、「無作」は、

身口意の動作を假らずして、自然に相続すること、
自然にして作為なきこと、
分別造作なきこと、

とある説明(大言海)の方が、正確である。それが、

道常無為、而無不為、侯王若能守、万物将自化(老子)、

の、

無為(むい・ぶい)、

に同じで、

自然にまかせて、作為するところのない、

つまりは、

因縁の造作なきこと、
因縁によって作られたものでなく、生滅変化を離れたもの、

となり、

その境地、

へと意味がつながる。

無作無起、観法如化(無量寿経)、

とある。「無作」は、

叡慮の驕慢の心を破って、無作の大善(だいぜん)に帰せしめんとなり(太平記)、

と、

無作の大善、

とも使う。

人為的でないおのずからの善、

とある(兵藤裕己校注『太平記』)が、

菩薩がする、分別を離れた無為自然の善根(広辞苑)、
はからいを離れた偉大な善(精選版日本国語大辞典)、

ともあり、「無作」の境地からの、

菩薩がする、分別を離れた無為自然の善根、

の意味の方がいい気がする。

有作、

には、

有相(うそう)、

の意がある。仏教用語で、

すがた、形のあるもの、
存在するもの、

の意で(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、

それは生滅変化するところから有為(うい)、

の意味にも用いる。また、

相対、差別においてとらえられるものをさす、

ともあり(精選版日本国語大辞典)、

うぞう、

と訓ますと、

有象無象(うぞうむぞう)、

となり、

有相無相(うそうむそう)、

の、

形をもっている存在と、すがた、形によって特質づけられている存在自体、すなわち存在の本性、

の意と同じで(精選版日本国語大辞典)、そこから、

宇宙にある有形・無形の一切の物、

つまり、

森羅万象、

の意となり、そのメタファで、

有象無象(うぞうむぞう)、

は、

世にいくらでもある種々雑多のつまらない人々、

の意で使う(広辞苑)。

「無」 漢字.gif

(「無」 https://kakijun.jp/page/mu200.htmlより)

「無」(漢音ブ、呉音ム)は、

无、

とも書き、

形声。原字は、人が両手で飾りを持って舞うさまで、のちの舞(ブ・ム)の原字。無は「亡(ない)+音符舞の略体」。古典では无の字で無をあらわすことが多く、今の中国の簡体字でも无を用いる、

とあり(漢字源)、

「無」 甲骨文字・殷.png

(「無」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%84%A1より)

音を仮借したものhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%84%A1
もと、舞(ブ)に同じ。借りて「ない」意に用いる。のち舞とは字形が分化し、さらに省略されて無の字形となった(角川新字源)、
「人の舞う姿」の象形から「まい」を意味していましたが、借りて(同じ読みの部分に当て字として使って)、「ない」を意味する「無」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji730.html

等々とあり、「舞」を略して借字したということのようだ。

「作」 漢字.gif

(「作」 https://kakijun.jp/page/0709200.htmlより)

「作」(サク・サ)は、

会意兼形声。乍(サク)は、刀で素材に切れ目を入れるさまを描いた象形文字。急激な動作であることから、たちまちの意の副詞に専用するようになったため、作の字で人為を加える、動作をするの意をあらわすようになった。作は「人+乍(サ)」、

とある(漢字源)。同趣旨で、

会意形声。「人」+音符「乍」。「乍」は、ものに刃物を入れる様を象ったもの。ものに刃物を入れ作ることを意味したが、「たちまち」の意の副詞として用いられるようになったため、意味を明確にするため「人」を添え、人為であることを明確にした。「做」(サ)と同音同系、

とありhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%BD%9C、別に、

会意兼形声文字です(人+乍)。「横から見た人の象形」と「木の小枝を刃物で取り除く象形」から人が「つくる」を意味する「作」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji365.html

「作」 甲骨文字・殷.png

(「作」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%BD%9Cより)

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:02| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする