したうづ

そのすみは、したうづがたにぞありける(宇治拾遺物語)、 の、 したうづかた、 は、 襪型、 であり、 したうづ、 は、 したぐつの音便、 靴の下に履く足袋、いまの靴下、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。 「したうづ(したうず)」は、 下沓、 襪、 と当て、 しとうず(しとうず)、 とも言う(広…

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おほらか

飯(いひ)・酒・くだ物どもなどおほらかにしてたべ(宇治拾遺物語)、 我も、子供にも、もろともに食はせんとて、おほらかにて食ふに(仝上)、 などの、 おほらか、 は、 たっぷりと、 の意である(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。 大から、 多らか、 と当て、 分量の多いさま、 たっぷり、 の意で、 「おほし」+接尾辞「らか」、 …

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かせぎ

身の色は五色にて、角の色は白き鹿(しか)一(ひとつ)ありけり。深き山にのみ住て人に知られず、……また烏あり、此かせきを友として過ごす(宇治拾遺物語)、 の、 かせき、 は、 鹿の異名、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)が、 越国白き鹿(カセキ)一頭(ひとつ)を献れり(「日本書紀(720)」推古紀)、 一箇蒜(ひとつのひる)を白きかせぎに弾きかけ給ふ…

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かひ

大なる銀の提(ひさげ)に銀のかひをたてて、おもたげにもてまゐりたり(宇治拾遺物語)、 御膳まゐるほどにや、箸、かひなど、とりまぜて鳴りたる、をかし(枕草子)、 侍、かひに飯をすくひつつ、高やかに盛り上げて(今昔物語)、 などとある、 かひ、 は、 匙、杓子の類、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。 因みに、「ひさげ」は、「とっくり」(http:/…

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わらすべ

あるにもあらず手ににぎられたる物をみれば、わらすべといふ物ただ一筋にぎられたり(宇治拾遺物語)、 の、 わらすべ、 は、 わらしべ、 の転訛、 藁稭、 と当て、 わらしび、 とも訛るが、 稲の穂の芯、 の意で、 わらくず、 わらみご、 ともいい、その意味では、 藁の細いもの、 の意の、 わらすぢ…

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過渡

アリス・アンブローズ編(野矢茂樹訳)『ウィトゲンシュタインの講義―ケンブリッジ1932~1935年』を読む。 本書は、アリス・アンブローズとマーガレット・マクドナルドの聴講ノートをもとにした、1932~1935年の間のウィトゲンシュタインの講義記録である。この直後から『哲学探究』を書き始めるという意味で、この四年は、 「ウィトゲンシュタインの施策が中期から後期へと成熟して…

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紙衣

もとは紙ぎぬ一重ぞきたりける。さて、いとさむかりけるに(宇治拾遺物語)、 とある、 紙ぎぬ、 は、 紙衣、 と当て、 かみこ、 かみころも、 かみきぬ、 などと訓み、 紙子、 とも当て、 かみこ、 ともよませる。 紙製の衣服、 の意で、 生漉(きすき・きずき 楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)…

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衲(のう)

ひきいでたるをみれば、ふくたいといふ物を、なべてにも似ず、ふときいとして、あつあつとこまかにつよげにしたるをもてきたり(宇治拾遺物語)、 その蔵にぞ、ふくたいのやれ(破れ)などは、をさめて、まだあんなり(仝上)、 とある、 ふくたい、 は、異本には、 たいといふもの、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)とある。 たい、 は、和名類聚抄(平安中期…

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しなしなし

凡そけだかくしなしなしう、をかしげなる事、ゐ中人(なかびと)の子といふべからず(宇治拾遺物語)、 にある、 しなしなし、 は、 上品で、 の意とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。「しなしなし」は、普通、 田舎びたるされ心もてつけて、しなじなしからず(源氏物語)、 と、 しなじなし、 といい、 品々し、 と当て、 いか…

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零落した神

柳田國男『一目小僧その他』を読む。 本書には、大まかにわけて、 一目小僧、 目一つ五郎考、 鹿の耳、 の御霊信仰、 橋姫、 の橋姫信仰、 隠れ里、 魚王行乞譚、 物言う魚、 の神霊譚、 流され王、 ダイダラ坊の足跡、 の異種神信仰、 餅白鳥に化する話、 熊谷弥惣左衛門の話、 の霊異信仰、 が掲載されている…

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したなき

まめやかにさいなみ給へば、殿上の人々したなきをして、みなわらふまじきよしいひあへり(宇治拾遺物語)、 にある、 したなき、 は、 舌鳴、 と当て、 恐れるさま、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)が、あまり辞書には載らない言葉で、ネットで検索しても、 下泣き、 は出るが、 舌鳴、 は出ない。わずかに、 舌鳴き、 舌…

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した

「した」に当てるのには、 下、 舌、 簧、 がある。「下」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/463595980.html)については触れた。ここでは、 舌、 簧、 である。「舌」は、言うまでなく、 大きなる鹿、己が舌を出して、矢田の村に遇へりき(「播磨風土記(715頃)」)、 と、 口腔底から突出している…

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すまふ

せめののしりければ、あらがひて、せじと、すまひ給ひけれど(宇治拾遺物語)、 にある、 すまふ、 は、 争ふ、 抗ふ、 拒ふ、 などと当て、 相手の働きかけを力で拒否する意、 で(岩波古語辞典)、 人の子なれば、まだ心いきほひなかりければ、とどむるいきほひなし。女もいやしければ、すまふ力なし(伊勢物語)、 と、 争ふ、 負けじと…

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いだしあこめ

直衣(なほし)のながやかにめでたきすそより、青き打ちたる(砧で打って光沢を出した)いだし袙(あこめ)して、指貫も青色のさしぬきをきたり(宇治拾遺物語)、 の、 いだし袙(あこめ)、 とあるのは、 直衣の下から下着(袙)の裾を出るようにして、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。 出衣(いだしぎぬ)、 ともいい、 貴族の男子の晴れの姿の折の、…

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犢鼻褌(たふさぎ)

みれば額に角おひて目一つある物、あかきたふさきしたる物出来て、ひざまづきてゐたり(宇治拾遺物語)、 の、 たふさき、 は、 たふさぎ、 たうさぎ、 とふさぎ、 とも表記し、古くは、 わが背子が犢鼻(たふさき)にする円石(つぶれし)の吉野の山に氷魚(ひを)ぞ懸有(さがれる)(万葉集)、 とあり、色葉字類抄(1177~81)にも、 犢鼻褌、たふ…

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庚申待

若き僧綱(そうごう)・有職(ゆうそく)などが庚申して遊けるに、うへの童(わらは)のいとにくさげなるが、瓶子などしありける(宇治拾遺物語)、 に 庚申して、 とあるのは、 庚申待、 の意で、 庚申の夜、語り明かす行事、 とある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。「庚申」は、十干十二支の組合せの一つで、 かのえさる、 の日で、60日または60年…

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ひまち

「ひまち」は、 日待(ち)、 と当てるが、この、 マチ、 は、 待ち、 と当てているが、 祭りと同源(精選版日本国語大辞典)、 マツリ(祭)の約(志不可起・俚言集覧・三養雑記・桂林漫録・新編常陸風土記-方言=中山信名・綜合日本民俗語彙)、 とあり、その「まつり」は、 奉り、 祭り、 と当て、 神や人に物をさしあげるのが原義…

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ぬさ

山科の石田の社の皇神(すめかみ)に奴左(ヌサ)取り向けて吾れは越えゆく相坂山を(万葉集)、 このたびは幣(ぬさ)も取りあへず手向(たむけ)山紅葉(もみぢ)の錦神のまにまに(菅原道真)、 とある、 「ぬさ」は、 幣、 と当て、 麻・木綿・帛または紙などでつくって、神に祈る時に供え、または祓(はらえ)にささげ持つもの、 の意で、 みてぐら、 にぎて、…

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つややか

「つややか」は、 艶やか、 と当て、 見やれば、木の間より水のおもてつややかにて、いとあわれなるここちす(かげろう日記)、 などと、 表面が美しく光って見えるさま、 光沢(つや)有りて、麗しく光って、 の意から、 桃の木わかだちて、いとしもとがちにさし出でたる、片つ方は青く、いま片枝は濃くつややかにて、蘇枋(すおう)の日かげに見えたるが(枕草子)、…

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ねんごろ

「ねんごろ」は、 懇ろ、 と当てる。 ネモコロの転(広辞苑・大言海・岩波古語辞典)、 とある。「ねもころに」は、 ネを根、 と見るのは同じだが、その解釈は、 根モコロの意、モコロは、同じ状態にある意、草木の根が、こまやかに絡み合って土の中にあるのと同様にの意(岩波古語辞典)、 ネは根なり、モコロは如の義、物の極(きはみ)と等しくの意ならむ(大言海・…

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