「こげら」は、
小啄木鳥、
と当てる。
キツツキの一種、
で、
全長約15センチ、
ほど、
日本のキツツキ類中最小でスズメぐらい、
で、
背面は暗褐色で、白い横縞があり、腹面は汚白色で、褐色の縦斑がある。雄は後頭の両側に小さな赤い線状の羽がある、
という特色(日本国語大辞典・広辞苑)だが、その耳羽の上あたりの赤色羽は、
風になびくなどしないと見えないくらい小さい羽、
とある(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1425.html)。
主に低山にすみ、冬はシジュウカラなどと群れをつくる
という(日本国語大辞典・広辞苑)。
(コゲラの雄の後頭部の羽根には赤い斑がある https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B2%E3%83%A9より)
「こげら」の語源は、
キツツキの古名、
と関係する。
「きつつき」は、
啄木鳥、
と当て、
木突き、
がその由来だが、古名は、
テラツツキ、
テラツキ、
で(大言海)、
寺啄(広辞苑)、
啄木(大言海)、
と当て、本草和名(ほんぞうわみょう 918年編纂)は、
天良豆豆岐、
字鏡(平安後期頃)は、
啄木鳥、寺豆支、
とし、室町時代に、
啄木鳥、
と当てる(仝上)、
ケラツツキ、
の称を生じ(tera→keraと転訛か)、
両形が行われたが、江戸時代、
キツツキ、
が生まれ、
三者併用され、近世末に、
キツツキ、
標準形となった(日本語源大辞典)とある。江戸語大辞典には、
キツツキ、
の項に、
テラツツキ、
ケラツツキ、
が併記されている。江戸後期の『物類称呼』(安永四年(1775))には、
てらつつき又けらつつきといふ。江戸にて、きつつきと称す、
とあり、江戸期の『和漢三才図会』に、和名、
牙良豆豆木(ケラツツキ)、
とあり、
舌が長い鳥、
として認識されていて、
舌長、
とも記述されている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%84%E3%82%AD%E7%A7%91)。
タクボク、
キタタキ、
は、
キツツキ(啄木鳥)、
の派生だが、「きつつき」を、
ケラ、
と呼ぶのは、
ケラツツキ、
の略称であろう。ただ、「ケラツツキ」に転訛する前の、
テラツツキ、
の、「テラ」の意味がはっきりしない。
寺啄、
と当てる(広辞苑)が、
テラとは取(トラ)にて、虫を取らむの意、
とある(大言海)ので、
寺、
は当て字のようである。
「ごげら」は、
小啄木鳥、
と当てるように、
ちいさなキツツキ、
の意で、
こけらつつき、
と呼び、
こけら→こげら、
と転訛したと思われる(語源由来辞典)。
アオゲラ、
アカゲラ、
クマゲラ、
ヤマゲラ、
等々の、キツツキの仲間の「ゲラ」も「コゲラ」の「ケラ」「ゲラ」同趣と考えられる。
(コゲラ デジタル大辞泉より)
なお、「キツツキ」に当てる、
啄木鳥(タクボクチョウ)、
は漢語である(字源)。
(「寺つつき」(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』) 『画図百鬼夜行全画集』より)
また、
テラツツキ、
を、
寺つつき(てらつつき)、
と当て、
啄木鳥のような怪鳥、
とするのは、
物部の大連は仏法を好まず、厩戸皇子(むまやどのわうじ)にほろぼさる。その霊一つの鳥となりて、堂塔伽藍を毀(こぼ)たんと、す。これを名づけて、てらつつきといふとや、
という鳥山石燕である(今昔画図続百鬼)。
四天王寺や法隆寺に現れ、嘴で寺中をつついて破壊しようとしている、
と言われ、
古来の神々を信仰していた物部守屋が、聖徳太子と蘇我馬子に討伐された後、寺つつきという怨霊になって、仏法に障りを成すため、太子の建立した寺を破壊しようとしている、
のだとされる。「源平盛衰記」によると、
聖徳太子は鷹になって寺つつきに対抗したところ、寺つつきは二度と現れなくなった、
という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E3%81%A4%E3%81%A4%E3%81%8D)。寺つつきの正体は、
アカゲラ、
とされる(仝上)。これは、
寺啄、
の「寺」の字からの連想なのではないか、という気もするが、木造建築だけに、啄木鳥の被害が現実にあったということなのかもしれない。
「啄」(漢音タク・トク、呉音タク・ツク)は、
会意兼形声。豖(タク)は、本来冢の中と同じ豕(シ)とは別字。豚の足をひもでしばってとめた姿で、一か所にじっと止まる意を含む。触(角をじっと一か所に突き当てる)と同系のことば。啄はそれを音符とし、口を添えた字で、くちばしを一か所にじっと突き当ててつつくこと、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(口+豕)。「口」の象形と「口の突き出ている、いのしし」の象形(「いのしし」の意味だが、ここでは、「こつこつと木をつつく音を表す擬声語」の意味)から、「鳥がくちばしでつつく」を意味する「啄」という漢字が成り立ちました、
と真逆の説もある(https://okjiten.jp/kanji2394.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95