2022年10月27日

匂ひ


年のころ廿(はたち)ばかりと見ゆ。白き小袿(こうちぎ)に紅梅の下襲(したがさね)、匂ひ世の常ならず、月にえいじ、花に向かひて(伽婢子)、

にある、

匂ひ、

は、

かさねの色目が美しく取りあわされている様子、

とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。これだとわかりにくいが、「匂ひ」は、いわゆる、

襲(かさね)の色目、

のうち、

同系色のグラデーション、

を指すhttp://www.kariginu.jp/kikata/5-2.htm

襲の色目.jpg

(襲の色目 大辞泉より)

「襲の色目」は、

女房装束の袿の重ね(五衣)に用いられた襲色目の一覧、

をいうhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%B2%E3%81%AE%E8%89%B2%E7%9B%AE

「小袿」http://ppnetwork.seesaa.net/article/492871391.html?1666725543で触れたように、

正式の女房装束はこの上に「表着」や「小袿」、さらに「唐衣」を着用しますから、表面に表れる面積では「五衣」は少ないのですが、袖などに表れるこの部分の美しさを女房たちは競いました、

とあるhttp://www.kariginu.jp/kikata/5-2.htm。平安時代は、グラデーションを好んだようで、その配色の方法で、「匂ひ」の他、

薄様(うすよう グラデーションで淡色になり、ついには白にまでなる配色)
村濃(むらご ところどころに濃淡がある配色です。「村」は「斑」のこと)
単重(ひとえがさね 夏物の、裏地のない衣の重ねです。下の色が透けるので微妙な色合いになる)、

等々がある(仝上)。なお、「村濃」については、「すそご」http://ppnetwork.seesaa.net/article/484482055.htmlで触れた。冒頭の、

紅梅の下襲(したがさね)、

は、

紅梅色から朱色に戻る袿を濃淡に従ってそろえたもの、

をいい、これに対して、

柿(かき)、桜、山吹、紅梅、萌黄(もえぎ)の五色をとり交わしつつ云々(いい)。三色着たるは十五ずつ……、多く着たるは十八、二十にてでありける(栄花物語)、

というのは、濃淡を含めた異系統の数色による襲色目になる(日本大百科全書)。

「卯の花」http://ppnetwork.seesaa.net/article/472739320.htmlで触れたように、十二単などにおける色の組み合わせを、

色目、

といい、襲(かさね)装束における色づかいについていわれることが多いので、

かさね色目、

などともいいhttp://www.kariginu.jp/kikata/kasane-irome.htm

衣を表裏に重ねるもの(合わせ色目、表裏の色目)、
複数の衣を重ねるもの(襲色目)、
経糸と緯糸の違いによるもの(織り色目)、

の三種類ある(http://www.kariginu.jp/kikata/kasane-irome.htm・日本大百科全書)。「重色目」は、

表の色と裏の色の組み合わせ、

で、

当時の絹は薄かったので裏地が透けたため複雑な色彩、

になったhttps://costume.iz2.or.jp/color/

男性の直衣(のうし)などでも「桜の直衣」などというように、衣服の表地と裏地の二色の配合によるもので、袷(あわせ)仕立ての場合当然現れる色目、

になる(日本大百科全書)。春夏秋冬のシーズン色と雑(四季通用)がある。「織り色目」は、

織物の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の違い、

によるもので、経緯の糸の太さと密度を同じにして織った場合には、いわゆる、

玉虫、

になって、光線のぐあいでひだの高低にしたがって、2色が交錯して見える。また経緯(たてよこ)の太さを変え、そのいずれかを浮かせて文様を織り出せば、いわゆる、

二色の綾(あや)、

になって、地と文様の色が相対する。紫、縹(はなだ)などの経綾地に緯に白を配して文様を表した、

緯白(ぬきじろ)の綾、

などが、男性の指貫(さしぬき)などに多くみられる。また緯糸に数色の色を入れて、これを、

浮織、

に織ったものが、男性の狩衣(かりぎぬ)や女性の表着(うわぎ)や唐衣(からぎぬ)、袿(うちき)などに用いられた、とある(仝上)。

「襲」 漢字.gif

(「襲」 https://kakijun.jp/page/2201200.htmlより)

「襲」(漢音シュウ、呉音ジュウ)は、

会意兼形声。「龍」は、もと龍を二つならべた字(トウ)で、重ねる意を表わす。襲はそれを音符とし、衣を加えた字で、衣服を重ねること、

とある(漢字源)。

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:40| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする