2022年04月24日

衆合叫喚


ただ衆合叫喚(しゅごうきょうかん)の罪人も、かくやと覚えてあはれなり(太平記)、

にある、

衆合叫喚、

は、

八熱地獄のうち、相対する鉄山が両方から崩れて罪人を圧殺する衆合地獄と、熱湯や猛火の鉄室に入れられた罪人が泣き叫ぶ叫喚地獄、

をさす(兵藤裕己校注『太平記』)。

「八熱(はちねつ)地獄」は、

八大地獄、

の別称で、

八大奈落、

ともいい、仏教で、

殺生、偸盗、邪淫、飲酒、妄語などを行なった者が死後におもむく、

といわれ(ブリタニカ国際大百科事典・精選版日本国語大辞典・広辞苑)、

焔熱によって苦を受ける、

八種の地獄、

とされ(広辞苑)、経典により異動があり、大智度論では、

活大地獄、黒縄地獄、合會地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、大熱地獄、大熱大地獄、阿鼻大地獄、

とあり、

是等種々八大地獄周圍其外、後有十六小地獄、

とあり(大言海)、倶舎論では、

衆生が住む閻浮提の下、4万由旬を過ぎて、最下層に無間地獄(むけんじごく)があり、その縦・広さ・深さは各2万由旬ある。その上の1万9千由旬の中に、下から大焦熱・焦熱・大叫喚・叫喚・衆合・黒縄・等活の7つの地獄が重層し、総称して八大(八熱)地獄という、

とあり、原始仏教の経典、長阿含経(じょうあごんきょう)では、階層構造ではなく、十地獄ともども世界をぐるりと取り囲む形で配置され、第一地獄から順に、

想地獄(等活地獄)、
黒縄地獄、
堆圧地獄、
叫喚地獄、
大叫喚地獄、
焼炙(しょうしゃ)地獄(焦熱)、
大焼炙(だいしょうしゃ)地獄(大焦熱)、
無間地獄、

とされるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E7%8D%84が、一般には、

等活(とうかつ)、
黒縄(こくじょう)、
衆合(しゅごう)、
叫喚(きょうかん)、
大叫喚、
焦熱(しょうねつ)、
大焦熱、
阿鼻(あび)、

か(ブリタニカ国際大百科事典)、

等活(とうかつ)、
黒縄(こくじょう)、
衆合(しゅごう)、
叫喚(きょうかん)、
大叫喚、
焦熱(しょうねつ)、
大焦熱、
無間(むげん)、

とされる(広辞苑・精選版日本国語大辞典・大言海)が、阿鼻と無間の違いは訳語の違い。その詳細は「八大地獄」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E7%8D%84に譲るが、八大地獄の第一の「等活地獄」は、

殺生罪を犯した者が堕ちるといわれ、五体を裂かれて粉砕されるが、涼風が吹いて元の身体となり、再び咲かれる苦しみを繰り返す、殺されても前と等しく何度も活きかえされるのでこの名がある、

とある(広辞苑)。黒縄地獄の下に位置する八大地獄の第三の「衆合地獄」は、その10倍の苦を受け、

堆圧地獄、

の別名を持ちhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E7%8D%84

殺生、偸盗、邪淫を犯したものの落ちるところ。鉄山におしつぶされたり、落ちてくる大石につぶされたり、臼の中でつかれたりする苦を受け、また、十六の別所(小地獄)で、さまざまな苦しみを受ける、

という(精選版日本国語大辞典)。その下の第四番目の「叫喚地獄」は、その10倍の苦を受け、

熱湯の大釜(大鍋)の中で煮られたり、猛火の鉄室に入れられて号泣、叫喚する、

とある(仝上)。地獄の最下層に位置する八番目の「無間地獄」は、

阿鼻(あび)地獄、

とも言うが、これは、「阿鼻」が、

梵語avīciの音訳、

で、それを、

無間(むけん)、

と漢訳したための違い。

現世で五逆・謗法などの最悪の大罪を犯した者が落ちる、地獄の中で最も苦しみの激しい所、

とされ(精選版日本国語大辞典・広辞苑)、

間断なく剣樹・刀山・鑊湯(かくとう 「鑊」は釜の意、釜の中の湯)などの苦しみを受ける、

とあり(広辞苑)、

大きさは前の7つの地獄よりも大きく、縦横高さそれぞれ2万由旬(8万由旬とする説もある)。最下層ゆえ、この地獄に到達するには、真っ逆さまに(自由落下速度で)落ち続けて2000年かかる、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E7%8D%84

六道絵 13世紀・鎌倉時代 聖衆来迎寺.jpg

(「六道絵」(閻魔王庁図・阿鼻地獄図・等活地獄図・人道不浄相図十五幅の一部)鎌倉時代 聖衆来迎寺 https://intojapanwaraku.com/art/2105/より)

衆合叫喚、

が、

衆合地獄と叫喚地獄、

を指すとするなら、

阿鼻叫喚、

は、

阿鼻地獄と叫喚地獄、

を取り合わせた謂いで、

阿鼻地獄の苦に堪えられないで泣き叫ぶさま、

を言うが、それをメタファに、

きわめてはなはだしい惨状を形容する語、

としても使う(広辞苑)。また、他にも、

今生より焦熱大焦熱の、炎に身を焦がしける(善悪報ばなし)、

というように、

焦熱地獄と大焦熱地獄、

を重ねて使うが、「焦熱地獄」は、

八大地獄の第六、殺生、偸盗、邪婬、妄語、飲酒、邪見の者がおちる地獄。罪人は熱鉄や鉄のかまの上に置かれて身をやかれ苦しめられる、

といい(精選版日本国語大辞典・広辞苑)、

きわめて暑いことのたとえ、

としても使い、「大焦熱地獄」の「大焦熱」は、

pratāpanaの訳語、

で、八大地獄の第七番目。焦熱地獄の下、無間地獄の上にあり、罪人は炎熱で焼かれ、その苦は他の地獄の十倍といわれる。殺生・偸盗・邪婬・妄語・邪見などの罪を犯したものが、無量億千歳にわたって苦を受ける、

といい(仝上)、

焦熱大焦熱、

と重ねることで、その恨みの炎の暑さとすさまじさを強調している。

因みに、地獄には、

熱地獄、

のほかに、

寒地獄、
孤地獄、

の三種があるhttp://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E9%98%BF%E9%BC%BB%E5%8F%AB%E5%96%9Aらしい。

「地」 漢字.gif

(「地」 https://kakijun.jp/page/0658200.htmlより)

「地」(漢音チ、呉音ジ)は、

会意兼形声。也(ヤ)は、うすいからだののびたサソリを描いた象形文字。地は「土+音符也」で、平らに伸びた土地を示す、

とあり(漢字源・https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%9C%B0)、別に、

会意兼形声文字です(土+也)。「土の神を祭る為に柱状に固めた土」の象形(「土」の意味)と「蛇」の象形(「うねうねしたさま」を表す)から、「うねうねと連なる土地」)を意味する「地」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji81.html

「地」 金文・西周.png

(「地」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%9C%B0より)

「獄」(漢音ギョク、呉音ゴク)は、

会意。「犬+犬+言(角立てて言う)」で、二匹の犬が争うようにいがみ合って言い合うことを示す。かたくとげとげしいの意を含む、

とある(漢字源・https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8D%84)。別に、

会意。㹜(ぎん=犾 あらそう)と、言(ことば)とからなり、うったえ争う、ひいて「ひとや」の意を表す、

とも(角川新字源)、

会意文字です(犭(犬)+言+犬)。「耳を立てた犬の象形×2」(「二犬が争うまたは、二犬が見張るまたは、いけにえの犬」の意味)と「取っ手のある刃物と口」の象形(「誓いの言葉または、うったえ争う」の意味)から、「人に威圧感を与える場所(地獄)」を意味する「獄」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1310.html

「獄」 漢字.gif

(「獄」 https://kakijun.jp/page/1463200.htmlより)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする