2022年11月20日
責む
「責む」は、口語でいえば、
責める、
である。「せむ」は、
責む、
迫む、
攻む、
と当てる(岩波古語辞典)。
セシ・セバシ(狭)と同根、
とある(仝上)。たとえば、
攻める、
は、
迫むの転、
とあり(広辞苑)、
責める、
は、
攻めると同根、
とある(仝上)。「せし」は、
狭し、
と当て、
御勢まさりて斯かる御住ひも所せしければ(源氏物語)、
と、
ゆとりがない、
窮屈である、
意であり、「せばし」は、
狭し、
陝し、
と当て、
セシ(狭し)・セム(攻む)と同根、
で、
三蔵の中の修多羅(経)は竪(たたさま)には長く横さまにはせばし(法華義疏)、
と、
(窮屈に感じるほどに)面積や幅が小さい、せまい、
意で使う(岩波古語辞典)。
迫む、
逼む、
と当てる「せむ」由来かと思われるが、
狭(セ)を活用す、
とあり(大言海)、
せまる、
せばまる、
意で、
責む、
は、
迫むの他動、狭(セバ)むる、
意で、
迫りて、苦しめる、
意とある(仝上)。その延長線上に、
攻む、
が来ることになる。
物理的に距離を狭める
↓
(相手との距離を詰める、はげしく迫る)
↓
心理的に距離を狭める、
↓
(追い詰める、窮地に追い込む)
といった、「距離」をメタファに転じて意味の外延を広げていった感じである。
「責」(慣用セキ、漢音サク、呉音シャク)は、
会意兼形声。朿(シ 束(ソク)ではない)は、先のとがったとげや針を描いた象形文字で、刺(シ さす)の原字。責は「貝(財貨)+音符朿」で、貸借について、とげでさすように、せめさいなむこと。債の原字、
とある(漢字源)。
負債が、だんだんと重なることから「つむ」の意が生じた、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%B2%AC)、
人から金銭をむしり取る、ひいて「せめる」「せめ」の意を表す、
ともある(角川新字源)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95