2022年11月07日

さざれ石


俗にさざれ石と呼ぶ、この石の上に清水いりて常に水たえず、白龍石中にすむなり(梁塵秘抄口伝集)、

にある、

さざれ石、

の「さざ」は、

細、

あるいは、

小、
細小

と当て(広辞苑・岩波古語辞典)、

「わずかな」「小さい」「こまかい」、

の意で、

ささ蟹、
ささ濁り、
ささ浪(波)、

等々、接頭語的に用い、

細かいもの、小さいものを賞美していう、

とあり、

形容詞の狭(さ)しの語根を重ねたる語、

とあり(大言海)、

近江の狭狭波(ささなみ)(孝徳紀)とあるは、細波(ささなみ)なり、狭狭貧鈎(ささまぢて)(神代紀)とあり、又、陵墓を、狭狭城(ささき)と云ふも同じ、いささかのササも、サとのみも云ふ、狭布(さふ)の狭布(さぬの)、細波(ささなみ)、さなみ。又、ささやか、ささめく、ささやく、など云ふも同じ、

とある(仝上)。

ただ、「ささやか」(細やか)は別として、「ささやく」http://ppnetwork.seesaa.net/article/449925050.html、「さざめく」http://ppnetwork.seesaa.net/article/450667068.htmlの「ささ」「さざ」は擬声語である旨は触れた。

後世濁ってサザとも、

とある(岩波古語辞典)。

さざれ、

は、

ささらの転、

で、「ささら」は、

妹なろが使ふ川津のささら萩葦と人言(ひとごと)語りよらしも(万葉集)、

と、

ササは細小の意、ラは接尾語、

で(岩波古語辞典)、「さざれ」は、

細、

と当て、

さざれ水、そと流るる水なり(匠材集)、

と、

さざれ(細)波、
さざれ(細)水、
さざれ(細)石、
さざれ(細)砂、

と、名詞に付いて、

「わずかな」「小さい」「こまかい」などの意、

を添える(日本国語大辞典)。

「さざれ石」は、

細石、

と当て、

小さな石、こまかい石、小石、

の意で、

さざれ、
さざれし、

とも約め(大言海・広辞苑)、「さざれし(細れ石)」も、

レシ[r(es)i]が縮約をとげたためサザリになり、語頭を落としてざり・ジャリ(砂利)、

となる(日本語の語源)が、

わが君は千世に八千世にさざれ石の巌となりて苔こけのむすまで(古今和歌集)、

とある、

「さざれ石」は、

細(さざれ)石の巌(いわお)となる、
砂子(いさご)長じて巌となる、

というように、

小石、

の意ではあるが、

長い年月をかけて小石の欠片の隙間を炭酸カルシウム(CaCO3)や水酸化鉄が埋めることによって、一つの大きな岩の塊に変化した、

石灰質角礫岩(せっかいしつかくれきがん)、

を、「君が代」の歌詞にある、

巌(いわお)、

であるとして、この岩を指して、

さざれ石、

と呼ぶことが少なくないhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%95%E3%81%96%E3%82%8C%E7%9F%B3とある。

さざれ石 (2).jpg

(「さざれ石」(千鳥ケ淵戦没者墓苑) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%95%E3%81%96%E3%82%8C%E7%9F%B3より)

小石が巌(いわお)となり、さらにその上に苔が生えるまでの過程、

が、非常に長い歳月を表す比喩表現として用いられ(仝上)、「さざれ石」は、

神々の魂が宿る石、

として、古くから信仰の対象になっている。

さざれ石(籠神社).jpg

(籠神社(このじんじゃ 京都府宮津市)にあるさざれ石 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%95%E3%81%96%E3%82%8C%E7%9F%B3より)

「細」(漢音セイ、呉音サイ)は、

会意兼形声。「田」は小児の頭にある小さいすき間の泉門を描いた象形文字「囟」(シン)、細は「糸(ほそい)+音符囟(シン・セイ)」で、小さく細かく分離していること、

とあり(漢字源)、

田は誤り変わった形、

とある(角川新字源)。また、

隙間がわずかであるの意、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B4%B0。別に、

「細」 漢字.gif


会意兼形声文字です(糸+田(囟)。「より糸」の象形(「糸」の意味)と、「乳児の脳の蓋(ふた)の骨が、まだつかない状態」の象形(「ひよめき(乳児の頭のはちの、ぴくぴく動く所)」の意味)から、ひよめきのように微か、糸のように「ほそい」を意味する「細」という漢字が成り立ちました、

とあるのが分かりやすいhttps://okjiten.jp/kanji165.html

「石」 漢字.gif

(「石」 https://kakijun.jp/page/ishi200.htmlより)

「石」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482824936.htmlで触れたように、「石」(漢音セキ、呉音ジャク、慣用シャク・コク)は、

象形。崖の下に口型のいしはのあるさまを描いたもの、

とある(漢字源)。

象形、「厂」(カン 崖)+「口」(いしの形)、山のふもとに石が転がっているさまを象る(『説文解字』他通説)。会意、「厂」(崖)+「口」(祭祀に用いる器)(白川)、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%9F%B3

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:59| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする