2022年11月11日

こげら


「こげら」は、

小啄木鳥、

と当てる。

キツツキの一種、

で、

全長約15センチ、

ほど、

日本のキツツキ類中最小でスズメぐらい、

で、

背面は暗褐色で、白い横縞があり、腹面は汚白色で、褐色の縦斑がある。雄は後頭の両側に小さな赤い線状の羽がある、

という特色(日本国語大辞典・広辞苑)だが、その耳羽の上あたりの赤色羽は、

風になびくなどしないと見えないくらい小さい羽、

とあるhttps://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1425.html

主に低山にすみ、冬はシジュウカラなどと群れをつくる

という(日本国語大辞典・広辞苑)。

コゲラ.jpg



こげらの雄の後頭部の羽根には赤い斑がある.jpg

(コゲラの雄の後頭部の羽根には赤い斑がある https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B2%E3%83%A9より)

「こげら」の語源は、

キツツキの古名、

と関係する。

「きつつき」は、

啄木鳥、

と当て、

木突き、

がその由来だが、古名は、

テラツツキ、
テラツキ、

で(大言海)、

寺啄(広辞苑)、
啄木(大言海)、

と当て、本草和名(ほんぞうわみょう 918年編纂)は、

天良豆豆岐、

字鏡(平安後期頃)は、

啄木鳥、寺豆支、

とし、室町時代に、

啄木鳥、

と当てる(仝上)、

ケラツツキ、

の称を生じ(tera→keraと転訛か)、

両形が行われたが、江戸時代、

キツツキ、

が生まれ、

三者併用され、近世末に、

キツツキ、

標準形となった(日本語源大辞典)とある。江戸語大辞典には、

キツツキ、

の項に、

テラツツキ、
ケラツツキ、

が併記されている。江戸後期の『物類称呼』(安永四年(1775))には、

てらつつき又けらつつきといふ。江戸にて、きつつきと称す、

とあり、江戸期の『和漢三才図会』に、和名、

牙良豆豆木(ケラツツキ)、

とあり、

舌が長い鳥、

として認識されていて、

舌長、

とも記述されているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%84%E3%82%AD%E7%A7%91

タクボク、
キタタキ、

は、

キツツキ(啄木鳥)、

の派生だが、「きつつき」を、

ケラ、

と呼ぶのは、

ケラツツキ、

の略称であろう。ただ、「ケラツツキ」に転訛する前の、

テラツツキ、

の、「テラ」の意味がはっきりしない。

寺啄、

と当てる(広辞苑)が、

テラとは取(トラ)にて、虫を取らむの意、

とある(大言海)ので、

寺、

は当て字のようである。

「ごげら」は、

小啄木鳥、

と当てるように、

ちいさなキツツキ、

の意で、

こけらつつき、

と呼び、

こけら→こげら、

と転訛したと思われる(語源由来辞典)。

アオゲラ、
アカゲラ、
クマゲラ、
ヤマゲラ、

等々の、キツツキの仲間の「ゲラ」も「コゲラ」の「ケラ」「ゲラ」同趣と考えられる。

アオゲラ.jpg



アカゲラ(オス).jpg



クマゲラ(オス).jpg



コゲラ ② (2).jpg

(コゲラ デジタル大辞泉より)

なお、「キツツキ」に当てる、

啄木鳥(タクボクチョウ)、

は漢語である(字源)。

寺つつき 鳥山石燕.jpg

(「寺つつき」(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』) 『画図百鬼夜行全画集』より)

また、

テラツツキ、

を、

寺つつき(てらつつき)、

と当て、

啄木鳥のような怪鳥、

とするのは、

物部の大連は仏法を好まず、厩戸皇子(むまやどのわうじ)にほろぼさる。その霊一つの鳥となりて、堂塔伽藍を毀(こぼ)たんと、す。これを名づけて、てらつつきといふとや、

という鳥山石燕である(今昔画図続百鬼)。

四天王寺や法隆寺に現れ、嘴で寺中をつついて破壊しようとしている、

と言われ、

古来の神々を信仰していた物部守屋が、聖徳太子と蘇我馬子に討伐された後、寺つつきという怨霊になって、仏法に障りを成すため、太子の建立した寺を破壊しようとしている、

のだとされる。「源平盛衰記」によると、

聖徳太子は鷹になって寺つつきに対抗したところ、寺つつきは二度と現れなくなった、

というhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E3%81%A4%E3%81%A4%E3%81%8D。寺つつきの正体は、

アカゲラ、

とされる(仝上)。これは、

寺啄、

の「寺」の字からの連想なのではないか、という気もするが、木造建築だけに、啄木鳥の被害が現実にあったということなのかもしれない。

「啄」 漢字.gif

(「啄」 https://kakijun.jp/page/1032200.htmlより)

「啄」(漢音タク・トク、呉音タク・ツク)は、

会意兼形声。豖(タク)は、本来冢の中と同じ豕(シ)とは別字。豚の足をひもでしばってとめた姿で、一か所にじっと止まる意を含む。触(角をじっと一か所に突き当てる)と同系のことば。啄はそれを音符とし、口を添えた字で、くちばしを一か所にじっと突き当ててつつくこと、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(口+豕)。「口」の象形と「口の突き出ている、いのしし」の象形(「いのしし」の意味だが、ここでは、「こつこつと木をつつく音を表す擬声語」の意味)から、「鳥がくちばしでつつく」を意味する「啄」という漢字が成り立ちました、

と真逆の説もあるhttps://okjiten.jp/kanji2394.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:59| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする