2022年02月23日

鶺鴒


「鶺鴒(せきれい)」は、

鶺鴒(にはくなぶり)有りて、飛び来たりてその首(かしら)尾を揺(うごか)し(神代紀)、

と、

にわくなぶり、
にはくなふり、

と訓ませ、

庭くなぶり、

などと当てた(精選版日本国語大辞典)「セキレイ」の古名である。和名類聚抄(平安中期)に、

鶺鴒、爾波久奈布里、

とあり、本草和名(ほんぞうわみょう)(918年編纂)にも、

鶺鴒、爾波久奈布利、

とあり、類聚名義抄(11~12世紀)には、

鶺鴒、ニハクナブリ、トツギヲシヘドリ

とある。だから、日本書紀には、「鶺鴒(にはくなふり)」の別訓として、

とつぎをしへとり、
つつなはせとり、
つつまなはしら、
とつきとり、

とある(日本書紀・兼方本訓)し、

ももしきの大宮人はうづらとり領巾(ひれ)取り掛けて鶺鴒(まなばしら)尾行き合へ(すそを引いていきかわしの意)(古事記)、

と、

まなばしら、

ともいい、また、

アノ鶺鴒を、にはくなぎ、庭たたき、戀教鳥(こひをしへどり)とも云ふ(近松門左衛門「日本振袖始」)、

と、

にはくなぎ、
戀教鳥(こひをしへどり)、

ともいい(大言海・デジタル大辞泉)、

胡鷰子(あめ)、鶺鴒(つつ)、千鳥、真鵐(ましとと 麻斯登登)何(な)ど開(さ)ける利目(とめ)(古事記)、

とある、

つつ、

も、セキレイの古名とされる(デジタル大辞泉・岩波古語辞典)。「鶺鴒」は、他にも、

イシナギ、
イモセドリ、
イシクナギ、
イシタタキ(石叩き・石敲き)、
ニワタタキ(庭叩き)、
イワタタキ(岩叩き)、
イシクナギ(石婚ぎ)、
カワラスズメ(川原雀・河原雀)、
オシエドリ(教鳥)、
ツツナワセドリ(雁を意味することもある)、
ミチオシエドリ、

等々多くの異名を持つ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AD%E3%83%AC%E3%82%A4・精選版日本国語大辞典)、とされる。

ハクセキレイ.jpg


とつぎをしえどり(嫁ぎ教え鳥)、
戀教鳥(こひをしへどり)、

と呼ぶのは、

二柱(ふたはしら 伊弉諾尊、伊弉冉尊)……時に、鶺鴒(にわくなぶり)と云ふ鳥の、尾を土に敲きけるを見給ひて、始めて嫁することを習うて(太平記)、

とあるように、

日本書紀・神代巻の一書に、イザナギ、イザナミがこの鳥の動作を見て男女交合を知ったとされるところからのようである(岩波古語辞典)。

「にわくなぶり」は、

庭揺(にはくな)ぎ觸(ぶり)の義(大言海)、
庭来狎触の義(和訓栞)、
ニハは庭、クナは数揺、フリは触れの義(箋注和名抄)、
ニハクリナブル(庭砂嬲)の義(名言通)、

等々あるが、

庭で尾を振り動かすものの意、

であり(岩波古語辞典)、「鶺鴒」の特色である、

長い尾を上下に動かす、

ところと、その馴れ馴れしさから名づけているのかもしれない。

「鶺」 漢字.gif


「鶺」(漢音セキ、呉音シャク)は、

会意兼形声。「鳥+音符脊(せぼね)」。背筋が奇麗な鳥の意、

とある(漢字源)。

「鴒」 漢字.gif


「鴒」(漢音レイ、呉音リョウ)は、

会意兼形声。「鳥+令(きよらか)」、

とのみある(仝上)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:鶺鴒
posted by Toshi at 04:49| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする