羅綺

羅綺にだも堪へざるかたち、誠にたをやかに物痛はしげにて、未だ一足も土をば踏まざりける人よと覚えて(太平記)、 にある、 羅綺(らき)にだも堪へざるかたち、 は、 薄絹の衣の重さにも堪えられそうにないさま、 の意とある(兵藤裕己校注『太平記』)。 羅綺に任(た)へえざるがごとし(陳鴻傳『長恨歌傳』)、 に典拠しているらしい(仝上)。 「羅綺」は、…

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あやめも知らぬ

あやめも知らぬわざは、いかでかあるべきと思ひながら、いわんかたなく(太平記)、 にある、 あやめも知らぬ、 は、 物事の分別もつかない振舞い、 と注記があり(兵藤裕己校注『太平記』)、 郭公(ほととぎす)鳴くやさつきのあやめ草あやめ知らぬ戀もするかな(古今和歌集)、 の用例が引かれているが、 あやめ(文目)もわかぬ(ず)、 あやめもつかぬ、 …

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曲水の宴

三月には、三日の御燈(帝が北斗七星に燈明を捧げる儀)、曲水(ごくすい)の宴、薬師寺の最勝会(さいしょうえ)、石清水の臨時の祭、東大寺の授戒(太平記)、 とある、 曲水の宴、 は、 詩歌を詠む遊宴、 と注記がある(兵藤裕己校注『太平記』)。「曲水の宴」は、 きょくすいのうたげ(えん)、 ごくすいのうたげ(えん)、 とも訓ませ、 曲水流觴(きょく…

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衆合叫喚

ただ衆合叫喚(しゅごうきょうかん)の罪人も、かくやと覚えてあはれなり(太平記)、 にある、 衆合叫喚、 は、 八熱地獄のうち、相対する鉄山が両方から崩れて罪人を圧殺する衆合地獄と、熱湯や猛火の鉄室に入れられた罪人が泣き叫ぶ叫喚地獄、 をさす(兵藤裕己校注『太平記』)。 「八熱(はちねつ)地獄」は、 八大地獄、 の別称で、 八大奈落、 …

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会笏

ただ、めでたき歌どもにて候へと、会笏せぬ人はなかりけり(太平記)、 敵の村立(むらだ)つたる中へ、会笏もなく懸け入らんとす(仝上)、 其時此老僧、会釈して(仝上)、 などとある、 会笏、 は、 会釈、 の当て字、最初の「会笏」は、 お世辞、 の意、 次の「会笏」は、 名乗り、 の意とある(兵藤裕己校注『太平記』)。最後の「会釈」…

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輪宝

この時、虚空より輪宝(りんぽう)下り、剣戟(剣と鉾)降って、修羅の輩(ともがら)を分々(つだつだ)に裂き切ると見えたり(太平記)、 にある、 輪宝、 は、 りんぼう、 とも訓み(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、 聖天子の転輪聖王(てんりんじょうおう)が持つ宝器、これが自転して王を先導して四方を征服・教化する、 とある(兵藤裕己校注『太平記』)。 …

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三熱

あら熱や、堪へ難や。いで三熱の炎を醒まさんとて、閼伽井(あかい)の井の中へ蜚(と)びおりたければ(太平記)、 にある、 三熱、 は、「天人五衰」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/431420217.html)で触れたように、仏語で、 竜・蛇などのうける三つの苦悩、熱風・熱沙に身を焼かれること、悪風が吹いて住居・衣服を奪われること…

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探竿影草

城の背(うし)ろの深山(みやま)より、這う這う忍び寄りて、薄(すすき)、刈萱(かるかや)、篠竹(しのだけ)などを切って、鎧の札頭(さねがしら)、兜の鉢付(はちつけ 錣(しころ)の最上部)の板(いた)にひしひしと差して、探竿影草(たんかんようそう)に身を隠し(太平記)、 にある、 探竿影草(たんかんようそう)、 は、臨済宗では、 たんかんようぞう、 と訓ますようだ…

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秋刑

召人(めしうど)京都に着きければ、皆黒衣を脱がせ、法名を元の名に替へて、一人ずつ大名に預けらる。その秋刑を待つ程に(太平記)、 にある、 秋刑、 とは、 処刑。秋は草木を枯らすことから、古代中国では秋官が刑罰を司るとされた(周礼)、 とある(兵藤裕己校注『太平記』)。 「秋官」は、 秋官、其属六十、掌邦刑(周禮)、 とある、 中国、周代の…

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大樹

大樹(たいじゅ)の位に居して、武備の守りを全くせん事は、げにも朝家(ちょうか)のために、人の嘲りを忘れたるに似たり(太平記)、 兄弟一時(いっし)に相並んで大樹の武将に備はる事、古今(こきん)未だその例を聞かず(仝上)、 などとある、 大樹、 は、 大樹将軍の略、 征夷大将軍の異称、 とある(兵藤裕己校注『太平記』)。「大樹」は、文字通り、 大きな樹、…

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