勝れて慳貪なる者にて、恒に婦(よめ)をせこめること限りなし(片仮名本・因果物語)、
にある、
せこめる、
は、
いじめる、
意とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。
せごめる、
ともいい、
近世語、
とある(大辞林)。
いつかに高名したきとて、科なき女をせこむること、兄ながらも広綱は侍には似合ず(浄瑠璃「佐々木先陣(1686)」)、
と、
苦しめる、
いじめる、
責める、
意だ(江戸語大辞典)が、もう少しきつく、
虐待する、
ひどい目にあわせる、
という含意に近い気がする(精選版日本国語大辞典)。勝手な憶説だが、
責め+込める、
ではあるまいか。
semekomeru→se[me]komeru→sekomeru、
といった縮約なのではあるまいか。「込む」は、
籠む、
とも当て、
混む、
とも当てる(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%93%E3%82%80)。
平安仮名文では複合動詞の中で使われることが多い、
とある(岩波古語辞典)が、複合動詞としての「込む」には、
飛び込む、押しこむ、
のように、
~(場所、領域)に、~(方法・様態)して入る、入れる、
という、
方向性を添加する用法、
と、
考え込む、買い込む、
のように、
すっかり~する、十分~する、
というように、
複合している動詞の状態や動作の程度を深めていく用法、
とがあり、後者の
程度深化、
の用法としては、さらに、
ふさぎこむ、だまりこむ、しょげこむ、弱り込む、話し込む、
などのように、
固着化(動作・作用の結果、ある状態に至ったまま固定化している)、
のタイプと、
ふけこむ、やつれこむ、冷え込む、めかしこむ、だましこむ、
などのように、
濃密化(程度が高まり、状態が亢進していくもの)、
のタイプと、
歌い込む、泳ぎ込む、漬け込む、使い込む、練り込む、
などといった、
累積化(何かの目的のため、人が動作や行為の積み重ねよりその技や対象とするものの質の向上を図る)、
のタイプの三つに分ける説がある(甲斐朋子「複合動詞『〜こむ』の程度深化の用法」)らしい。この場合、
責め込む、
は、「込む」の付加によって、
責め苛む、
と、単に「責める」のではなく、それを倍化される含意が強まる。「責める」よりも強める発話の意とがある、と考えていい。
「込」は、
国字である。
会意。「辵」(すすむ)+「入」、進んで中にはいること、
で(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%BE%BC)、
混雑する、
意では、
混む、
を当てる。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
甲斐朋子「複合動詞『〜こむ』の程度深化の用法」(https://www.apu.ac.jp/rcaps/uploads/fckeditor/publications/polyglossia/Polyglossia_V2_Kai.pdf)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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