化生

いかさま化生(けしょう)の類ならんと、恐れてすすまず(新御伽婢子)、 化生、 は、 変化、幽霊の類、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 化生、 は、 かせい、 と訓ませると、 汝天地の中に化生して(太平記)、 と、 形を変えて生まれること、 の意味で、 化身に同じ、 ともあり(広辞苑)、また、 …

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偕老のふすま

夜半の鐘に枕をならべては、偕老のふすまをうれしとよろこび、横雲の朝(あした)に鳥の鳴く時は、別離の袂をしぼりて、悲しとす(新御伽婢子)、 の、 偕老のふすま、 は、 夫婦共に老いるまで連れ添おうという、睦まじいかたらい、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、「ふすま」は、前に触れたように、 衾、 被、 と当てるかつての寝具で、 御…

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家に杖つく

我にひとしき他国の男一人ありて、家に杖つくばかりの老人にむかひ、物がたりする有り(新御伽婢子)、 のある、 家に杖つく、 は、 五十歳をさす、 と(高田衛編・校注『江戸怪談集』)あり、 五十杖於家、六十杖於郷、七十杖於国、八十杖於朝(「礼記」王制)、 を引く。 昔、中国では五十歳になると、家の中で杖をつくことを許された、 とある(精選版日…

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黄泉

自ら参り侍らんが、司録神(しろくじん)に申せし暇(いとま)の限りは近ければ、又黄泉(よみじ)に帰るなり(新御伽婢子)、 にある、 黄泉、 を、 よみじ、 と訓ませているが、これは、 黄泉路、 冥途、 とも当て、 黄泉よみへ行く路、 冥土へ行く路、 の意(広辞苑・日本語の語源)で、また、 冥土、 あの世、 そのものをも指し…

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盂蘭盆会

文月(ふみづき)は、諸寺より始めて、在家に至って、盂蘭盆会の仏事を営み、なき人の哀れをかぞへて、しるしの墓に詣でて(新御伽婢子)、 にある、 盂蘭盆会、 は、 梵語ullambana、倒懸(とうけん)と訳され、逆さ吊りの苦しみの意とされるが、イランの語系で霊魂の意のurvan、 とする説もあり(広辞苑)、また最近では、 盂蘭盆を「ご飯をのせた盆」である、 …

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不興

一念をはげみて、敵の命をとれ。相かまへて忘失せば、不興するぞ(新御伽婢子)、 の、 不興、 は、 勘当、親子の縁を切って追放すること、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 「不興」は、 ふきょう、 あるいは、 ぶきょう、 とも訓ませ、その場合、 あまりに何もかも一つ御事にて、無興なるほどなれば(「愚管抄(1220)…

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かぞいろ

つづきて知らぬ位牌あり。「いづれぞ」と問ふに、父母(かぞいろ)の二人也(新御伽婢子)、 にある、 かぞいろ、 は、 かぞいろは、 ともいい、 父母、 両親、 の意で、古くは、 かそいろ(は)、 と、 清音(広辞苑)、 「かぞ」(父)+「いろは」(生母)、 である(https://ja.wiktionary.org/wi…

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かづらきの神

かづらきの神も在(ま)さば、岩橋をわたし給へと、独り言して力なく過ごし(新御伽婢子)、 にある、 かづらきの神、 は、 葛城の神、 と当て、 修験道祖といわれる役の行者のこと。葛城の山に岩橋を架けたという伝説がある、 と注記される(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、役の行者と葛城の神は異なり、明らかに間違っている。 「葛城の神」は、後世、 …

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阿育王の七宝

倩(つらつら)思ふに阿育王(あいくおう)の七宝も命尽きんとする時、是をすくふ価なく(新御伽婢子)、 の 阿育王(あいくおう)、 は、古代インドの、 アショカ(アショーカ)王、 のことで、 父王の没後、兄弟を殺し、摩掲陀国王となった。その莫大な材の中の七つの宝、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。「七宝」とは、『南伝大蔵経』に、 輪宝…

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新発意(しぼち)

此の後、新発意(しぼち)と喝食(かつしき)と、つれだちて縁に出でたるよる(新御伽婢子)、 の、 新発意、 とは、 出家したばかりの小坊主、 とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。なお、「喝食」については「沙喝」で触れたように、禅宗用語で、正確には、 喝食行者(かつじきあんじゃ、かっしきあんじゃ)、 といい、「喝」とは、 称える、 意で、…

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夢は五臓の煩い

夢は五臓の虚よりなすなれば、はかなく、跡(あと)なき事のみにて、誠すくなし(新御伽婢子)、 の、 夢は五臓の虚、 は、 夢は五臓の煩(わづら)ひ(譬喩尽)、 の謂いのようである(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。『譬喩尽(たとへづくし)』とは、松葉軒東井編の、 江戸後期の諺語辞典、 で、 天明六年(一七八六)序。寛政一一年(一七九九)頃まで増補、…

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時めく

家、時めきて田園多く、子供五人持てり(新御伽婢子)、 の、 時めきて、 は、 繫栄していて、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 「時めく」は、 今を時めく、 といった使い方をするが、 「めく」は接尾語、 で、「ときめく」で触れたように、 名詞・形容詞語幹・副詞について四段活用の動詞をつくる(岩波古語辞典)、 体…

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一念五百生

一念五百生(ごひゃくしょう)、繋念無量劫(けねんむりょうこう)、恋慕執着(しゅうじゃく)の報ひをうけん事浅ましきかな(新御伽婢子)、 にある、 一念五百生、 は、 小さな思いが五百年もの間の報いをよび無量な業をつくる、の意の仏語、 とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 「隔生則忘(きゃくしょうそくもう)」で触れたように、「隔生則忘」は、 隔生即忘…

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けつらふ

紅粉翠黛(こうふんすいたい)たる顔にいやまさりて、けつらひ、愁(うれ)へる眼(まなこ)、涙に浮き腫れたり(新御伽婢子)、 にある、 けつらひ、 は、 つくろい、粧い、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。紅粉翠黛は、 美しい顔の色、みどりのまゆずみをほどこした美しい眉、 とある(仝上)。「紅顔翠黛」と同義である。 「けつらひ」は、 …

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是生滅法

既に半夜(はんや まよなか、子(ね)の刻から丑(うし)の刻まで)の鐘、是生滅法(ぜしょうめつほう)の響きを告げ、世間静かなるに(新御伽婢子)、 とある、 是生滅法、 は、 万物はすべて変転し生滅する、不変のものは一つとしてないという、涅槃経の四句偈のひとつ、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。普通、 是生滅法、 は、 ぜしょうめっぽ…

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かねこと

女も遠くしたひ又の日をかねことし、あかで別るる横雲の空など、名残り惜しみ(新御伽婢子)、 の、 かねこと、 は、 約束、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 かねこと、 は、 兼ね言、 兼言、 予言、 などと当て(広辞苑・岩波古語辞典)、 ゆゆしきかねことなれど、尼君その程までながらへ給はむ(源氏物語)、 と、…

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一跡

我が一跡を掠め取り、身の佇(たたず)み(置き所)もならず、所さへ追ひ失はれし(新御伽婢子)、 の、 一跡、 は、 財産のすべて、 あひかまへて、小分の(少額の)かけにし給ふな。身代一跡と定めらるべし(仝上)、 の、 身代一跡、 は、 全財産、 と、それぞれ注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 一跡、 の、 …

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あなめ

小野小町が、秋風の吹くにつけても、あなめあなめなどと歌の上の句をつらねしためし、世をもつて伝へ知る所也(新御伽婢子)、 の、 あためあなめ、 とは、 小町の髑髏の目に薄が生え、夜になると、こういったという説話(袋草紙)から。あゝ、目が痛いの意。『通小町』にも「秋風の吹くにつけてもあなめあなめ小野とは言はじ薄生ひけり」、 とあると注記がある(高田衛編・校注『江戸怪…

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頼母子

大欲不道の男あり。隣郷に、頼母子(たのもし)といふ事をむすび置きて、或る時そこへ行きぬ(新御伽婢子)、 とある、 頼母子、 は、 無尽、 ともいい、 一定の期日に一定の掛け金を出し合い、全員に順々に一定の融通をする組合、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、正確には、「頼母子」は、 憑子、 憑支講、 頼子講、 とも当て、 …

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十二調子

宮(きゅう)商(しょう)角(かく)徴(ち)羽(う)の五音(ごいん)にもこえ十二調子にもはづれ、音楽、糸竹(しちく 「糸」は琴、琵琶などの弦楽器、「竹」は笙(しょう)、笛などの管楽器の総称)にものらぬとぞ(新御伽婢子)、 の、 五音、 は、 日本、中国で称した五音階、 で、 五声(ごせい)、 ともいう(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。また、 十二…

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