2022年10月16日

目代


女、ありのままに申しける。其のまま目代へ訴たへ、、やがて死罪に行ひけり(善悪報ばなし)、

にある、

目代、

は、

代官、

と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。「目代(もくだい)」を、

代官、

の意で使うのは、室町時代以降で(広辞苑)、江戸時代は、むしろ、

目付(めつけ)の称、

とある(仝上)。「目代」は、

めしろ(目代・眼代)、

とも言い、

眼代(がんだい)、

ともいう(デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典)。もともと「目代」は、

日本の古代末・中世において、地方官たる国守の代官として任国に下向(げこう)し、在庁官人を指揮して国務を行う人、

を指す(日本大百科全書)とあり、

本来は国守が私的に設けた政務補助者の総称であり、11世紀前半までは人数も1人とは限らず、

分配(ぶはい)目代、
公文(くもん)目代、

等々と称して国務を分掌していた。それが、11世紀後半に各国に留守所(るすどころ)ができ、その国の在地の領主である在庁官人が実質的に国務を切り回し、国守が遙任(ようにん)と称して任国に下向しなくなると、留守所の統轄者たる庁目代だけが目代といわれるようになる(仝上)とある。だから、平安・鎌倉時代の

国守の代理人。任国に下向しない国守の代わりに在国して執務する私的な代官(精選版日本国語大辞典)
地方官の代理人。遥任(ようにん)や知行国の制が盛んになると、国司・知行国主はその子弟や家人(けにん)を目代として任国に派遣、国務を代行させた。目代は在庁官人を率い地方で実権を振るった(百科事典マイペディア)、

等々と説明され、

鎌倉時代以降、国司制度の衰退とともに消滅した、

とある(旺文社日本史事典)。鎌倉時代の法制解説書『沙汰未練書』に、

目代トハ、国司代官也、

とある。つまり、「目代」は元来、国司の四等官の、

守(かみ)、介(すけ)、掾(じよう)、目(さかん)、

のうち第四等官の目の代官の意味ともいわれる。で、「目代」の由来を、

目は佐官(岩波古語辞典)、
「めしろ(目代)」の音読か。「目」は「佐官」の意とも(日本国語大辞典)、
律令制下の地方官の代官。もともと人の耳目に代る意味(ブリタニカ国際大百科事典)、
人の目に代わる意(デジタル大辞泉・大辞林)、
主人の耳目のかわりをする者の意(日本国語大辞典)、
目は見守る意、後の目付の如し、国司の目(サクワン)の代、の意とするはあらず(大言海)、

とするのは、多く、

代理人、
身代わり、

の意で、本来は、

その子弟や家人(けにん)を目代として任国に派遣、国務を代行させた、

が、転じて、

本来なら役職上、現地に下向して執務しなければならない人物の代理として派遣された代官、

どの役人を指すようになるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%AE%E4%BB%A3。そうなると、「目代」はその事務能力によって登用されたので、たとえば、伊豆守小野五友(いつとも)は、目代に、傀儡子(くぐつ)出身のものをつけ、

傀儡子目代、

と言われたとある(今昔物語)。つまり、その職の正員(しょういん)の代わりに、

現地で執務する人、

を目代と称するようになっている。当然ながら、

この者を目代にして庫裏に置き使はれ候へ(咄本「醒睡笑」)、

と、広く、

代理人、
代理、

の意味でも使われるようになり、

父御様母御様はござらず。目代になるこの乳母はぐるなり(浄瑠璃「鑓の権三重帷子」)、

と、

監督、
後見、
目付、

の意味にも使われていく。

「目」 漢字.gif

(「目」 https://kakijun.jp/page/0588200.htmlより)

「目」(漢音ボク、呉音モク)は、「尻目」http://ppnetwork.seesaa.net/article/486290088.htmlで触れたように、

象形。めを描いたもの、

であり(漢字源)、

のち、これを縦にして、「め」、ひいて、みる意を表す。転じて、小分けの意に用いる、

ともある(角川新字源)。

「代」 漢字.gif

(「代」 https://kakijun.jp/page/0511200.htmlより)

「代」(漢音タイ、呉音ダイ)は、

形声。弋(ヨク)は、くいの形を描いた象形文字で、杙(ヨク 棒ぐい)の原字。代は「人+弋(ヨク)」で、同じポストに入るべき者が互い違いに入れ替わること、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(人+弋)。「横から見た人の象形」と「2本の木を交差させて作ったくいの象形」から人がたがいちがいになる、すなわち「かわる」を意味する「代」という漢字が成り立ちました、

とあるhttps://okjiten.jp/kanji387.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:47| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする