2022年11月08日

ひわ


桜の花綻(ほころ)び、金翅雀(ひわ)、小雀(こがら)、争い囀づり(伽婢子)、

金翅雀(ひわ)、

とあるのは、

鶸、

とも当て、

鳥はこと所の物なれど、鸚鵡(あうむ)、いとあはれなり。人のいふらんことをまねぶらんよ。ほととぎす。くひな。しぎ。都鳥。ひわ。ひたき(枕草子)、

と挙げられている、

スズメ目アトリ科ヒワ亜科に属する鳥の総称、

で(日本大百科全書・広辞苑)、

ヒワ(鶸)とも総称されるが、狭義にはその一部をヒワと呼ぶ(ヒワという種はいない)、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%AF%E4%BA%9C%E7%A7%91

穀食型の嘴を持つ小形の鳥、

で、村落周辺や疎林に群をなしてすみ、小さな木の実や草の種子を食う。広義には、

マシコ・ウソ・シメなども含み、世界に約120種、

あるが、普通には村落近くで見られる、

マヒワ・カワラヒワ・ベニヒワ、

などを指す(広辞苑)。別に、

日本産のアトリ科の鳥のうち、マヒワ、ベニヒワ、カワラヒワの三種の総称、

であり、普通には、

マヒワ、

をさす(日本国語大辞典・デジタル大辞泉)とするものもある。で、

金翅雀、

は、

マヒワの別名、

とするものもある(季語・季題辞典)。

一般に雌雄異色で、雄は赤色または黄色の羽色をもつ種が多く、日本の伝統色である、

鶸(ひわ)色、

は、

マヒワの雄の緑黄色、

に由来する(日本大百科全書)。

ヒワの種類.jpg

(ヒワのおもな種類(標本画) 日本大百科全書より)


マヒワ(オス).jpg


ただ、

鶸、

の字は、

弱鳥の合字、

とあり、漢名は、

金翅雀、

とあり(大言海)、

飼育するとすぐに落ちる(死ぬ)ので弱い鳥として「鶸」(ヒワ)を充てています、

とする説https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1494.htmlもあるが、

非なり、……鶸は弱きにあらず、その形繊小(ひはやか)なる意なり。ひはやかに、ひはづに、と云ふ語は、細くたをやかなる、又、弱弱しき意なり。栄花物語、十七、音楽「宮いみじうひはやかにめでたういらせたまふ」、源氏物語、三十一、槙柱、「いとささやかなる人の、常の御なやみに痩せ衰へひはづにて」と見ゆ、

とあり(大言海)、

よく囀りて、清滑なり、

とし、

ひゅんちゅんちゅん、

と聞ゆ、とある(仝上)。「ひはづ」は、

繊弱、
怯弱、

と当て、

ヒハはヒハボソ、ヒハヤカのヒハと同じ、

とあり(岩波古語辞典)、

ひはづなる僧の経袋、頸にかけて(宇治拾遺物語)、

と、

きゃしゃ、
ひよわ、

の意、「ひはぼそ」も、

繊弱、

と当て、

ヒハは、ヒハヤカニ・ヒハヅのヒハと同じ、

で、

ひはぼそたわや(タワヤカナ)腕(かひな)(記紀歌謡)、

と、

か弱く細いこと、

で、「ひはやか」も、

繊弱、

と当て、

ヒハは、ヒハヅ・ヒハボソのヒハと同じ、

で、

いみじうをかしう、ひはやかに美しげにおはします(源氏物語)、

と、

見るからにひ弱なさま、
きゃしゃなさま、

の意とある(岩波古語辞典・大言海)。確かに、単純に、

弱弱しい、

というよりは、

はかなげ、

という含意なのかもしれない。「ひは」は、この、

ひはやかに、
ひはづ、
ひはぼそ、

の「ひは」を語源としていると思われ、

弱いことをヒワヒワシというところから、弱鳥の合字(和訓栞)、
ヒワヅの義(和句解)、
ヒヨワ(弱)の義(俚言集覧・名言通)、
ひわやかに弱弱しい義、また、ヒは鳴き声からか(音幻論=幸田露伴)、

等々諸説あるが、単純に、

弱い、

と見るのはいかがなものか。ただ、歴史的仮名遣いは、

ひは、

ではなく、

ひわ、

だとする説がある(日本語源大辞典)。だとすると、語源は、全く解釈が変わってくる可能性がある。

また、

鶸、

の字は、「漢字」由来ではなく、後述の漢字「鶸」の意味との乖離からみると、

和製漢語、

の可能性がある。

なお「ひわ」は、

ひわ色、

の「ひわ」でもあるが、その「ひわ」色は、

ヒワの羽のような黄緑色、

特に、

まひわ、

のそれを指す。

鶸色.jpg

(鶸色 デジタル大辞泉より)

「鶸」(漢音ジャク、呉音ニャク)は、

会意兼形声。「鳥+音符弱(肉や羽が柔らかい)」、

とあり、漢字「鶸」は、

鶏の一種で、大型のもの、

とあり(漢字源)、

とうまる(仝上)、
とうまるの一種(字源)、

とある。

しゃもよりも大、性猛くしてよく闘ふ、

とある(仝上)。「とうまる」は、

鶤鶏、
唐丸、

等々と当てる。

「鶸」 漢字.gif

(「鶸」 https://kakijun.jp/page/EA53200.htmlより)

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:04| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする