2022年05月18日

竜宮


「竜(龍)宮」は、

浦島太郎、

で名高いが、一応、

深海の底にあって、龍神の住む宮殿、

とされ(広辞苑)、中国伝説や物語では、

龍宮(りゅうぐう 竜宮)、
竜宮城(りゅうぐうじょう)、
水晶宮(すいしょうきゅう)、
水府(すいふ)、

は、竜王が主(あるじ)で、四海竜王等々、各地にいくつもの竜王が存在する。日本では、これを

うみのみやこ、
たつのみや、
たつのみやこ、
たつのみやい、
わたつみのみや、
わたつみのみやい、

等々日本風に訓む(仝上・大言海)が、いわゆる、

竜宮城、

であり(仝上)、

竜神のすみか、

とされる(マイペディア)が、必ずしも、

海の底、

ではなく、

湖沼や川、井戸の底、洞窟が龍宮への通路となっているものも存在している、

とされ(仝上・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BE%8D%E5%AE%AE)、俵藤太は、龍宮の使いの小男と共に、瀬田の唐橋から、

二人共湖水の水の波を分けて水中に入ること五十余町あつてひとつの楼門あり、開いて中に入るに、瑠璃の砂(いさご)、厚く玉の甃(いしだたみ)あたたかにして落花自から繽紛たり(太平記)、

とある。

新版浮絵浦島竜宮入之図(葛飾北斎).jpg

(新版浮絵「浦島竜宮入之図」(葛飾北斎) https://ja.ukiyo-e.org/image/ritsumei/mai02e06より)

しかし、柳田國男が、日本の昔話では、

竜宮には竜はいない。そうしてしばしば乙姫様という美しい一人娘がいる、

といったように(『海上の道』・海神竜考)、

美女と歓楽と不老と珍宝珍味の宮殿、

のイメージで(マイペディア)、

国外から運び入れたのは、主として語音の珍しいその仙郷の名だけであって、説話の内容は是がために大きな変化をとげていなかった、

もののようだ(仝上)。それまでは、

蓬莱山、

を使い、

トコヨノクニ、

と訓ませていたが、万葉集では、

潮満たばいかにせむとか海神(わたつみ)の神が手渡る海人娘子(あまをとめ)ども、

と、

わたつみの神の宮(綿津見神宮)、

とか、

海境(うなさか)を過ぎて漕ぎ行くに海神(わたつみ)の神の娘子(をとめ)にたまさかにい漕ぎ向ひ相とぶらひ、

と、

わたつみの神のをとめ、

という言葉を使っていた、これは、

浦島太郎、
海幸(うみさち)・山幸、

や、売れ残りの花を水に投じた礼に竜宮に招かれる花売りの説話などで語り継がれてきた、

海中または海上、

の、

海の国の名、

であった(柳田・前掲書)し、記紀の、

根の国、
常世の国、

とも関わり、奄美や沖縄などの南島諸島で、海の向こうにあるとされる異世界、

ニライカナイ、

と通じるものである。「竜宮」を、

ニルヤ、

に近い語をもって呼んでいた、ともある(柳田・仝上)。因みに「蓬莱」は、

よもぎがとま、

とも訓ませ、

蓬莱山、
蓬莱島、

とも呼び、「仙人」http://ppnetwork.seesaa.net/article/483592806.htmlで触れたように、『史記』秦始皇本紀に、

斉人徐市(じょふつ 徐福)、上書していう、海中に三神山あり、名づけて蓬莱(ほうらい)、方丈(ほうじょう)、瀛州(えいしゅう)という。僊人(せんにん)これにいる。請(こ)う斎戒(さいかい)して童男女とともにこれを求むることを得ん、と。ここにおいて徐をして童男女数千人を発し、海に入りて僊人を求めしむ、

とある三神山の一つ、

東海中にあって、仙人が住み、不老不死とされる霊山で、不老不死の神薬があると信じられた、

とあり(広辞苑)、この薬を手に入れようとして、秦の始皇帝は方士の徐福(じょふく)を遣わした。

仏教においても、

爾時、文殊師利、坐千葉蓮花、大如車輪、俱來菩薩、亦坐寶蓮華、従於大海、婆竭羅龍宮、自然湧出、住虚空中(妙法蓮華経・提婆達多品)、

とあるように、

大海の底に娑竭羅(しやから)竜王の宮殿があって、縦広8万由旬(ゆうじゆん 1由旬は帝王1日の行軍里程)もあり、七重の宮牆(きゆうしよう)、欄楣(らんび)などはみな七宝をもって飾られている(長阿含経)、

とか、

海上に白銀、瑠璃、黄金の諸竜宮があって、毒蛇大竜がこれを守護しており、竜王がここに住み珍宝が多い(賢愚因縁経)、

などと説く(大言海・世界大百科事典)。

娑竭羅龍王(しゃからりゅうおう)の娘(第三王女)は、

善女(如)龍王、

と呼ばれ、

その年わずか八歳の竜少女、

とあり(妙法蓮華経・提婆達多品)、文殊師利菩薩はこの竜女は悟りを開いたと語るも、

智積菩薩はこれに対し、お釈迦様のように長く難行苦行をし功徳を積んだならともかく、僅か8つの女の子が仏の悟りを成就するとは信じられないと語った。また釈迦の弟子の舎利弗も、女が仏になれるわけがないと語った。

のに、

竜女はその場で法華経の力により即身成仏し、それまで否定されていた女子供でも動物でも成仏ができることを身をもって実証した、

とあるhttps://www.wdic.org/w/CUL/%E5%A8%91%E7%AB%AD%E7%BE%85%E9%BE%8D%E7%8E%8B%E3%80%82%E5%A5%B3。「娑竭羅(サーガラ Sāgara)」は、仏法を守護する天龍八部衆に所属する竜族の八王、

八大竜王(はちだいりゅうおう)、

の一人とされ(法華経)、

娑伽羅、
沙掲羅、
沙羯羅、

とも音訳され、

大海、
龍宮の王、
大海龍王、

と漢訳されているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E7%AB%9C%E7%8E%8B

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
乾克己他編『日本伝奇伝説大辞典』(角川書店)
柳田國男『海上の道』(岩波文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:27| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする