2022年10月09日

しま


「しま」は、

島、

のほか、

嶋、
嶌、

とも当てるが、

周囲を水で囲まれた陸地、

をいい、分布の状態から、

諸島、
列島、
孤島、

などと、また、成因から、

陸島(りくとう)、
洋島(ようとう)、

に区別され、洋島には、

火山島、
珊瑚島、

などがある(広辞苑)とされる。「陸島」は、

大陸棚上に位置する島、

をいい、

大陸島、

ともいう。「陸島」に対するのが、

洋島、

で、

大洋底からそそり立っている島、

をいい、

海洋島、

ともいう(日本大百科全書)。

三宅島.jpg

(「三宅島」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6より)

この「しま」の語源には、

四面、局(かぎ)られて、狭(せま)、又は、縞(しま)の義、梵語にも四摩と云ふとぞ、朝鮮語に、しむ(大言海)、
朝鮮語siem(島)と同源(岩波古語辞典)、
セマ・セバ(狭)の義(日本釈名・箋注和名抄)、
シマ(締)の義(日本声母伝・類聚名物考・名言通・本朝辞源=宇田甘冥・国語の語根とその分類=大島正健)、
水中にスムベキ(居可)所の意で、スミの転語(東雅・言葉の根しらべの=鈴木潔子)、
シはス(洲)の転で、マはムラ(村)の反(日本釈名)、
スマ(洲間)の義(和語私臆鈔・言元梯)、
シホウ(四方)から見えるヤマ(山)の義(和句解)、
本来は邑落(ゆうらく)を意味する語(島の人生=柳田國男)、
本来は宮廷領を意味する語(万葉びとの生活=折口信夫)、
シマ(独立した所)の意(日本語源広辞典)、

等々様々な説があるが、

「しま」の「ま」は、「浜」「沼」「隈」「まま(崖)」など、ある地勢・地形を表す語の第二音節に共通し、それは地名「有馬・入間・笠間・勝間・群馬・相馬・志摩・但馬・筑摩・野間・播磨・三間」などにも多く認められるところから、地形を表す形態素、

とみる説がある(日本語源大辞典)。この方が説得力がある気がする。

simaが水と陸の境を意味していた、

とする説http://www.jojikanehira.com/archives/15258565.htmlも、その流れでみると意味深い。

「島」には、

島物の略、

として、

織柄の一種、二種以上の色糸を用いて、たて・よこに種々の筋をあらわした模様、織物、

の意があるか、これは、

戦国末期から安土桃山時代に、ポルトガル等から伝わり、「南蛮諸島のもの」と呼ばれた、

ことからくるものhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%97%E3%81%BEで、近世前期までは、

縞、

ではなく、

島、

と書いた(岩波古語辞典)による。いまひとつ、

(美濃では)民居の集合、……部落または大字のことらしい(島の人生)、

と、柳田國男が言っているのは、折口信夫の、

本来は宮廷領を意味する語、

とする説とも関わる気がするが、はっきりしない。「しま」の意味に、

このしまはよその者には渡せない
此のしま初めての祝儀とて先づ嚊が手元へ二両投げければ(浮世草子「諸艶大鑑」)、

などと、

ある限られた地域、

をいい、それが、

やくざの縄張り、

などをいう「しま」と繋がっているのかもしれない。また、

取り付く島もない、

というように(「けんもほろろ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/420594101.htmlで触れた)、「しま」には、

頼りや助けとなる物事。よすが、

の意があり、

航海に出たものの、近くに立ち寄れるような島はなく、休息すら取れない、

といった状況を指し、

困り果てる様子にたとえていっている。なお、

律令制時代の8世紀から9世紀にかけて、国(令制国)と同格の行政機関として「島(嶋)」が置かれていた。長を「島司」、役所を「島府」と言い、国分寺に相当する「島分寺」が建立された。島司は国司に相当する官職であり、中央から派遣された官吏である、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6、701年制定の大宝律令では、

壹伎島・対馬島・多褹島、

の3島が置かれていた(仝上)という。

「嶋」 漢字.gif



「嶌」 漢字.gif

(「嶌」 https://kakijun.jp/page/9BB8200.htmlより)

「島」 漢字.gif

(「島」 https://kakijun.jp/page/1052200.htmlより)

「島」 説文解字・漢.png

(「島」 説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B3%B6より)

「嶋」(トウ)は、

会意兼形声。「山+音符鳥(チョウ)」で、渡り鳥が休む海の小さい山、

のこと、

とある(漢字源)。元の形は、

㠀、

で、まさに、

渡り鳥が止まる場所の意から、波のあいだにうかぶ山、

となる(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B3%B6・角川新字源)。

なお、「島」は「島台の略」という意もあるが、「島台」については「すはま」http://ppnetwork.seesaa.net/article/473834956.html、「蓬莱」http://ppnetwork.seesaa.net/article/488165402.htmlで触れた。

参考文献;
柳田國男「海南小記(柳田国男全集1)」(ちくま文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:32| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする