2022年05月02日

龍鱗を攀じて鳳翼に附す


旧功の輩(ともがら)を招き集められけるに、龍鱗に付いて鳳翼を攀(よ)ぢ、宿望を達せばやと(太平記)、

にある、

龍鱗に付いて鳳翼を攀ぢ、

は、普通、

竜鱗に攀じて鳳翼に附す、

という。

天下士大夫、捐親戚棄土壌、従大王於矢石之閒者、其計固望其攀龍鱗、附鳳翼、以成其所志耳(後漢書・光武紀)、

に依る、

竜のうろこにつかまり、鳳凰の翼につき従う、

つまり、

「攀」は、とりすがって上る、「附」は、つきしたがう、

意で、

勢力のある者にすがりて、立身すること、

である(大言海)。「龍鱗」は、

リュウリン、
とも
リョウリン、

とも訓み、文字通り、

龍の鱗、

の意だが、

臣下のたのみとなる偉大な英主、

の意である(広辞苑)。

臣下が英主に従って功業を立てる、

の意をメタファに、

閉戸著書多歳月、種松皆老作攀龍(王維)、

と、

老松などの幹の樹皮が竜の鱗の形に似たもの、

に譬えたり、

先賢を手本に人徳を養うことのたとえ、

にも使ったり(広辞苑)、

敵虎韜(包囲、攻撃する陣立)に連ねて圍めば、虎韜に分れて相當り、龍鱗に結びて蒐(かか)れば、龍鱗に進んで戦ふ(太平記)、

と、

陣立て、

の一つとしても使う(大言海)。

鳳凰.bmp

(「鳳凰」 精選版日本国語大辞典より)

「鳳凰」は、

古来中国で、麒麟、亀、龍とともに四瑞(しずい 四霊)と尊ばれた想像上の瑞鳥、前は麒麟、後は鹿、頸は蛇、尾は魚、背は亀、頷(あご)は燕、嘴は鶏に似、五色絢爛、聲は五声にあたり、梧桐に宿り、竹実を食い、醴泉(れいせん)の水を飲むといい、高さ五、六尺(一・五~一・八メートル)、羽には五色の紋がある。聖徳の天子の兆しとして現れると伝え、雄を鳳、雌を凰という、

とある(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。

鳳鳥、

ともいう(仝上)。「四霊」については、「四神相応」http://ppnetwork.seesaa.net/article/486277205.htmlでも触れた。

鳳凰(台湾).jpg

(鳳凰(台湾・艋舺龍山寺) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E9%9C%8Aより)

また、「龍鱗を攀じて鳳翼に附す」は、

攀龍附鳳勢莫當、天下盡化為侯王(杜甫)、

と、

攀龍附鳳(はんりょうふほう)、

という四字熟語になっていて、

附鳳、

ともいう(大言海)。似た言葉に、

蒼蠅(そうよう)驥尾に付して千里を致す、

というのがある。これも四字熟語で、

蒼蠅驥尾(そうようきび)、

ともいう。

驥尾に附く、
驥尾に付す、

ともいう(故事ことわざの辞典・広辞苑)。

蠅が驥尾について千里も遠い地に行くように、後進者がすぐれた先達につき従って、事を成し遂げたり功を立てたりする、

意で(広辞苑)、

蒼蠅附驥尾而致千里、以喩顔回因孔子而名彰(史記・伯夷傳)、
蒼蠅之飛、不過十歩、自託驥尾之髪、乃騰千里之路(漢書・張敞(ちょう しょう)傳)、

などによる(大言海・故事ことわざの辞典)。「蒼蠅」は、

あおばえ、

「驥尾」は、

駿馬の尾、

である。なお「蒼蠅」には、

營營青蠅、止手樊(まがき)、豈弟(がいてい 人柄のおだやかなこと)君子、無信、讒言(豈弟は楽易(心が安らかであること)の義)(詩経)、
匪鷄則鳴、蒼蠅之聲(齋風)、

などと、

讒人、

の意もある(字源・大言海)

「龍」 漢字.gif

(「龍」 https://kakijun.jp/page/ryuu200.htmlより)

「龍」(漢音リョウ、呉音リュウ、慣用ロウ)は、「神龍忽ち釣者の網にかかる」http://ppnetwork.seesaa.net/article/485851423.html「亢龍悔い有り」http://ppnetwork.seesaa.net/article/484356729.htmlで触れたように、

象形。もと、頭に冠をかぶり、胴をくねらせた大蛇の形を描いたもの。それにいろいろな模様を添えて、龍の字となった、

とある(漢字源)。別に、

象形。もとは、冠をかぶった蛇の姿で、「竜」が原字に近い。揚子江近辺の鰐を象ったものとも言われる。さまざまな模様・装飾を加えられ、「龍」となった。意符としての基本義は「うねる」。同系字は「瀧」、「壟」。古声母は pl- だった。pが残ったものは「龐」などになった、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%BE%8D

「鱗」 漢字.gif


「うろこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/484969775.htmlで触れたように、「鱗」(リン)は、

会意兼形声。粦(リン)は、連なって燃える燐の火(鬼火)を表す会意文字。鱗はそれを音符とし、魚を加えた字で、きれいに並んでつらなるうろこ、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(魚+粦)。「魚」の象形(「魚」の意味)と「燃え立つ炎の象形と両足が反対方向を向く象形」(「左右にゆれる火の玉」)の意味から、「左右にゆれる火の玉のように光る魚のうろこ」を意味する「鱗」という漢字が成り立ちました、

との解釈もあるhttps://okjiten.jp/kanji2354.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:53| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする