2022年04月20日

恥しめる


所領の二、三十ヶ国なりとも、替へて賜らでは叶はじとぞ恥(はじ)しめける(太平記)、

にある、

恥しめる、

は、

たしなめる、

意と注記がある(兵藤裕己校注『太平記』)。

「恥しめる」は、

恥ぢしめる、

とも表記する(岩波古語辞典)が、

恥(ぢ)しむ、

は、

令恥(はづかしむ)の転、

であり(大言海)、

身づからを、ほけたり、ひがひがしと宣ひはぢしむるは、ことわりなる事になむ(源氏物語)、

と、

恥ずかしめる、
侮辱する、

意(精選版日本国語大辞典・大言海)で、

貪(むさぼ)る心にひかれて、みづから身をはづかしむるなり(徒然草)、

の、

恥づかしむ、

に同じ(仝上)で、

恥ずかしい思いをさせる、
侮辱する、

意である。この、

人を恥ずかしいという思いにさせる、

という意の延長線上で、

千騎が一騎になるまでも、引くなと互いにはぢしめて(太平記)、
コレホド ココロガ カイナウテワ、ブツダウガ アル モノカ、ナラヌ モノカト ココロニ ココロヲ fagiximete(ハヂシメテ)(「天草本平家(1592)」)、

などと、

(恥を知るように)戒める、
たしなめる、

意にもなる(精選版日本国語大辞典・岩波古語辞典)。

「はぢ(じ)」http://ppnetwork.seesaa.net/article/424025452.htmlで触れたように、「はぢ」の語源は、手元では、

端(は)+づ、

とし、

端末にいる劣等感、

とする説(日本語源広辞典)しか見当たらないが、

自分の能力・状態・行為などについて世間並みでないという劣等意識を持つ意、

とする(岩波古語辞典)のと符合しないでもない。

中央から外れている、末端にいる劣等感、

から、

(自分の至らなさ、みっともなさを思って)気が引ける、

となるし、逆に、

(相手を眩しく感じて)気後れする、

となり、結果として、

照れくさい、

という意味になる。「はにかむ」は、

歯+に+噛む、で、遠慮がちに恥ずかしがる様子が、歯に物をかむようなので、はにかむという(日本語源広辞典)、

とする説もあるが、

ハヂカム(恥)の転(大言海・国語の語根とその分類=大島正健)、

とする説の、

恥を知って、恥ずかしがる、

と、

恥、

とつなげた方が、意味の連続性があるのではないか。なお、「はし(橋、端、梯、箸、嘴、階)」http://ppnetwork.seesaa.net/article/473930581.htmlについては触れた。

また、「はじ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/424025452.htmlに当てる漢字には、

恥、はぢ、はづると訓む。心に恥ずかしく思う、論語「行己有恥」、中庸「知恥近乎勇」、
辱、はずかしめ、栄の反。外聞悪しきを言う、転じて賓客応酬の辞となり、かたじけなしと訓む。降屈の義なり拝命之辱とは、貴人の命の降るを拝する義なり、曲禮「孝子不登危、懼辱親也」、
忝、辱に近し。詩経「亡忝爾所生」、
愧、おのれの見苦しきを人に対して恥ずる。醜の字の気味あり、媿に作る。韓文「仰不愧天、俯不愧人、内不愧心」、
慙、慙愧と連用す、愧と同じ。はづると訓むが、はぢとは訓まず。孟子「吾甚慙於孟子」、
怍、はぢて心を動かし、色を変ずるなり。礼記「容母怍」、
羞、はぢてまばゆく、顔の合わせがたきなり、婦女子などの、はづかしげにするなどに多く用ふ、
忸・怩・惡の三字、ともに羞づる貌、
僇(リク)、大辱なり、さらしものになるなり、
赧(タン・ダン)、はぢて赤面するなり、
詬(ク・コウ)、悪口せられてはづる義、言に従ひ、垢の省に従ふ、

等々とある(字源)。別に、

羞は、恥じて心が縮まること、愧は、はずかしくてこころにしこりがあること。「慙愧」と熟してもちいる。辱も柔らかい意を含み、恥じて気後れすること。忸は、心がいじけてきっぱりとしないこと。慙は、心にじわじわと切り込まれた感じ、

とあり(漢字源)、『字源』の説明と微妙にずれる。

「恥」 漢字.gif

(「恥」 https://kakijun.jp/page/1096200.htmlより)

「恥」(チ)は、

会意兼形声。耳(ジ・ニ)は、やわらかいみみ。恥は「心+音符耳」で、心が柔らかくいじけること、

とある(漢字源)が、別に、

会意。「心」+「耳」、恥ずかしくてその様子が耳に出る様。「耳」は音符、かつ、柔らかいことを象徴し、心がなよなよとすることを表わすとも(藤堂)

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%81%A5

会意文字です(耳+心)。「耳」の象形と「心臓」の象形から、はずかしくて耳を赤くする事を意味し、そこから、「はじる」、「はじ」を意味する「恥」という漢字が成り立ちました

ともありhttps://okjiten.jp/kanji1170.html

恥ずかしくてその様子が耳に出る様、

はよく「恥」の体感を言い得ている気がする。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする