2022年08月05日
晡時
晡時になりて、油、灯心、抹香を携へ、仏前形(かた)ばかり飾り、看経(かんきん 経文の黙読)やうやう時移れば(宿直草)、
とある、
哺時(ほじ)、
は、
通常、
晡時、
と当てる。
申(さる)の刻、午後四時頃の日暮れ時、
の意である(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。転じて、
日暮時、
夕方、
の意でも使う。
「晡時」は、
餔時、
とも当てる(日本国語大辞典)。
「餔」(漢音ホ、呉音フ・ブ)は、
会意兼形声。「食+音符甫(平らにのばしてあてがう)」。敷(平らにのばす)と同系で、粉を薄くのばして焼いただんご。また、補(あてがう)と同系で、ひもじさをおさえるおやつ、
とある(漢字源)。
餔其糟(屈原・漁夫)、
とあり、
くらう、
意であるが、
又一に、哺に作る、
とあり(字源)、
古、哺と通ず、
とある(仝上)。また、
ゆうげ、
の意味もあり、
申の刻(午後四時頃)の食事、
の意味もある(仝上)。
餔時、
は、上記から、
餔(ゆうめし)の時、七ッ時、即ち午後四時(淮南子)、
とある(仝上)。
「哺」(漢音ホ、呉音フ)は、
形声。「口+音符甫」で、口中にぱくりととらえて、ほほやくちびるでおさえること、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(口+甫)。「口」の象形と「草の芽の象形と耕地(田畑)の象形」(「広い、しき広げる」の意味)から、「口中に食物を広げる、含む、食う」を意味する「哺」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji2147.html)が、いずれにしても、「口に含む」意で、音から「晡」「餔」と通字となったものかと推測される。
「晡」(ホ)は、
餔に通ず、
とあるが、解字は何処にも載らないので、勝手な解釈だが、
日+音符甫、
だが、「甫」(漢尾ホ、呉音フ)は、
会意。「屮(芽ばえ)+田」で、苗を育てる畑。つまり苗代(ナワシロ)のこと、平らに広がる意を含む、
とあり(漢字源)、陽が、
広く平らに広がる、
傾いた頃を指している会意文字ではないか、と憶測する。
晡、
自体で、
申の刻、今の午後四時、
の意で、さらに、
朝晡頒餅餌、寒暑賜衣装(白居易)、
と、
ゆうべ、
暮方、
の意もある。で、
晡下(ほか)、
で、
七つ下がり、午後四時過ぎ、
を意味し、
晡時(ほじ)、
で、
日至於悲谷、是謂晡時(淮南子)、
と、
午後四時、
を指し、
晡夕(ほせき)、
で、
晡夕之後、精神恍惚、若有所喜(宋玉・神女賦)、
と、
薄暮、
を意味する(字源)。つまり、
哺時、
は、
餔時、
に通じ、
晡時、
と同義ということになる。で、「晡」を、
ゆうがた、
と訓ませるとするものもある(https://kanji.club/k/%E6%99%A1)。
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95