2023年01月21日

十二調子


宮(きゅう)商(しょう)角(かく)徴(ち)羽(う)の五音(ごいん)にもこえ十二調子にもはづれ、音楽、糸竹(しちく 「糸」は琴、琵琶などの弦楽器、「竹」は笙(しょう)、笛などの管楽器の総称)にものらぬとぞ(新御伽婢子)、

の、

五音、

は、

日本、中国で称した五音階、

で、

五声(ごせい)、

ともいう(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。また、

十二調子(じゅうにちょうし)、

は、

雅楽に用いられた十二の音、一オクターブ間を一律(約半音)の差で十二に分けたもの、

と注記がある(仝上)。「十二調子」は、

十二律の俗称、

とある(広辞苑)。

十二律(表).jpg

(十二律比較 広辞苑より)


五音、

は、日本・中国の音楽で、低音から、

宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)、

の5音を言い、また、その構成する音階をも指す(広辞苑)。五音(ごいん)に、

変徴(へんち 徴の低半音)・変宮(へんきゅう 宮の低半音)、

を加えた7音を、

七音(しちいん)、
または、
七声(しちせい)、

といい(仝上)、西洋音楽の階名で、宮をドとすると、商はレ、角はミ、徴はソ、羽はラ、変宮はシ、変徴はファ#に相当し、

宮・商・角・変徴・徴・羽・変宮はファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミに相当、



西洋の教会旋法のリディアの7音に対応する、

とあり(広辞苑・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%A3%B0)、

日本の雅楽や声明(しょうみょう)も使用する、

とする(仝上)。なお、「五声」は、

三分損益法(さんぶんそんえきほう)、

に基づいている(仝上)とある。『史記』に、

律數 九九八十一以為宮 三分去一 五十四以為徵 三分益一 七十二以為商 三分去一 四十八以為羽 三分益一 六十四以為角、

とあるが、これは、

完全5度の音程は振動比2:3で振動管の長さは2/3となる。すなわち、律管の3分の1を削除すると5度上の音ができ、加えると5度下の音ができる。前者を三分損一(去一)法、後者を三分益一法と称し、両者を交互に用いるのが三分損益法である、

とあり(日本大百科全書)、

5度上の音を次々に求めるピタゴラス定律法と同じ原理、

で、日本では、

損一の法を順八、益一の法を逆六、

といい、別名、

順八逆六の法、

と称する(仝上)とある。つまり、古代ギリシャでも古代中国でも音楽は盛んだったが、二つの異なる文化が、

周波数比が2:3である二つの音はよく調和する、

という全く同じ現象に到達していたのであるhttps://www.phonim.com/post/what-is-temperament。現代では周波数が2:3であるような音は、

完全5度、

と呼ばれている(仝上)。

日本へは奈良時代にこの中国の五声が移入されたが、平安時代になると日本式の五声が生まれ、中国の五声の第五度(徴)を宮に読み替えた音階で、西洋音階のド・レ・ファ・ソ・ラに相当する。中国の五声を、

呂(りょ)、

日本式の五声を、

律(りつ)、

とよぶのが習わしとなった(仝上)。

因みに、音階中の各音の音程関係を規程する基準を、

音律、

というが、中国、日本の音律は、

十二律、

である。

「十二律」は、『前漢志』や『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』には、

4000年前黄帝の代に、伶倫(れいりん)が命を受け昆崙山(こんろんざん)の竹でつくった、

とあるが、中国では、

黄鐘(こうしょう)を基音、

として、

黄鐘(こうしょう)を三分損一して林鐘(りんしょう)、次に益一して太簇(たいそく)、

と、以下同様にして得て、

黄鐘(こうしょう)、大呂(たいりょ)、太簇(たいそく)、夾鐘(きょうしょう)、姑洗(こせん)、仲呂(ちゅうりょ)、蕤賓(すいひん)、林鐘(りんしょう)、夷則(いそく)、南呂(なんりょ)、無射(ぶえき)、応鐘(おうしょう)、

となる。前漢の京房(けいぼう)はこれを反復して、

六十律、

南朝宋の銭楽之(せんらくし)は、

三百六十律、

を求めた(仝上)という。日本では天平七年(735)吉備真備が『楽書要録』で伝えたのち、平安時代後期より雅楽調名に基づいて、

壱越(いちこつ)、断金(たんぎん)、平調(ひょうじょう)、勝絶(しょうせつ)、下無(しもむ)、双調(そうじょう)、鳧鐘(ふしょう)、黄鐘(おうしき)、鸞鏡(らんけい)、盤渉(ばんしき)、神仙(しんせん)、上無(かみむ)、

の名称が決められた(仝上)。ただ、中国では、

標準音の絶対音高が時代によって異なるので、律名をそのまま絶対的な音名ということはできない、

ようだが、日本独自の、

十二律、
十二調子、

は、

壱越 (いちこつ)がほぼ洋楽のニ音に相当し、以下、順に半音ずつ高くなっていくので、律名は音名といってもさしつかえない、

とある(ブリタニカ国際大百科事典)。しかし、

雅楽や声明、

を除けば、この12の律名はあまり用いられず、普通は、もっと実用的な、

一本(地歌・箏曲・長唄・豊後系浄瑠璃などでは黄鐘〈おうしき〉イ音、義太夫節では壱越ニ音)、
二本(変ロ音または嬰ニ音)、
三本(ロ音またはホ音)、

という名称が使われている(仝上)とある。

西洋音楽の音律理論は古代ギリシアのピタゴラス音律に始まり、求め方は十二律と同じだが、12番目の音は厳密には基準音より、わずかに高く、その差を、

ピタゴラスのコンマ、

といい、この、

長3度、長6度の不協和問題、

となり、これを解決するために、3倍と2倍のみを使って作った音律である、

ピタゴラス律、

に対し、基準の音から簡単な整数倍で作る、

純正律、

純正律が考案されていくことになる(仝上)。

十二律.jpg

(十二律 日本大百科全書より)


十二調子.bmp

(十二調子 精選版日本国語大辞典)


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posted by Toshi at 04:57| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする