述懐奉公

それがし、述懐奉公いたしける事、身におぼせえたる科(とが)なれば、ちからなし(平仮名本・因果物語)、 とある、 述懐奉公、 とは、ここでは、 公然とお上の非を訴えること、 という意味で使われている(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、 述懐奉公身を持たず、 という諺があり、 不平不満をいだきながらする奉公、 をいい、 (主人や君主に)…

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松明

平野海道を、もどりけるに、弓削のかたより、大いなる明松(たいまつ)をともして来る(平仮名本・因果物語)、 にある、 明松(たいまつ)、 は、普通、 松明、 炬、 などと当て(広辞苑)、 炬火、 松炬(しょうきょ)、 などともいい(大言海)、 ついまつ、 しょうめい(松明)、 たてあかし、 たきあかし、 ともしび、 うちまつ、 続…

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すごろく

存生(ぞんじょう)のとき、かの腰元と、つねづね双六(すごろく)を好きて、うたれしが(諸国百物語)、 とある、 双六、 は、 盤双六、 を指し、 当時の双六は、貴人の遊びで、双六盤に二人が向い合い、相互に筒に入れた二個の采(さい)を振り出し、出た采の目によって、自分の駒を相手の陣営に進める遊び、 とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、古い形の、 …

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三尊

西の方より、三尊(さんぞん)、その外廿五の菩薩たち、笙、篳篥(ひちりき)、管弦にて、光を放って来迎ありければ(諸国百物語)、 の、 三尊、 は、 さんそん、 と訓ませると、 3人の尊ぶべきもの、 つまり、 君と父と師、 の意となる(広辞苑・大言海)。天治字鏡(平安中期も漢和辞書)には、 三尊者、父、師、君也、 和名類聚抄(平安…

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火定(かじょう)

汝、早く此の娑婆を立ちさりて、火定(かじょう)に入るべし。その時来迎して、西方へ救ひとらん(諸国百物語)、 とある、 火定(かじょう)、 は、 火中禅定、 ともいい、 自ら焼身して、弥陀の世界にはいること、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。 火化、 ともいう(広辞苑)。 「西方」とは、いうまでもなく、 西方浄土、…

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かづき

二八ばかりなる女﨟(じょろう 十六歳くらいの貴婦人)、薄絹にかぶりを着し(諸国百物語)、 の、 かぶり、 は、 頭に被るもの、 の意(高田衛編・校注『江戸怪談集』)だが、 上には惣鹿子(そうかのこ 全体を鹿子絞(かのこしぼり)にした着物)の小袖を着て、練りのかづきにて(仝上)、 の、 練りのかづき、 の、 練り絹で作った被き物、上か…

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女﨟

二八ばかりなる女﨟(じょろう)、薄絹にかぶりを着し、はなやかに出で立ち(諸国百物語)、 年の頃十八、九ばかりなる、女﨟(じょろう)、肌には白き小袖、上には惣鹿子(そうかのこ 全体を鹿子絞(かのこしぼり)にした着物)の小袖を着て、練りのかづきにて(仝上)、 の、 二八ばかりなる女﨟、 は、 十六歳くらいの貴婦人、 と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。「…

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篳篥(ひちりき)

西の方より、三尊(さんぞん)、その外廿五の菩薩たち、笙、篳篥(ひちりき)、管弦にて、光を放って来迎ありければ(諸国百物語)、 の、 笙、篳篥(ひちりき)、管弦、 は、 笙、篳篥(ひちりき)とも古代の吹奏楽器、管弦は絃楽器、管楽器の総称、 とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。「管楽器」としては、 竜笛(りゅうてき)、 高麗笛(こまぶえ)、 神楽笛(か…

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行水

もはや帰り候。女体にて身けがれて有り、行水(ぎょうずい)させ給へ(諸国百物語)、 の、 行水、 とは、 行水を使う、 カラスの行水、 と使う、 暑中などに、湯や水を入れたたらいに入って、身体の汗を流し去ること、 という意(広辞苑)だが、 行水(こうすい)、 は、 天下之言性也、則故而已矣。故者以利爲本。所惡於智者、爲其鑿也。如智者…

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牛頭馬頭(ごずめず)

如来の庭(誓願時阿弥陀堂の前の庭)にて、とし四十ばかりなる女を、牛頭馬頭(ごずめず)の鬼、火の車より引き下ろして、いろいろ呵責して、又、車に乗せ(諸国百物語)、 の、 牛頭馬頭、 は、 地獄に居る牛頭、馬頭の鬼、 とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。因みに、「火の車」は「火車(かしゃ)」で触れたように、 火が燃えている車。生前に悪事をした亡者を乗せて地…

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